流行期のインフルエンザ診断
[第2回] 診断に関するエビデンスの検索
連載 名郷 直樹
2019.12.09
流行期のインフルエンザ診断
インフルエンザの季節です。今シーズンもまた,インフルエンザの迅速検査が大量に行われるのでしょう。いくら何でもやり過ぎですが,患者は希望するし,保育園や学校・職場からも依頼されるし,医療機関はもうかるし,という中でそれ以外の要因は無視されがちです。本来は,臨床疫学的なアプローチで判断することが,検査を利用する医師の大きな役割です。その役割を十分果たせるように,インフルエンザの迅速検査の使い方について解説します(全4回連載)。[第2回]診断に関するエビデンスの検索
名郷 直樹(武蔵国分寺公園クリニック院長)
(前回よりつづく)
インフルエンザの迅速診断を適切に利用するためには,ベイズの定理を理解し,それを使いこなすことが重要です。そのためにまず,事前確率と検査の正確性の見積もりがスタートになります。
今回は,事前確率と検査の正確性に関する情報の入手方法と吟味について説明したいと思います。情報源としては,どんな疑問であってもひとまずUpToDate,DynaMedを検索するのがいいでしょう。それでだめならPubMedというのが王道でしょうか。
事前確率についてのエビデンス
事前確率については,病歴と診察の所見の陽性的中率が事前確率の参考になります。
まずUpToDateをみてみましょう。インフルエンザの臨床診断の項に以下の記述があります。
DynaMedでは以下の通りです。
・fever had sensitivity 67.79%, positive predictive value 76.85%
・cough had sensitivity 93.24%, positive predictive value 69.43%
・fever plus cough had sensitivity 63.81%, positive predictive value 79.04%
どちらも同じ論文を引用しています1)。流行期においては48時間以内の熱と咳の組み合わせで陽性的中率が79%です。DynaMedでは,熱だけでも77%,咳だけでも69%の陽性的中率です。
この陽性的中率を事前確率として考えるというのが一つの方法ですが,事前確率は季節やセッティング,対象患者の年齢,合併症の有無などで大きく異なります。個別の状況ではさらに多めとか,さらに少な目とか,あるいははるかに低いとか,はるかに高いとか,その場その場の修正も重要です。正確に見積もるのは難しく,ある程度の幅をもって大雑把に見積もるのが現実的です。
検査の正確性についてのエビデンス
「検査の正確性」と書きましたが,具体的にはインフルエンザ迅速診断検査の感度・特異度についてデータを探しにいきます。
UpToDateでインフルエンザの迅速診断検査の部分をみると,以下のような記述があります。
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