医学界新聞

2018.06.25



第61回日本糖尿病学会開催


 第61回日本糖尿病学会年次学術集会が5月24~26日,宇都宮一典会長(慈恵医大)のもと,「糖尿病におけるサイエンスとアートの探究」をテーマに開催された(会場=千代田区・東京国際フォーラム,他)。シンポジウム「地域での包括的管理の課題と展望――糖尿病におけるアートの探求」(座長=弘健会菅原医院・菅原正弘氏,光慈会加藤内科クリニック・加藤光敏氏)では,地域全体における糖尿病診療システムについて行政・日医の立場から枠組みが話されたのち,各職種の演者が自らの取り組みを発表。地域包括ケアシステムにおける糖尿病診療とその支援の在り方を探った。

患者の生き方に合わせた支援の実現に向けて

 初めに田中敦子氏(東京都福祉保健局)が,東京都における糖尿病対策を発表した。都では医療機関同士の連携推進のために,専門医への紹介・かかりつけ医への逆紹介時のポイントをまとめ,二次保健医療圏ごとの検討会設置などを行った。地域連携登録医療機関数は4年間で約3倍になり,糖尿病による透析導入が減少したという。

 糖尿病患者の65%は診療所を受診している。かかりつけ医機能の拡充が求められる中,羽鳥裕氏(日医)は近年の日医の取り組みを紹介。かかりつけ医機能を高めるための研修制度を2016年に,診療情報を収集・解析する日医かかりつけ医糖尿病データベース研究事業(J-DOME)を2017年に開始した。かかりつけ医への情報提供と前向き研究を継続的に実施する姿勢を強調した。

 治療が長期にわたり,治療効果が患者の生活習慣に左右される糖尿病診療では,医師だけで結論を出すのでなく,多職種でかかわりながら療養を支援する必要がある。横田太持氏(慈恵医大葛飾医療センター)は,糖尿病診療のチーム医療へのオープンダイアローグの応用を提案した。患者の発言を否定せず傾聴し,患者―看護師―管理栄養士の3者で対話を行い,価値観を共有することで,多職種間の説明に相違がなくなるだけでなく,患者の生活習慣により深く介入できるようになったという。

 患者の生活の場で得られる情報を治療にどうつなげるか。訪問看護師の臼井玲華氏(総合ケアステーションわかば)は,訪問看護に抵抗感を持つ患者を看護師が理解し,共感に至った経験を発表した。訪問を繰り返す中で「管理されることが嫌いという患者の特性を家族との会話から得たことがきっかけ」と振り返り,看護師の支援を患者がどう受け止めたかを知ることが重要だと話した。

 在宅療養支援診療所における管理栄養士の立場から話したのは,中村育子氏(福岡クリニック)。外出機会の少ない高齢者は食事以外の楽しみが減り,栄養バランスが崩れやすい。管理栄養士は家族やケアマネジャーと協働し,栄養や食事の管理だけでなく,通所サービスなど食事以外に楽しみを見つける提案ができると話した。

 糖尿病への運動療法では,加齢による身体機能変化の考慮が欠かせない。理学療法士の天川淑宏氏(東京医大八王子医療センター)は,神奈川県清川村での取り組みを紹介。「立ち上がる」といった日常動作に運動療法の視点からアドバイスを行った結果,介入前より活動強度が有意に上がったと報告した。

シンポジウムの様子

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