第17回総合リハビリテーション賞決定
2010.01.18
第17回総合リハビリテーション賞決定
第17回総合リハビリテーション賞の授賞式が2009年9月30日,医学書院にて行われた。今回は,道木恭子氏(国立障害者リハビリテーションセンター病院),古谷健一氏(防衛医科大学校産婦人科)他の「脊髄障害女性の妊娠・出産に関する調査研究」(『総合リハビリテーション』36巻7号,2008年)が受賞した。
本賞は,『総合リハビリテーション』誌編集顧問の上田敏氏が東大を退官する折(1993年)に金原一郎記念医学医療振興財団に寄付された基金を原資として発足した。今回は,2008年発行の『総合リハビリテーション』第36巻に掲載された投稿論文53篇を選考対象とし,最も優れた論文に贈られた。
授賞論文は,脊髄損傷・二分脊椎による脊髄障害がある女性56人を対象に,妊娠・出産の現状やさまざまな問題について,10年間にわたって調査研究したものをまとめたもの。道木氏はこの論文で,調査に協力した56人のうちの90%以上で妊娠中に合併症がみられること,妊娠後期にADLや家事動作に関して要介助となる人の割合が急増すること,出産方法は帝王切開が多いことなど,脊髄障害者の妊娠・出産の実態を明らかにした。また,脊髄障害者は妊娠・出産・育児にあたって相談できる場所がないこと,医療者の障害者妊婦への理解不足や誤解・拒否がみられること,情報提供や保健指導の不十分さなど,医療者側の課題も示されている。これらの調査結果をもとに,授賞論文は「産婦人科,リハビリテーション科をはじめとする医療関係者が現状を認識し,問題解決へ向けて連携することや,脊髄障害者の妊娠・出産マニュアルの作成と周知が必要」と結論づけている。
編集委員の永田雅章氏(市川市リハビリテーション病院)は,「脊髄障害のある女性の妊娠・出産についての理解は,社会的にも,また医療関係者の間でも十分ではない。道木氏らの調査報告は,この問題を綿密に研究されたもので,本邦ではこれまで見当たらず,たいへん貴重な内容と示唆に富んだ論文である」と選考理由を述べた。
道木恭子氏(左)と古谷健一氏(右) |
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