内科救急で使える! Point-of-Care超音波ベーシックス[Web動画付]
超音波は外来・ベッドサイドでこう使う!
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臨床医が診断推論に基づき観察部位を絞って行う超音波検査として、いま注目を集めているPoint-of-Care超音波(POCUS)。本書は内科救急でよくみる腹部・循環器・呼吸器疾患への活用法をエビデンスに基づいてわかりやすく解説しました。身体所見とPOCUSをどう組み合わせて用いるかなど、聴診器のように日常的に超音波を活用するためのノウハウが詰まった1冊です。Web動画243本付き!
著 | 亀田 徹 |
---|---|
発行 | 2019年04月判型:B5頁:234 |
ISBN | 978-4-260-03805-8 |
定価 | 4,950円 (本体4,500円+税) |
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- 目次
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序文
開く
Prefix(Michael Blaivas)/はじめに(亀田 徹)
Prefix
Point of care ultrasound is a tremendous tool, one that in the right hands will save lives and change outcomes. I first became interested in point of care ultrasound in 1993, but it took nearly two years before I understood the advantages it offered me. As I moved from curiosity to daily use and reliance on ultrasound as part of my clinical practice, I started to fully grasp the ability ultrasound gave me. At that time, I was the only resident or faculty who used ultrasound daily in my emergency department. What I saw was an advantage I had when evaluating patients in cardiac arrest, ones with possible AAA, pericardial effusion, ectopic pregnancy, gallbladder stones and more. My colleagues ordered tests, pressed on abdomens, listened to hearts and wondered what was really going on with their patients. I felt safer than before ultrasound, could diagnose things others could not and do it faster. With ultrasound guidance I started to performed procedures with speed and accuracy no one could match, because they did not use ultrasound. Soon, I became the go to person for difficult procedures and critically ill patients, not because I knew more or had better baseline skills, but because I could see through the skin and look directly at the anatomy, pathology and physiology of the patient - while others could not.
Fast forward two decades and many clinicians around the world have discovered ultrasound. Many around me have had their clinical careers reinvigorated because of the mastery ultrasound allows in bedside diagnosis and procedures. Point of care ultrasound is like no other tool in our arsenal of weapons against illness and with developments such as artificial intelligence our capabilities with ultrasound as clinicians will only improve and our patients will benefit. I will never forget one thing a nurse said to me: “I come and get you for the sick patients because you can do anything with that ultrasound and save anyone”. This is hardly true, but is reflective of how much more capable I am clinically with ultrasound than I would be without ultrasound in my hands.
Michael Blaivas
本書の出版にあたり,Point-of-Care ultrasound(POCUS)のパイオニアで,現在もこの領域を牽引されているMichael Blaivas先生に「POCUSの思い出」について執筆いただきました.彼は私よりも10年前にベッドサイドエコー,いまでいうPOCUSに関心を持ち,積極的にPOCUSを活用して,臨床研究で得られた成果を数多く世に示してきました.私は検査室で超音波を学び始めましたが,その後,救急外来でPOCUSとして応用し,適応範囲を拡大していくにあたり,彼の著した論文,講演がおおいに参考になりました.POCUSに関心のある方,これからPOCUSを学ぼうと考えている方には,Blaivas先生の「POCUSの思い出」をぜひ一読いただきたいと考え,本書の冒頭に掲載しました.
はじめに
私が超音波を学びたいと思うようになったのは,病歴・バイタルサイン・身体所見から得られた臨床推論をもとに,体内がどうなっているのかを「その場で自分の手で確かめたい」というシンプルな発想からであったと記憶しています.救急医として迅速に原因を確かめたいというだけではなく,自ら画像をつくる,描出するという超音波のアートとしての側面に魅力を感じていたようです.
当時,検査室で行われる系統的超音波検査は確立していましたが,救急室や一般外来,病棟などベッドサイドで行われる超音波にはあまり関心が払われていませんでした.またCT全盛のなかにあって,ベッドサイドにおける超音波の位置づけは不明確になっていた感が否めません.当時はベッドサイドでgeneralな超音波の指導を受ける機会はほとんどありませんでしたので,超音波検査室で超音波指導医や検査技師から手ほどきを受けた次第です.
