医学界新聞

看護のアジェンダ

連載 井部 俊子

2022.03.28 週刊医学界新聞(看護号):第3463号より

 新型コロナウイルスの感染拡大による第6波のただ中,用意周到に準備され開催された看護管理者研修では「コロナ禍における看護管理実践で学んだこと」をグループディスカッションのテーマとした。そこで私の関心を引いた興味深い発表があった。

 発表者が言うには,新型コロナウイルス感染者が入院するための,いわゆるコロナ病棟を急きょ編成することとなり,スタッフの移動を余儀なくされたのであるが,看護部長のかかわり方でとてもうまくいっている病院と,不平不満が充満している病院があるというのである。これは聞き捨てならぬと私は考えた。そこで発表者が淡々と発表を済ませようとしているところに切り込んだ。

井部「うまくいっている病院はどのように病棟の再編成を行ったのですか」

 すると,発表者に代わって当該病院からの参加者が説明に立った。

参加者「病棟の移動をお願いする看護師に集まってもらい,看護部長が辞令交付を行います」

井部「辞令にはどのようなことが書かれているのですか」

参加者「病棟の配置替えをすること,どこどこ病棟に,いつからいつまでという期間が書かれています。辞令は病院長名で出されます」

井部「それで」

参加者「これから始まるコロナ病棟での仕事にみんなの力を貸してほしい,と看護部長は述べます」

井部「どのくらいの間隔で辞令交付は行われるのですか」

参加者「2~3か月ごとくらいです。1回に5~6人の移動があります。2回目の移動者にはねぎらいを伝え,コロナ病棟をよくしてほしいと伝えます。すると,“今度は自分が行きます”と手を上げてくれるスタッフが現れるのです」

井部「では,(コロナ病棟編成が)うまくいかない病院の看護部長はどのような対応をするのですか」

参加者「廊下で,立ち話で,(移動してもらう看護師に)“お願いね”と言うだけです」

 この一連のやりとりにおいて,重要な事業を実施する際に看護部長がスタッフにどのようなメッセージを発するかが問われていることがわかる。いわば,看護部長の言葉掛けの効用である。

 倉岡は看護師長7人のインタビュー調査によって,第1波から第2波(2020年3月~2......

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