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[第13回]外科の基本術式を押さえよう――腸吻合編
外科研修のトリセツ
連載 高見秀樹
2025.05.05


▼ 目次
消化管の吻合は,消化器外科手術のさまざまな場面で登場します。器械を用いた吻合が増えてきているものの,手縫いで行うこともまだまだあります。いくつかの方法を覚えておきましょう。
消化管の構造を復習しよう
おさらいですが,消化管の組織は粘膜,粘膜下層,固有筋層,漿膜下層,漿膜の順に並んでいます。食道から直腸に至るまでこの構造です(図1)。どの消化管も間膜内を走行する動脈から血流を得ていて,消化管を切除する時に栄養する動脈を切除してしまうと血流が悪くなり,縫合不全の原因となります。

まずは押さえておきたい手縫い吻合
手縫い吻合は針糸を用いて消化管同士を吻合する方法で,一般的に吻合時には針付きの吸収糸が用いられます。今回はAlbert-Lembert吻合,Gambee吻合,層々吻合の3種類について解説をしていきます。
いずれの方法も針をかける間隔(ピッチ)が大きすぎると内容物が漏れてしまいますし,細かすぎると血流不良による縫合不全を起こすことがあります。適切なピッチで針をかけた上で,確実な縫合と結紮を行いましょう。皮膚の縫合と同じように垂直に針を刺入し,針の弧に沿って運針します。以下に紹介する3つの方法に優劣はありません。自分に合った方法で行ってみましょう。
Albert-Lembert吻合
切除した腸管同士の全層に針糸を通して吻合するAlbert法に,漿膜筋層(漿膜から固有筋層)だけに糸を通すLembert法を追加して外反させることで補強します(図2)。Albert法では外側の漿膜面,内側の粘膜面にしっかり針が通るように運針を心がけてください。連続縫合で行う場合もあります。反対にLembert法は粘膜までは針を出さず,筋層にかけることを意識して運針します。

粘膜側から漿膜側へ全層に針糸をかけ,対側の漿膜側から粘膜側へ糸を通す(a)。糸を結ぶと全層同士で吻合(b)。漿膜側から針を入れ固有筋層までかけて漿膜面に出し,対側も同様にかける(c)。糸を結ぶと漿膜筋層同士が外反して吻合される(d)。
Gambee吻合
Albert吻合のように全層に糸を通しますが,粘膜下層から針を出し,反対側の粘膜下層に針を入れます。Gambee吻合では特に粘膜下層同士を合わせることを目的としています。
多くの場合,後壁側は垂直マットレス縫合の要領で,粘膜面から漿膜面,漿膜面から粘膜面へと運針し,その後は粘膜面から粘膜下層,粘膜下層から粘膜面へと運針します(図3)。

粘膜側から漿膜側に向けて全層に針糸をかけ,対側の腸管にもかける(a)。粘膜同士に針糸をかけて結紮する(b)。
前壁側は漿膜面から粘膜面,同側の粘膜面から粘膜下層,反対側の粘膜下層から粘膜面,粘膜面から漿膜面へと糸を出します。後壁側は粘膜側で糸を結び,前壁側は漿膜面で糸を結びます(図4)。

漿膜側から粘膜側へ全層に針糸をかけ(a),粘膜側から粘膜下層に針糸をかける(b)。対側の粘膜下層から運針して粘膜面に針糸を出し(c),粘膜側から全層を通して漿膜面に糸を出した上,漿膜側で結紮する(d)。
層々吻合(layer to layer)
外側の漿膜から固有筋層同士,内側の粘膜から粘膜下層同士をそれぞれ吻合します。漿膜から漿膜筋層の吻合はLembert吻合と同様で,漿膜から固有筋層,固有筋層から漿膜へと運針し,漿膜側で結紮します。内側は粘膜から粘膜下層,粘膜下層から粘膜へと運針して粘膜側で結紮をしましょう(図5)。

漿膜筋層同士を吻合する(a)。粘膜から粘膜下層まで針糸を通し,対側の粘膜下層から粘膜まで通して結紮を行う(b)。
もしも縫合不全が起こってしまった場合,その部位を再吻合しても再度縫合不全を引き起こす可能性があるため,通常はドレナージと消化液の減圧が行われます。消化液の減圧のためには上部消化管であれば経鼻胃管を入
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