風邪の階段:あいす,あなりしす,ありがとうございます(齋藤中哉)
連載
2009.06.08
Primary CareとTertiary Careを結ぶ全方位研修
〔 第10回 〕
風邪の階段:あいす,あなりしす,ありがとうございます
齋藤中哉(医師・医学教育コンサルタント)
第9回は,一過性の「風邪」で終わらず,長期にわたる丁寧な経過観察を要する疾患として,溶連菌感染後急性糸球体腎炎を取り上げました。「風邪」は基礎疾患を持つ患者にとっても大敵で,心機能,呼吸機能,肝機能,腎機能,耐糖能に不全がある場合,容易に増悪を来します。繰り返す「風邪」により,時に階段状に,時に急激に,非代償期/終末期に陥っていきます。
■症例
Tさんは65歳・男性。大手電気機器メーカーを5年前に退職。現在の楽しみは3歳の孫と遊ぶこと。「その孫にうつされた夏風邪が,いつまでたっても治らない」。生来健康。飲酒歴,喫煙歴なし。ビニュエット(1)
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鑑別診断は?
「治らない風邪」の訴えですが,症状が多彩です。熱はないようですが,不明熱の扱いに準じて,感染,膠原病,悪性腫瘍から考えてみましょう。ウイルス性,自己免疫性の肝炎による肝硬変は見落としたくありません。また,結核と血管炎の可能性は常に残しておきます。悪性腫瘍については,原発巣の部位を示唆する症状に乏しいため,固形腫瘍よりも,多発性骨髄腫,リンパ腫などの血液腫瘍を優先して検索します。エネルギー水準の低下が顕著なので,内分泌性,代謝性疾患を積極的に疑います。内分泌性では,甲状腺機能低下症,慢性副腎不全,下垂体機能低下症。代謝性では,年齢を考慮し,アミロイドーシス。倦怠感を中心とする多彩な全身症状に,間質性肺炎,サルコイドーシス,収縮性心外膜炎,肥大型心筋症,肺高血圧症などの呼吸循環系疾患が潜むこともあります。最後に,Tさんの経過はうつ病にも矛盾しませんから,うつ病の既往と生活(特に家庭)環境の変化を把握します。
ビニュエット(2)
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