その後,救急室に戻り,検査室と同様にさまざまな病態をPOCUSで確認する機会を得ました.また肺超音波など,ベッドサイドならではの活用法を役立てることができました.新しいPOCUS利用法の発見もありました.臓器別を越えた領域横断的なPOCUS活用法の有用性を理解できました.さまざまな手技に超音波ガイド下が役立つことも実感しました.
今日は,私が救急室でPOCUSを始めたころとは隔世の感があり,POCUSはブームとなっています.各地でハンズオンセミナーが開催され,多くの医学系雑誌でPOCUSの特集が組まれ,POCUSに特化した書籍も数多く出版されています.超音波装置は一定の性能を維持したうえでコンパクトになり,ポケットエコーも進化を続けています.臨床医がポケットエコーを所有し,病歴・バイタルサイン・身体所見・POCUSをセットにして臨床推論を展開することが当たり前になることも予測されます.POCUSを診療に加えることにより,診断学の世界が広がり,患者ケア向上につながります.
本書は,医学書院の月刊誌「総合診療」の連載「診察で使える! 急性期Point-of-Care超音波ベーシックス」に加筆を行い,内科救急診療で役立つ場面を想定し,腹部,循環器,呼吸器のPOCUSにフォーカスしたものです.また症候に基づいたPOCUSの活用法について述べ,ポケットエコーの可能性について取り上げました.POCUSに関連するエビデンスはひととおり押さえ,POCUSの考え方に沿って記述しています.読者のみなさんの理解の助けになるように,POCUSの場面で利用されるポータブル装置で得られた画像・動画を数多くみられるように配慮しました.至らぬところも少なからずあろうかと思いますが,フィードバックをいただければありがたく存じます.特にこれからPOCUSを学ぼうとしている方,内科救急診療におけるPOCUSの知識を整理したい方にとって,本書が少しでもお役に立つことができれば著者としてこのうえない喜びです.そして診断に寄与する画像が描出されたとき,超音波ガイド下で手技がうまくいったときに,「超音波をやってよかった!」という実感を共有させていただきたいと思います.
この本が仕上がるまでには,多くの方からお力添え,ご協力をいただきました.特に自治医科大学臨床検査医学講座の谷口信行教授,済生会宇都宮病院超音波診断科の川井夫規子先生,超音波検査室の皆様,安曇野赤十字病院の中野武院長,救急科・超音波検査室の皆様,GEヘルスケアの神山直久様にこの場を借りまして厚く御礼申し上げます.また「総合診療」の連載時より,医学書院の野中良美さんと天野貴洋さんには大変お世話になりました.そして貴重な時間を与えてくれた正美,千夏,哲平に感謝いたします.
2019年3月
亀田 徹
Prefix
Point of care ultrasound is a tremendous tool, one that in the right hands will save lives and change outcomes. I first became interested in point of care ultrasound in 1993, but it took nearly two years before I understood the advantages it offered me. As I moved from curiosity to daily use and reliance on ultrasound as part of my clinical practice, I started to fully grasp the ability ultrasound gave me. At that time, I was the only resident or faculty who used ultrasound daily in my emergency department. What I saw was an advantage I had when evaluating patients in cardiac arrest, ones with possible AAA, pericardial effusion, ectopic pregnancy, gallbladder stones and more. My colleagues ordered tests, pressed on abdomens, listened to hearts and wondered what was really going on with their patients. I felt safer than before ultrasound, could diagnose things others could not and do it faster. With ultrasound guidance I started to performed procedures with speed and accuracy no one could match, because they did not use ultrasound. Soon, I became the go to person for difficult procedures and critically ill patients, not because I knew more or had better baseline skills, but because I could see through the skin and look directly at the anatomy, pathology and physiology of the patient - while others could not.
