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[第25回]自社で開発した医療機器に見た目だけそっくりな粗悪品が,海外からネット経由で国内に流通するのを防ぎたいです。対策はできますか?
研究者・医療者としてのマナーを身につけよう 知的財産Q&A
連載 小林只
2026.10.16
Q.自社で開発した医療機器に見た目だけそっくりな粗悪品が,海外からネット経由で国内に流通するのを防ぎたいです。対策はできますか?
A.意匠権(および商標権)を活用した税関での水際対策が強力な武器になります。複雑な内部構造を解析しなければならない特許権と異なり,意匠権であれば「見た目の写真」だけで,税関の現場で輸入を差し止められる可能性が高くなります。
近年,大学発ベンチャーや医療機器メーカーが苦心して開発した製品が,発売直後に海外の業者に模倣され,ECサイト等を通じて安価な粗悪品として国内に流入するトラブルが急増しています。
医療機器のコピー品は,自社の売上を奪うだけでなく,粗悪な品質による医療事故を招き,開発元のブランドや信用まで失墜させかねない極めて深刻な問題です。こうした模倣品・コピー品を撃退する上で,なぜ意匠権が最強の武器になるのでしょうか。順を追って解説していきます。
模倣品防止における4つの武器
製品の外見が真似されたとき,対抗する法的手段として主に意匠権,不正競争防止法,図形商標,著作権の4つがあります。それぞれに強みと落とし穴が存在しますので押さえておきましょう(表)。
●不正競争防止法の3年の壁と著名性の壁
「意匠登録していなくても,不正競争防止法でコピー品を差し止められるのでは?」と考える方が多くいます。確かに,他人の商品の形態をそのまま真似る行為(デッドコピー)は不正競争防止法(2条1項3号)で禁止されています。しかし,この規定には「日本国内で最初に販売された日から3年間」しか保護されないという致命的な期間制限(3年の壁)があります。医療機器のように普及に時間がかかる製品では,3年などあっという間です。また,同法1号・2号(周知・著名表示)を使うには,「全国的に誰もが知る有名ブランド」である必要があり,立ち上げ初期のスタートアップ企業や大学にとってはハードルが高すぎます。
●図形商標のノーブランド品への限界
自社のロゴマークを勝手に使った「偽ブランド品」であれば,商標権(図形商標)で一発で差し止められます。しかし,ロゴマークは付けず(あるいは別のロゴを付けて),外見の形状だけをそっくりに真似たノーブランド品を展開してきた場合,商標権だけでは防ぎきれません。
●応用美術の壁
連載第24回で解説した通り,実用的な医療機器や器具には原則として著作権が認められません。また,仮に認められたとしても「自社の製品を見て真似した」という証拠(依拠性)を裁判で立証するのは極めて困難です。
●意匠権が「最強の盾」となる理由
意匠権は特許庁に登録さえしておけば,出願から最長25年間にわたり,完全なコピー品だけでなく,似ている製品(類似範囲)まで差し止めることができます。 相手の悪意や知名度を証明する必要もありません。
水際でシャットアウト! 税関の輸入差止申立
海外からのコピー品が国内の市場や医療機関に流通してしまってからでは,個々の販売業者を特定して民事訴訟を起こす必要があるため,差し止めが実現するまでに膨大な時間と費用がかかります。それゆえ最善の策は,国内に入ってくる前に差し止めることです。具体的には日本の国境(...
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小林 只(こばやし・ただし)氏 株式会社アカデミア研究開発支援 代表取締役社長/医師・一級知的財産管理技能士
2008年島根大医学部卒。臨床医として研鑽に励み14年より弘前大総合診療部。16年博士(医学)。23年大学認定ベンチャー・株式会社アカデミア研究開発支援を創業。24年より弘前大総合地域医療推進学講座・講師,島根大オープンイノベーション推進本部・准教授を兼任。綜合者・総合医として研究開発×知財法務×安全保障×事業で,多分野の横断支援を担う。資格:1級知的財産管理技能士(特許・コンテンツ),AIPE認定知的財産アナリスト(特許・コンテンツ),Security Trade control Advanced(CISTEC)ほか。2024年度 知的財産アナリスト 奨励賞,2025年度 知的財産管理技能士会表彰 奨励賞 受賞。
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