医学界新聞

連載

2017.05.08



栄養疫学者の視点から

栄養に関する研究の質は玉石混交。情報の渦に巻き込まれないために,栄養疫学を専門とする著者が「食と健康の関係」を考察します。

[第2話]サプリメント①

今村 文昭(英国ケンブリッジ大学 MRC(Medical Research Council)疫学ユニット)


前回よりつづく

 私は2002年から,栄養→疫学・栄養疫学という順でその学問領域に足を踏み入れました。日本では化学専攻でしたので栄養学は米国の大学院が出発点であり,自国の食や文化と健康との関係については研究意欲はありながらも系統的に触れることがないままとなっています。

 さて今回のテーマは,ちまたに氾濫しているサプリメントです。日本では保健機能食品の適切な利用促進の啓発を目的とした「サプリメントアドバイザー」の養成が民間団体により進められています。しかし,これは公衆衛生上どの程度有用でしょうか? そもそも健康食品の有用性については客観的なエビデンスに乏しいのが現状です。

 βカロテンはがん予防などの効果がかつて期待されていましたが,サプリメントの服用によって喫煙者・アスベスト暴露者の死亡率を上げるという衝撃的な臨床試験CARET studyが,1996年に発表されました。このころから同様の試験が世界中で盛んに実施されましたが,有効性を示すエビデンスは出ていません()。よって,生活習慣病の予防を目的としたサプリメント摂取には否定的にならざるを得ません。がん患者の多くが医師に内緒でサプリメントを服用している実態などを鑑みれば,過剰な期待を持たせる情報には注意する必要があります。

 βカロテンのサプリメントと死亡率との関係のメタ解析
サプリメントの常用が死亡率を7%上げると算出された。ATBCが喫

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