Fast forward two decades and many clinicians around the world have discovered ultrasound. Many around me have had their clinical careers reinvigorated because of the mastery ultrasound allows in bedside diagnosis and procedures. Point of care ultrasound is like no other tool in our arsenal of weapons against illness and with developments such as artificial intelligence our capabilities with ultrasound as clinicians will only improve and our patients will benefit. I will never forget one thing a nurse said to me: “I come and get you for the sick patients because you can do anything with that ultrasound and save anyone”. This is hardly true, but is reflective of how much more capable I am clinically with ultrasound than I would be without ultrasound in my hands.
Michael Blaivas
本書の出版にあたり,Point-of-Care ultrasound(POCUS)のパイオニアで,現在もこの領域を牽引されているMichael Blaivas先生に「POCUSの思い出」について執筆いただきました.彼は私よりも10年前にベッドサイドエコー,いまでいうPOCUSに関心を持ち,積極的にPOCUSを活用して,臨床研究で得られた成果を数多く世に示してきました.私は検査室で超音波を学び始めましたが,その後,救急外来でPOCUSとして応用し,適応範囲を拡大していくにあたり,彼の著した論文,講演がおおいに参考になりました.POCUSに関心のある方,これからPOCUSを学ぼうと考えている方には,Blaivas先生の「POCUSの思い出」をぜひ一読いただきたいと考え,本書の冒頭に掲載しました.
はじめに
私が超音波を学びたいと思うようになったのは,病歴・バイタルサイン・身体所見から得られた臨床推論をもとに,体内がどうなっているのかを「その場で自分の手で確かめたい」というシンプルな発想からであったと記憶しています.救急医として迅速に原因を確かめたいというだけではなく,自ら画像をつくる,描出するという超音波のアートとしての側面に魅力を感じていたようです.
当時,検査室で行われる系統的超音波検査は確立していましたが,救急室や一般外来,病棟などベッドサイドで行われる超音波にはあまり関心が払われていませんでした.またCT全盛のなかにあって,ベッドサイドにおける超音波の位置づけは不明確になっていた感が否めません.当時はベッドサイドでgeneralな超音波の指導を受ける機会はほとんどありませんでしたので,超音波検査室で超音波指導医や検査技師から手ほどきを受けた次第です.
その後,救急室に戻り,検査室と同様にさまざまな病態をPOCUSで確認する機会を得ました.また肺超音波など,ベッドサイドならではの活用法を役立てることができました.新しいPOCUS利用法の発見もありました.臓器別を越えた領域横断的なPOCUS活用法の有用性を理解できました.さまざまな手技に超音波ガイド下が役立つことも実感しました.
今日は,私が救急室でPOCUSを始めたころとは隔世の感があり,POCUSはブームとなっています.各地でハンズオンセミナーが開催され,多くの医学系雑誌でPOCUSの特集が組まれ,POCUSに特化した書籍も数多く出版されています.超音波装置は一定の性能を維持したうえでコンパクトになり,ポケットエコーも進化を続けています.臨床医がポケットエコーを所有し,病歴・バイタルサイン・身体所見・POCUSをセットにして臨床推論を展開することが当たり前になることも予測されます.POCUSを診療に加えることにより,診断学の世界が広がり,患者ケア向上につながります.
本書は,医学書院の月刊誌「総合診療」の連載「診察で使える! 急性期Point-of-Care超音波ベーシックス」に加筆を行い,内科救急診療で役立つ場面を想定し,腹部,循環器,呼吸器のPOCUSにフォーカスしたものです.また症候に基づいたPOCUSの活用法について述べ,ポケットエコーの可能性について取り上げました.POCUSに関連するエビデンスはひととおり押さえ,POCUSの考え方に沿って記述しています.読者のみなさんの理解の助けになるように,POCUSの場面で利用されるポータブル装置で得られた画像・動画を数多くみられるように配慮しました.至らぬところも少なからずあろうかと思いますが,フィードバックをいただければありがたく存じます.特にこれからPOCUSを学ぼうとしている方,内科救急診療におけるPOCUSの知識を整理したい方にとって,本書が少しでもお役に立つことができれば著者としてこのうえない喜びです.そして診断に寄与する画像が描出されたとき,超音波ガイド下で手技がうまくいったときに,「超音波をやってよかった!」という実感を共有させていただきたいと思います.
