医学界新聞

連載 井部俊子

2022.09.26 週刊医学界新聞(看護号):第34837号より

 呑香どんこう美佳子さん(47歳)に出会ったのは,今年7月に行われた「2022年度コンピテンシーを基盤とした看護管理者オンライン研修」であった。

 これは一般社団法人日本看護管理学会教育委員会が主催し,「現在,医療機関等に勤務しており,看護管理者(師長・副部長・部長等)の職位にある者」を対象とした1日間(9~17時)の研修である。研修に先立ち,研修参加者には事前学習と課題提出が課せられる。

 事前学習はe-learningである。パート1では管理者の役割のほか,看護管理者が達成すべき成果とは「病床稼働率や看護師の離職率,褥瘡発生率といった単純な経営指標や質指標のみを指すのではなく,良質なケアを提供し,患者・家族のQOLを高めること,あるいはスタッフを意欲的にしたり活気付けたりすること,次世代のリーダーの育成などが含まれる」ことを学ぶ。

 そしてパート2「コンピテンシーとは何か」に進む。コンピテンシーとは,「行動によって見極められる(知覚される)動機,自己効力感,思考スキル,知識などを含む総合的な能力の概念であり,高業績につながると予測されるもの」と解説される。さらにコンピテンシーが注目される背景と学説が紹介され,本研修で使用する6つのコンピテンシー・クラスターと,それらを構成する19のコンピテンシーについて詳述される。

 研修参加者は,かなりのボリュームのある事前学習をしたのち,事前課題ワークシートを研修会開始までに提出しなければならない。ワークシートは,〈背景・部署の課題〉〈自部署の問題〉に続けて,6つのコンピテンシー・クラスターである以下の項目を記述する。

1)認知コンピテンシー……混沌とした状況や重大な問題を理解するときに,表面的な情報や他人の見方や解釈をそのまま受け入れるのではなく,それらも情報の一つとし,自分自身の考察を加え,もっと深い理解に到達するための能力。分析的思考/概念的思考といったコンピテンシーで構成される。

2)達成とアクション……業務改善や達成すべき課題について,その目標に向かって行動すること。達成重視,秩序・クオリティ・正確性への関心,イニシアティブ,情報探求といったコンピテンシーで構成される。

3)インパクトと影響力……周囲の人や組織の特性を理解し,その長所をふまえた上で,自分の職位や権限を利用し,効果的に自分の考えを伝える能力。インパクトと影響力,組織の理解,関係の構築といったコンピテンシーで構成される。

4)支援と人的サービス……他者のニーズに応える能力。対人関係理解,顧客サービス重視といったコンピテンシーで構成される。

5)マネジメントコンピテンシー……管理的な行動力,実行力はもちろん,その行動の意図も多側面から評価する。すなわち,他の人を教育する,指示する,チームを築きあげるという意図をもった行動...

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