2017年『胃と腸』賞授賞式
2018.10.29
2017年『胃と腸』賞授賞式
梅野淳嗣氏 |
統合後初めてとなる今回は,対象論文155本の中から,梅野淳嗣氏(九大大学院)らによる「非特異性多発性小腸潰瘍症/CEASの臨床像と鑑別診断」[胃と腸.2017;52(11):1411-22.]が受賞した。
非特異性多発性小腸潰瘍症の臨床像と鑑別診断法を検討
梅野氏らはこれまでに,非特異性多発性小腸潰瘍症はプロスタグランジン輸送体をコードするSLCO2A1の変異によることを明らかにし,CEAS(chronic enteropathy associated with SLCO2A1 gene)という新たな呼称を提唱。受賞論文ではCEAS 45症例を検討し,その臨床像を報告した。検討の結果,小腸病変の形態学的特徴として,終末回腸を除く回腸を中心に,輪走ないし斜走する比較的浅い開放性潰瘍の多発が腸間膜付着側と無関係に認められた。性別による比較では,胃病変は女性に有意に多く,ばち指・骨膜症や皮膚肥厚といった肥厚性皮膚骨膜症の所見は男性に有意に多かったとし,鑑別診断の際は,小腸病変の評価に加えて上部消化管病変や消化管外徴候の評価と,既報のSLCO2A1の変異検索がCEASの診断に必要と結論付けた。
選考委員の松本主之氏(岩手医大)は,梅野氏が世界に先駆けて非特異性多発性小腸潰瘍症の原因遺伝子を同定したことに触れ,「形態学と遺伝学が一体となった貴重な論文」と講評した。受賞のあいさつで梅野氏は,「故・岡部治弥先生(北里大名誉教授)が非特異性多発性小腸潰瘍症の疾患概念を発表してから約50年。原因遺伝子はわかったが,病態は明らかになっていない。今後も努力を重ね,治療法につながる新知見を発見したい」と抱負を語った。
*授賞式の模様は『胃と腸』誌(第53巻13号)にも掲載されます。
いま話題の記事
-
忙しい研修医のためのAIツールを活用したタイパ・コスパ重視の文献検索・管理法
寄稿 2023.09.11
-
人工呼吸器の使いかた(2) 初期設定と人工呼吸器モード(大野博司)
連載 2010.11.08
-
連載 2010.09.06
-
事例で学ぶくすりの落とし穴
[第7回] 薬物血中濃度モニタリングのタイミング連載 2021.01.25
-
寄稿 2016.03.07
最新の記事
-
医学界新聞プラス
[第3回]わかりやすく2つの軸で分類して考えてみましょう
『心理社会的プログラムガイドブック』より連載 2024.04.26
-
医学界新聞プラス
[第1回]平坦な病変 (1)色調の変化があるもの
『内視鏡所見のよみ方と鑑別診断——上部消化管 第3版』より連載 2024.04.26
-
医学界新聞プラス
[第1回]心エコーレポートの見方をざっくり教えてください
『循環器病棟の業務が全然わからないので、うし先生に聞いてみた。』より連載 2024.04.26
-
医学界新聞プラス
[第1回]バルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(BRTO)
『IVRマニュアル 第3版』より2024.04.26
-
医学界新聞プラス
[第4回]脆弱性骨盤骨折
『クリニカル・クエスチョンで考える外傷整形外科ケーススタディ』より連載 2024.04.26
開く
医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。