この本が仕上がるまでには,多くの方からお力添え,ご協力をいただきました.特に自治医科大学臨床検査医学講座の谷口信行教授,済生会宇都宮病院超音波診断科の川井夫規子先生,超音波検査室の皆様,安曇野赤十字病院の中野武院長,救急科・超音波検査室の皆様,GEヘルスケアの神山直久様にこの場を借りまして厚く御礼申し上げます.また「総合診療」の連載時より,医学書院の野中良美さんと天野貴洋さんには大変お世話になりました.そして貴重な時間を与えてくれた正美,千夏,哲平に感謝いたします.
2019年3月
亀田 徹
目次
開く
本書の構成・使い方
第1章 Point-of-Care超音波の基本
Lecture 1 Point-of-Care超音波とは?
はじめに Point-of-Care超音波の誕生!
POCUSの歴史と発展 誰がPOCUSを行うか?
POCUSの概念と守備範囲 系統的超音波検査と対比すると……
臨床推論とPOCUS 病歴・身体所見+POCUSで!
POCUS導入の課題 患者ケア改善という視点で検討を!
Lecture 2 知っておきたい超音波の基礎
はじめに POCUSでも「超音波の基礎」は大切です!
パルス波と超音波画像の成り立ち
どのようにして超音波で画像がつくられるのでしょうか?
空間分解能と減衰 分解能と減衰の関係は?
プローブの扱いと画像の表示 お作法の習得は上達への第一歩!(その1)
超音波装置の取り扱いと画像の適正化 お作法の習得は上達への第一歩!(その2)
アーチファクト アーチファクトはすべてノイズ?
超音波の音響安全 超音波は無害?
第2章 腹部
Lecture 3 急性胆囊炎を疑ったとき
はじめに 胆囊の観察は簡単?
胆嚢の走査法とコツ
キーワードは,門脈本幹と肝外胆管,呼吸,体位,右肋間走査!
POCUSで利用される急性胆囊炎の所見 観察項目とポイントは?
身体所見とPOCUS Murphy’s signとsonographic Murphy’s sign!
POCUSとエビデンス 画像診断の専門家による超音波と診断精度は同等?
急性胆囊炎の診断 未来のdecision treeは?
Lecture 4 腸閉塞を疑ったとき
はじめに 腸閉塞を超音波で診断?
走査法とコツ 確立された消化管超音波走査法を参考に!
POCUSで利用される腸閉塞の所見 観察項目とポイントは?
身体所見とPOCUS 検査前確率を予測し適応を検討しよう!
POCUSとエビデンス POCUSの対象となる可能性は十分にあります!
腸閉塞の診断 未来のdecision treeは?
Lecture 5 急性虫垂炎を疑ったとき
はじめに 急性虫垂炎の超音波診断は確立されている?
虫垂同定のコツ 系統的走査を行うか? それとも身体所見をガイドにするか?
POCUSで利用される急性虫垂炎の所見 観察項目とポイントは?
身体所見とPOCUS 身体所見+POCUSは素晴らしい!
POCUSとエビデンス やはり検査前確率の予測が大切!
急性虫垂炎の診断 未来のdecision treeは?
Lecture 6 尿路結石を疑ったとき
はじめに 尿路結石ではPOCUSの出番です!
腎臓と膀胱の走査法とコツ 採尿前に行いましょう!
POCUSで利用される所見 観察項目とポイントは?
病歴・身体所見とPOCUS あたりをつけてあとはPOCUSで確認するだけ!?
POCUSとエビデンス CT全盛にあって,超音波の位置づけは?
尿路結石の診断 未来のdecision treeは?
Lecture 7 腹部大動脈瘤を疑ったとき
はじめに ウィリアム・オスラーと腹部大動脈瘤
走査法とコツ 腹部大動脈の観察はシンプルですが……
POCUSで利用される腹部大動脈瘤の所見 観察項目とポイントは?
身体所見とPOCUS 触診所見をPOCUSで確認しよう!
POCUSとエビデンス 急性期診療とスクリーニングで有用です!
急性大動脈解離の所見 急性大動脈解離にもチャレンジ!
腹部大動脈瘤の診断 未来のdecision treeは?
