幻覚と錯覚(福武敏夫)
連載
2019.07.15
漢字から見る神経学
普段何気なく使っている神経学用語。その由来を考えたことはありますか?漢字好きの神経内科医が,数千年の歴史を持つ漢字の成り立ちから現代の神経学を考察します。
[第13回]幻覚と錯覚
福武 敏夫(亀田メディカルセンター脳神経内科部長)
(前回よりつづく)
幻覚とは感覚器に刺激がないのに知覚を生じる病的体験のことで,その中でも神経疾患では幻視が多く,パーキンソン病進行期やレヴィ小体型認知症(DLB)でよく遭遇します。幻聴はまれに側頭葉や橋の脳卒中でみられることがあり,橋病変では音楽性が有名です。言語性幻聴はやはり統合失調症を示唆します。幻臭・幻味・幻触は極めてまれです。
幻は幺(イトガシラ:糸の先端,細い糸)+フのような形(木にぶら下げる)であり,染色した糸を木の枝にかけた象形を表し,色がいろいろと変わる様子から「まぼろし」の意味になったようです。日本語のまぼろしの語源は草川昇の『語源辞典 名詞編』(東京堂出版)によると,目(マ)惚(ホ)ロシまたは目(マ)朧(オボロ)とのことで,本来的に幻視のことです。幺を含む漢字として幼や幽は理解できます。幾も「いくばく」ならわかりますが,幾何はなんとgeometry(幾何学)のgeoの音訳にすぎないのです。
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漢字から見る神経学(終了)
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