しびれと麻痺(福武敏夫)
連載
2019.06.17
漢字から見る神経学
普段何気なく使っている神経学用語。その由来を考えたことはありますか?漢字好きの神経内科医が,数千年の歴史を持つ漢字の成り立ちから現代の神経学を考察します。
[第12回]しびれと麻痺
福武 敏夫(亀田メディカルセンター脳神経内科部長)
(前回よりつづく)
「しびれ」の語源は謎ですが,室町時代には「しびり」であったようです。狂言には現代でも「しびり(痿痢/痺)」という演目があって,正座後のしびれで動けないことが面白く扱われています。江戸時代の歌舞伎「花霞名盛扇」には「わたしもしびりを切らして,お前のほうへ出掛けて行かうと思うた矢先」というセリフがあり,既に身体的なしびれから精神的なしびれへの拡大が見られます。
平安時代中期の辞書『和名類聚鈔』には痿痺(ヒルムヤマヒ)という病名があり,後の注釈ではParaplegia(対麻痺)を指すとされています。白川静による漢和辞典『字通』(平凡社)ではこれを「しびれる病」とし,唐の李商隠の詩「人の一身に當り,左有るも右邊無きが如し,筋體半ば痿痺し」を紹介しています。こちらは片麻痺のようです。
現代の漢和辞典『大漢語林』では,「痿」の解釈として「①血液の循環が不調で肢体の感覚がなくなること。表面的で痛いのを痹【痺の本字】といい,内部的で痛くないのを痿という。②なえる。……...
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漢字から見る神経学(終了)
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