Lecture 8 腹腔内出血を疑ったとき
はじめに 内因性疾患に対してもFASTの手法を利用しよう!
走査法とコツ,部位別腹腔内出血の所見 感度を上げるテクニックは?
病歴・身体所見とPOCUS 少量の腹腔内出血を見逃さないためには?
POCUSとエビデンス FASTのエビデンスで類推は可能!
腹腔内出血の診断 未来のdecision treeは?
第3章 循環器
Lecture 9 Focused Cardiac Ultrasound(FoCUS)と
基本断面の描出・トラブルシューティング
はじめに FoCUSとは?
プローブの基本走査のおさらい 慣れないうちは5つの動きに分けて練習を!
プローブと画面(スクリーン)の対応 走査開始時に確認してください!
各断面の走査法とコツ 右室は右前,長軸は右肩,体表で弁の位置をイメージ!
質の高い循環器診療を目指して 基本を押さえれば,臨床で必ず役立ちます!
Lecture 10 左室収縮能低下を疑ったとき
はじめに 目測で包括的に左室収縮能を評価します!
FoCUSで利用される左室収縮能低下の所見 観察項目とポイントは?
身体所見とFoCUS 迅速に確証を得るために利用しましょう!
FoCUSとエビデンス トレーニングを積めばvisual EFは有用です!
左室収縮能低下の評価 未来のdecision treeは?
Lecture 11 心タンポナーデを疑ったとき
はじめに 心タンポナーデの病態をreviewしましょう!
FoCUSで利用される心タンポナーデの所見 観察項目とポイントは?
身体所見とFoCUS 組み合わせで診断します!
FoCUSとエビデンス 心停止時も有用!
超音波ガイド下心膜穿刺 最適な穿刺部位を選択できます!
心タンポナーデの初期診療 未来のdecision treeは?
Lecture 12 急性肺塞栓症を疑ったとき
はじめに 急性肺塞栓症は予後に基づいて分類されます!
FoCUSで利用される急性肺塞栓症の所見 観察項目とポイントは?
バイタルサイン・身体所見とFoCUS 血圧低下・ショック+FoCUSで決まり!?
FoCUSとエビデンス 早期診断と予後予測に有用です!
急性肺塞栓症の初期診療 未来のdecision treeは?
Lecture 13 循環血液量減少を疑ったとき
はじめに 下大静脈の観察の意義は?
下大静脈の走査と計測 下大静脈は呼吸で「移動」します!
FoCUSで得られる循環血液量減少の所見 観察項目とポイントは?
病歴・バイタルサイン・身体所見とFoCUS 統合して全体像を把握しましょう!
FoCUSとエビデンス 輸液反応性とは?
循環血液量減少の評価と輸液療法 未来のdecision treeは?
Lecture 14 下肢深部静脈血栓症を疑ったとき
はじめに 2点エコーはすばやく施行できます!
走査法とコツ 圧迫操作による動的観察が特徴です!
POCUSで利用される下肢DVTの所見 観察項目とポイントは?
病歴・身体所見とPOCUS Wells スコアでリスクの層別化を!
POCUSとエビデンス 少なくともDVTの拾い上げに有用です!
下肢DVTの診断 未来のdecision treeは?
第4章 呼吸器
Lecture 15 肺超音波の基本事項
はじめに 「肺超音波」とは?
プローブの基本走査と画面の表示 走査法はすぐにマスターできます!
肺超音波の基本事項 鍵はアーチファクトです!
Lecture 16 気胸を疑ったとき
はじめに 呼吸音を視覚で捉えます!
気胸の所見 観察項目とポイントは?
聴診とPOCUS 呼吸音の左右差がないケースでも有用です!
POCUSとエビデンス 感度は臥位X線よりも高い!
気胸の初期診療 未来のdecision treeは?
Lecture 17 心原性肺水腫を疑ったとき
はじめに キーワードはBライン!
肺水腫の所見 観察項目とポイントは?
病歴・身体所見とPOCUS 病歴・身体所見と組み合わせて診断!
POCUSとエビデンス 精度にバラツキはありますが……
心原性肺水腫の初期診断 未来のdecision treeは?
