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『レジデントのための腹部エコーの鉄則 [Web動画付]』より

連載 亀田徹

2023.10.20

 従来,腹部エコーは,検査室で行われる系統的超音波検査として行われてきましたが,近年,臨床医が自らベッドサイドで行うPoint-of-Care Ultrasonography(POCUS)の概念が世界中で共有されるようになりました。腹部エコーの世界は変化の渦中にあると言ってもよいのではないでしょうか。

 書籍『レジデントのための腹部エコーの鉄則 [Web動画付]』は,POCUSと系統的超音波検査の考え方を併せ持ち,解剖学的知識,走査法といった基本から,画像の解釈,病態の把握まで,腹部エコーを行ううえで知っておきたい“鉄則”を1冊にまとめています。本書とともに,新たな腹部エコーの時代へ歩みをすすめてみませんか。

 「医学界新聞プラス」では本書のうち,「実践編1(超音波解剖と走査法——胆囊・肝外胆管)」,「基礎編(プローブとオリエンテーション)」,「実践編3(症候別エコーの実践——下腹部痛)」の項目をピックアップし,4回に分けて紹介します。

体表から胆囊をイメージ!

図1-A, Bをもとに胆囊を体表からイメージして欲しい。
・胆囊頸部は肝臓の裏側に位置する。胆囊底部の位置は個人差がある。胆囊は,その一部は肝臓を介して,右肋骨弓下と右肋間から観察する。肋骨を避けて肋骨弓下から胆囊の描出をよくするためには,深吸気や左側臥位を利用し,肝臓と一緒に胆囊を足側に移動させる。

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走査の実際─動画視聴も!

右肋骨弓下から胆囊を観察する

・胆囊はまず仰臥位で見る。肋骨弓下で縦方向(やや斜め方向)にプローブを当てる。患者に深吸気で保持してもらい,肋骨弓に沿って心窩部から外側へスライドする。胆囊の一部を同定できれば,回転を加えながら長軸を捉える。そして傾けスライドを併用して胆囊全体を観察する(図1-1)。

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・次に反時計回転して,肋骨弓下でもう1方向から見る。傾けスライドとを組み合わせて胆囊全体を見てゆく(図1-2, 3)。

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  • ・胆囊床あたりは描出されているはずでも,胆囊の収縮(萎縮)や胆囊摘出の既往が不明で,判断に迷うことがある。その場合は胆囊窩と下大静脈を結ぶCantlie線を意識すればよい。Cantlie線を含む面に中肝静脈があり,中肝静脈(肝臓で述べる)を手掛かりに胆囊を同定すればよい(図1-4, 5)。
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左側臥位を加える

・仰臥位で胆囊の描出が難しいときには,左側臥位で描出を試みる(一般にはルーチンで行われる)。
・仰臥位と同様に胆囊の長軸をまず捉え,傾けスライドで胆囊全体を観察する。次に反時計回転して,肋骨弓下でもう1方向から傾けスライドで胆囊全体を見てゆく(図1-6)。

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右肋骨弓下から肝外胆管を観察する

・右肋骨弓下から胆囊を探す要領で,門脈を指標にするとよい。肝外胆管は門脈の腹側に位置する(図1-C,図1-7)。
・若年者は肝外胆管が細いので,右肝動脈との区別がつきにくいことがある。このようなときには,カラードプラを併用して両者を区別するとよい。時に肝外胆管の腹側に右肝動脈が位置していることがある。肝外胆管についても,左側臥位のほうが描出されやすい場合が少なくない。

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右肋間から胆囊を観察する

・肋骨弓下から胆囊の描出が難しい場合は,肋間走査で胆囊の描出を試みてほしい(一般にはルーチンで行われる)。
・肋間に平行にプローブを当てて,肋間に沿ってスライドし,傾けを加えながら胆囊を探す。至適な肋間を選択後,傾けで十分に胆囊を観察する。肋間であっても少し回転を加えてもよい。肋間からは胆囊頸部がよく描出される(図1-8)。

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胆囊・肝外胆管のweb動画はこちら(図1-1~8に対応)

 

 

プローブを握る前にこの1冊!

<内容紹介>解剖学的知識、走査法といった基本から、画像の解釈、病態の把握、そして日常臨床でよく出会うものの、実はどこにも対応法が載っていないものまで、腹部エコーを行ううえで知っておきたい“鉄則”をまとめた1冊。悩みがち・迷いがちなテーマを中心に取り上げ、症例をもとに実践的な対応策を示す。実践編1「超音波解剖とプローブ走査法」では、丁寧な解説とWeb動画でハンズオンセミナーのように走査のコツを修得できる。

目次はこちらから

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