医学界新聞

連載

2008.11.17

腫瘍外科医・あしの院長の
地域とともに歩む医療

〔 第2回 〕
緩和ケアチーム

蘆野吉和(十和田市立中央病院長)

腫瘍外科医として看護・介護と連携しながら20年にわたり在宅ホスピスを手がけてきた異色の病院長が綴る,
「がん医療」「緩和ケア」「医療を軸に地域をつくる試み」


前回よりつづく

 現在多くの病院で緩和ケアチームが誕生しています。その必要性と重要性が認識されての動きであれば喜ばしいことですが,がん診療連携拠点病院の指定更新の日程(2010年)が近づきつつあることがその大きな要因と思います。

 がん診療連携拠点病院指定の重要要件として掲げられていた“実質的な”緩和ケアチーム活動が実際の認定にあたって骨抜きにされ,多くの場合実態とかけ離れた申請で受理されました。実際には活動していない書類上の架空のチームであったものを,再認定では実地検証を行う可能性が示唆されたため,大慌てで実績づくりに躍起になっているものと思います。

 いずれにせよ,これまで遅々として進んでいなかった緩和ケアの取り組みが多くの病院で始まった点では一歩前進です。

 一方,当院の緩和ケアチームは2006年2月に誕生しました。それまでは有志が集まり勉強会のかたちで細々と継続され,消滅しかけていたものを就任後3か月目に病院長直属のチームとして再結成し,2006年1月には「緩和ケア診療加算」の算定できるチームとなりました。

 その特徴は,病院長自ら率いるチームであること,基本的なチーム構成として病棟チームとコアチームの二層構造となっていること,コンサルテーションだけでなく病床や外来を持ち,実質的な診療も担当するチームであること,そして,早期の在宅への移行を念頭において活動していることなどです。

 前任地(福島県いわき市)の病院での約20年に及ぶ在宅ホスピスケアの実践と約3年間の緩和ケアチーム(2002年8月結成,緩和ケア診療加算取得)の運用経験から盛り込んだ特徴です。

 基本的な緩和ケアを病棟チームが提供し,症状緩和が困難な場合にはコアチームが介入する,そして,その橋渡しをリンクナースが行う構図。その結果として,すべての病棟において短期間で効果的な緩和ケアが提供されるかたちが私の目標とするチームの姿です。現在,病棟のリンクナースの教育がほぼ終わり,今後はリンクナースによる各病棟看護師の教育が始まります。その目標には確実に近づいています。

 急性期病院での緩和ケアチームの役割として,現時点ではまだ症状緩和治療,特に疼痛管理が重視されていますが,2007年4月に「がん対策基本法」が施行され,在宅医療移行調整が重要な役割としてクローズアップされてきました。

 すでに当院の緩和ケアチーム専従看護師は退院調整が主な仕事になっています。痛みなどの症状を持つ患者が紹介され緩和ケアチームの介入が始まると症状は短期間でコントロールされ,在宅医療への移行準備が始まります。在宅ホスピスケアの説明,介護保険の申請の説明,担当ケアマネジャー,訪問看護ステーション,保険薬局のあっせん,そして,退院前ケアカンファレンスの日程調整など大忙しです。

 病院における緩和ケアチームの結成とその育成が現在の課題となっている一方で,すでに地域における緩和ケアチームの育成が大きな課題となっていることを最後に強調させていただきます。

 

 

つづく

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