第81回日本消化器内視鏡学会開催
2011.09.19
第81回日本消化器内視鏡学会開催
第81回日本消化器内視鏡学会が8月17-19日,名古屋国際会議場(名古屋市)にて吉田茂昭会長(青森県立中央病院)のもと開催された。東日本大震災の発生を受け,会期・会場を変更した本学会。中止や誌上発表となった演題も一部みられたものの,ほぼ当初の予定通りのプログラムが執り行われ,世界をリードするわが国の内視鏡学の一層の発展をめざし議論が重ねられた。本紙では,経鼻内視鏡の現状と応用例が述べられたワークショップのもようを報告する。
ワークショップのもよう |
まず基調講演として河合氏が登壇。氏は経鼻内視鏡による上部消化管スクリーニングについて,腫瘍の質的な診断はまだ難しい現状を指摘した。一方,機器の進歩により強調画像が使用可能となってきているため,適切に活用して診断力を高めていくことが重要とした。また応用例として,PEG,イレウス管の挿入,ERCP,食道の蠕動運動などの機能の可視化を提示した。
坪井優氏(千葉大大学院)は,咽頭表在癌スクリーニングについて紹介。経鼻内視鏡を用いると嘔吐反射がなく,落ち着いて観察可能とその利点を挙げ,観察完遂率が経口内視鏡より有意に高かったことから,その有効性を主張した。
引き続き食道癌・頭頸部癌のスクリーニングについて述べたのは川田研郎氏(東京医歯大)。経鼻内視鏡は画角が広く,広範囲でのスクリーニングが可能という利点を説明し,癌の発見率も通常の経口内視鏡の発見率に近づいていることを提示した。
結城美佳氏(出雲市立総合医療センター)は,蠕動運動の抑制効果があるミントオイル溶液(POS)の有用性について報告した。POS使用により約80%の患者で蠕動を抑制でき,鎮痙剤を使用せず検査ができたと説明。また失敗例の解析から,過去の内視鏡経験がないことがPOS無効のリスク因子となるなどの見解を示した。
大竹陽介氏(国立がん研究センター中央病院)は,検診において上部消化管と大腸の内視鏡検査を同日に行う手法(同日法)での経鼻内視鏡の有効性を報告した。検査完遂率は95%であり,有害事象の偶発率は経鼻1.6%,経口2.1%,病変の検出力も経口内視鏡とほぼ同じであったことから,同日法で経鼻内視鏡は安全に実施可能と結論付けた。
広がる経鼻内視鏡の可能性
後半は経鼻内視鏡の応用例について4氏が報告した。尾形高士氏(神奈川県立がんセンター)は疼痛コントロール目的でのPEG施行について発言。癌性狭窄で食道が細くなっても,患者が水を飲める状態であれば経鼻内視鏡でPEGを施行できると説明し,その有効性を訴えた。
沖山葉子氏(丸子中央総合病院)は,経鼻内視鏡を用いた咽頭における嚥下反射を直接観察する嚥下機能評価法を紹介。本法では,咽頭や気管における食品の挙動を直接見ることができるため,残留物付着部位などから経口摂取が可能かを判断できるという。
経鼻によるERCP関連手技について解説したのは池内信人氏(東医大病院)。氏は悪性胆道狭窄へのステント治療や総胆管結石の除去をVTRで示し,その有効性を提示。現時点ではまだ性能に限界があることから,今後のさらなる機器開発を要望した。
濱田毅氏(東大病院)は,胆道鏡としての経鼻内視鏡の有用性について発言。6例の胆管粘膜病変を観察したところ,画質,操作性とも良く,炭酸ガス送気も併用できコスト効率も良かったとし,従来型の胆道鏡よりも優れるとの見解を示した。
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