Lecture 18 肺炎を疑ったとき
はじめに 肺炎を超音波で診断?
肺炎の超音波所見 観察項目とポイントは?
病歴・身体所見とPOCUS 病歴・身体所見をもとにフォーカス!
POCUSとエビデンス X線より感度は高い!
肺炎の初期診療 未来のdecision treeは?
Lecture 19 胸水を疑ったとき
はじめに 胸水評価について再確認!
走査法とコツ,胸水の所見 胸水の評価は簡単?
身体所見とPOCUS 身体所見のスキルアップに!
POCUSとエビデンス 仰臥位ではX線より精度は高い!
超音波で確認のうえでの胸腔穿刺・ドレナージ 医療安全上必須手技です!
胸水の初期診療 未来のdecision treeは?
第5章 症候に基づいたPoint-of-Care超音波の活用
Lecture 20 ショックと呼吸困難の評価
はじめに ショック・呼吸困難では横断的活用を!
POCUSによるショックの評価 POCUSは絶大な威力を発揮します!
POCUSによる呼吸困難の評価 BLUEプロトコルから大規模研究まで!
ショックと呼吸困難の評価のまとめ 共通のフレームワークで!
Lecture 21 心停止の評価
はじめに 「4H 4T」のうち心臓超音波検査で評価可能な病態は?
蘇生中のFoCUS施行手順 10秒以内に評価を!
蘇生中にFoCUSで得られる所見 心停止なのに心臓に動きがある?
心停止時の FoCUS とエビデンス 心臓の動きの有無は生命予後と関連します!
FoCUS を組み入れた心停止の評価 未来のdecision treeは?
Lecture 22 気管挿管の確認
はじめに 超音波で即断できます!
上気道と頸部食道の描出 基本的な超音波解剖を理解しておきましょう!
気管・食道挿管の所見 目の覚めるようなdouble tract sign!
POCUSとエビデンス 精度は高く,有用性は明らかです!
気管挿管の確認 未来のdecision treeは?
第6章 Point-of-Care超音波のこれから
Lecture 23 ポケットエコー
はじめに 小型化は実現しましたが……
ポケットエコーのエビデンスと領域別活用 各疾患・病態に対する有効性は?
ポケットエコーの課題 アウトカムベースの検討を!
ポケットエコーを用いた診療 未来の診療体系は?
索引
column
大腸炎と腹部POCUS
直腸診併用による経腹超音波ガイド下尿道カテーテル挿入
Point-of-Care超音波研究会の紹介
World Interactive Network Focused on Critical Ultrasound(WINFOCUS)
医学部教育とPOCUS
慢性閉塞性肺疾患と肺超音波
高地肺水腫と肺超音波
第1章 Point-of-Care超音波の基本
Lecture 1 Point-of-Care超音波とは?
はじめに Point-of-Care超音波の誕生!
POCUSの歴史と発展 誰がPOCUSを行うか?
POCUSの概念と守備範囲 系統的超音波検査と対比すると……
臨床推論とPOCUS 病歴・身体所見+POCUSで!
POCUS導入の課題 患者ケア改善という視点で検討を!
Lecture 2 知っておきたい超音波の基礎
はじめに POCUSでも「超音波の基礎」は大切です!
パルス波と超音波画像の成り立ち
どのようにして超音波で画像がつくられるのでしょうか?
空間分解能と減衰 分解能と減衰の関係は?
プローブの扱いと画像の表示 お作法の習得は上達への第一歩!(その1)
超音波装置の取り扱いと画像の適正化 お作法の習得は上達への第一歩!(その2)
アーチファクト アーチファクトはすべてノイズ?
超音波の音響安全 超音波は無害?
第2章 腹部
Lecture 3 急性胆囊炎を疑ったとき
はじめに 胆囊の観察は簡単?
胆嚢の走査法とコツ
キーワードは,門脈本幹と肝外胆管,呼吸,体位,右肋間走査!
POCUSで利用される急性胆囊炎の所見 観察項目とポイントは?
身体所見とPOCUS Murphy’s signとsonographic Murphy’s sign!
