医学界新聞

取材記事

2021.11.08 週刊医学界新聞(レジデント号):第3444号より

 金原一郎記念医学医療振興財団(理事長=上武大学長・澁谷正史氏)は,このほど「第36回基礎医学医療研究助成金」の交付対象者として26人(助成総額1950万円)を選出。10月15日,新型コロナウイルス感染症の流行を考慮し,Web上にて第70回認定証贈呈式が開催された。

 開催に際して,金原優同財団業務執行理事(医学書院代表取締役会長)が,医学書院の創業者・金原一郎の遺志を継いで設立された同財団の概要を紹介した。選出された交付対象者をたたえ,「助成金を有効活用し,これからの生命科学を支える優れた研究に結び付けてほしい」と激励の言葉を述べた。

 認定証贈呈の後,本年10月より同財団理事長を務める澁谷氏は,自身が長年実践してきたがん研究の話題を交えながら,「医学・医療の分野では解決すべき新たな問題が日々生じている。これからも着実に研究を進め,新しい医学・医療を開拓してほしい」と,若手研究者らによる基礎医学の発展に期待を寄せ,祝辞に代えた。

 続いて交付対象者を代表して三浦恭子氏(熊大准教授・助成対象「最長寿齧歯類ハダカデバネズミの発がん耐性機構の解明とその応用」)があいさつした。氏はマウスの10倍以上である,30年を超える長寿命を持つハダカデバネズミにほとんどがんが見られない点に注目。発がん誘導に対する組織応答の特殊性を調べ,発がん耐性メカニズムを明らかにすることで,ヒトにも応用可能な新たな発がん抑制戦略の開発をめざしているという。「コロナ禍でこれまでになく医学研究に注目が集まっている。ワクチン開発など短期間での成果だけでなく,数十年後のブレークスルーに向けた基礎研究も重要だと考える。目の前の科学現象に向き合い,誠実に追究を続けたい」と抱負を語った。

No. 氏名 所属機関(略称) 助成対象
1 有馬 勇一郎  熊大/国際先端医学研/心臓発生研究室  ケトン体による心筋細胞保護作用の解明 
2 伊藤 哲史  富山大/医薬研/システム機能形態学  聴覚ハブ領域・下丘の単一細胞トランスクリプトームによる細胞種の網羅的同定 
3 岩堀 聡子  藤田医科大/ウイルス・寄生虫学  ヒトサイトメガロウイルスUL97キナーゼと基質の相互作用を標的とした新たな作用機序の抗ウイルス薬の開発
4 植田 航希   福島県医大/輸血・移植免疫学  前白血病から急性白血病への進行予防法の開発 
5 大石 智一   微生物化学研/沼津  肝臓間質細胞由来因子を標的とした大腸がん肝転移の治療戦略 
6 岡村 拓郎   京府医大/内分泌代謝内科学  自己反応性T細胞を標的とした1型糖尿病発症予防法の開発
7 片山 将一   徳大/医歯薬研/医薬品病態生化学  精神発達障害の原因遺伝子MeCP2の量的制御手法の開発 
8 門田 真  信大/バイオメディカル研/バイオテクノロジー  細胞移植グラフト増大を来たす心筋再生療法の開発 
9 唐澤 直

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