医学界新聞

連載

2010.09.20

看護のアジェンダ
 看護・医療界の“いま”を見つめ直し,読み解き,
 未来に向けたアジェンダ(検討課題)を提示します。
〈第69回〉
「看護業務基準」の価値

井部俊子
聖路加看護大学学長


前回よりつづく

 今年の夏はことのほか暑いが,そろそろ晩夏である。私は,その昔,原田康子の小説『晩夏』を読んで以来,この言葉に魅了されている(と原稿に書いたところ,正しくは『挽歌』であると編集者から指摘された。私は長い間,誤った幻想を抱いていたのであろうか)。

 秋は学会シーズンでもある。その先陣を切って,先日,日本看護管理学会年次大会(大会長=嶋森好子氏)がパシフィコ横浜で開催された。今回はそのプログラムの中で,私が座長を務めた「特別講演II」について報告したい。

「名状しがたい感動と衝撃」

 私は座長役をこれまで何回か経験しているが,今回は私にとって「大変誇りに思う」壇上であった。

 特別講演IIのテーマは「医療と法――私と看護業務基準」と題し,講師は奧野善彦氏(北里大学名誉教授・奧野総合法律事務所弁護士)であった。奧野氏は生命科学を専攻する学生に法学の授業を通して生命の尊さを説き,ゼミでは安楽死事件を題材に模擬裁判の指導に当たった。この模擬裁判指導の模様が「青春法廷――生命(いのち)を問いかける学生たち」(NHK)として放映され,1995年に第21回放送文化基金賞テレビドキュメンタリー部門「本賞」,ATP賞ノンフィクション部門「郵政大臣賞」「優秀賞」,第32回ギャラクシー賞テレビ部門選奨などを受賞した。

 一方,1995年,日本看護協会は「看護業務基準」を作成し,この年の11月に理事会で承認された。

 奧野氏は看護業務基準との出合いを次のように説明する。

 「あるとき,ゼミ生が,日本看護協会の業務委員会が発表した“看護業務基準”を見つけてきて,看護実践のあるべき姿勢を検討するためにはこの基準が不可欠な資料ではないかと言って持ってきた」。さらに続けて「この“看護業務基準”に出合ったときの感動と衝撃は名状しがたいものがあった」「弁護士会はもとより,大きな会社等の組織体にあっては,それぞれ...

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