POCUSとエビデンス 画像診断の専門家による超音波と診断精度は同等?
急性胆囊炎の診断 未来のdecision treeは?
Lecture 4 腸閉塞を疑ったとき
はじめに 腸閉塞を超音波で診断?
走査法とコツ 確立された消化管超音波走査法を参考に!
POCUSで利用される腸閉塞の所見 観察項目とポイントは?
身体所見とPOCUS 検査前確率を予測し適応を検討しよう!
POCUSとエビデンス POCUSの対象となる可能性は十分にあります!
腸閉塞の診断 未来のdecision treeは?
Lecture 5 急性虫垂炎を疑ったとき
はじめに 急性虫垂炎の超音波診断は確立されている?
虫垂同定のコツ 系統的走査を行うか? それとも身体所見をガイドにするか?
POCUSで利用される急性虫垂炎の所見 観察項目とポイントは?
身体所見とPOCUS 身体所見+POCUSは素晴らしい!
POCUSとエビデンス やはり検査前確率の予測が大切!
急性虫垂炎の診断 未来のdecision treeは?
Lecture 6 尿路結石を疑ったとき
はじめに 尿路結石ではPOCUSの出番です!
腎臓と膀胱の走査法とコツ 採尿前に行いましょう!
POCUSで利用される所見 観察項目とポイントは?
病歴・身体所見とPOCUS あたりをつけてあとはPOCUSで確認するだけ!?
POCUSとエビデンス CT全盛にあって,超音波の位置づけは?
尿路結石の診断 未来のdecision treeは?
Lecture 7 腹部大動脈瘤を疑ったとき
はじめに ウィリアム・オスラーと腹部大動脈瘤
走査法とコツ 腹部大動脈の観察はシンプルですが……
POCUSで利用される腹部大動脈瘤の所見 観察項目とポイントは?
身体所見とPOCUS 触診所見をPOCUSで確認しよう!
POCUSとエビデンス 急性期診療とスクリーニングで有用です!
急性大動脈解離の所見 急性大動脈解離にもチャレンジ!
腹部大動脈瘤の診断 未来のdecision treeは?
Lecture 8 腹腔内出血を疑ったとき
はじめに 内因性疾患に対してもFASTの手法を利用しよう!
走査法とコツ,部位別腹腔内出血の所見 感度を上げるテクニックは?
病歴・身体所見とPOCUS 少量の腹腔内出血を見逃さないためには?
POCUSとエビデンス FASTのエビデンスで類推は可能!
腹腔内出血の診断 未来のdecision treeは?
第3章 循環器
Lecture 9 Focused Cardiac Ultrasound(FoCUS)と
基本断面の描出・トラブルシューティング
はじめに FoCUSとは?
プローブの基本走査のおさらい 慣れないうちは5つの動きに分けて練習を!
プローブと画面(スクリーン)の対応 走査開始時に確認してください!
各断面の走査法とコツ 右室は右前,長軸は右肩,体表で弁の位置をイメージ!
質の高い循環器診療を目指して 基本を押さえれば,臨床で必ず役立ちます!
Lecture 10 左室収縮能低下を疑ったとき
はじめに 目測で包括的に左室収縮能を評価します!
FoCUSで利用される左室収縮能低下の所見 観察項目とポイントは?
身体所見とFoCUS 迅速に確証を得るために利用しましょう!
FoCUSとエビデンス トレーニングを積めばvisual EFは有用です!
左室収縮能低下の評価 未来のdecision treeは?
Lecture 11 心タンポナーデを疑ったとき
はじめに 心タンポナーデの病態をreviewしましょう!
FoCUSで利用される心タンポナーデの所見 観察項目とポイントは?
身体所見とFoCUS 組み合わせで診断します!
FoCUSとエビデンス 心停止時も有用!
超音波ガイド下心膜穿刺 最適な穿刺部位を選択できます!
心タンポナーデの初期診療 未来のdecision treeは?
Lecture 12 急性肺塞栓症を疑ったとき
はじめに 急性肺塞栓症は予後に基づいて分類されます!
FoCUSで利用される急性肺塞栓症の所見 観察項目とポイントは?
バイタルサイン・身体所見とFoCUS 血圧低下・ショック+FoCUSで決まり!?
FoCUSとエビデンス 早期診断と予後予測に有用です!
急性肺塞栓症の初期診療 未来のdecision treeは?
Lecture 13 循環血液量減少を疑ったとき
はじめに 下大静脈の観察の意義は?
下大静脈の走査と計測 下大静脈は呼吸で「移動」します!
FoCUSで得られる循環血液量減少の所見 観察項目とポイントは?
病歴・バイタルサイン・身体所見とFoCUS 統合して全体像を把握しましょう!
FoCUSとエビデンス 輸液反応性とは?
循環血液量減少の評価と輸液療法 未来のdecision treeは?
Lecture 14 下肢深部静脈血栓症を疑ったとき
はじめに 2点エコーはすばやく施行できます!
走査法とコツ 圧迫操作による動的観察が特徴です!
POCUSで利用される下肢DVTの所見 観察項目とポイントは?
病歴・身体所見とPOCUS Wells スコアでリスクの層別化を!
POCUSとエビデンス 少なくともDVTの拾い上げに有用です!
下肢DVTの診断 未来のdecision treeは?
第4章 呼吸器
Lecture 15 肺超音波の基本事項
はじめに 「肺超音波」とは?
プローブの基本走査と画面の表示 走査法はすぐにマスターできます!
肺超音波の基本事項 鍵はアーチファクトです!
Lecture 16 気胸を疑ったとき
はじめに 呼吸音を視覚で捉えます!
気胸の所見 観察項目とポイントは?
聴診とPOCUS 呼吸音の左右差がないケースでも有用です!
POCUSとエビデンス 感度は臥位X線よりも高い!
気胸の初期診療 未来のdecision treeは?
Lecture 17 心原性肺水腫を疑ったとき
はじめに キーワードはBライン!
肺水腫の所見 観察項目とポイントは?
病歴・身体所見とPOCUS 病歴・身体所見と組み合わせて診断!
POCUSとエビデンス 精度にバラツキはありますが……
心原性肺水腫の初期診断 未来のdecision treeは?
Lecture 18 肺炎を疑ったとき
はじめに 肺炎を超音波で診断?
肺炎の超音波所見 観察項目とポイントは?
病歴・身体所見とPOCUS 病歴・身体所見をもとにフォーカス!
POCUSとエビデンス X線より感度は高い!
肺炎の初期診療 未来のdecision treeは?
Lecture 19 胸水を疑ったとき
はじめに 胸水評価について再確認!
走査法とコツ,胸水の所見 胸水の評価は簡単?
身体所見とPOCUS 身体所見のスキルアップに!
POCUSとエビデンス 仰臥位ではX線より精度は高い!
超音波で確認のうえでの胸腔穿刺・ドレナージ 医療安全上必須手技です!
胸水の初期診療 未来のdecision treeは?
第5章 症候に基づいたPoint-of-Care超音波の活用
Lecture 20 ショックと呼吸困難の評価
はじめに ショック・呼吸困難では横断的活用を!
POCUSによるショックの評価 POCUSは絶大な威力を発揮します!
POCUSによる呼吸困難の評価 BLUEプロトコルから大規模研究まで!
ショックと呼吸困難の評価のまとめ 共通のフレームワークで!
Lecture 21 心停止の評価
はじめに 「4H 4T」のうち心臓超音波検査で評価可能な病態は?
蘇生中のFoCUS施行手順 10秒以内に評価を!
蘇生中にFoCUSで得られる所見 心停止なのに心臓に動きがある?
心停止時の FoCUS とエビデンス 心臓の動きの有無は生命予後と関連します!
FoCUS を組み入れた心停止の評価 未来のdecision treeは?
Lecture 22 気管挿管の確認
はじめに 超音波で即断できます!
上気道と頸部食道の描出 基本的な超音波解剖を理解しておきましょう!
気管・食道挿管の所見 目の覚めるようなdouble tract sign!
POCUSとエビデンス 精度は高く,有用性は明らかです!
気管挿管の確認 未来のdecision treeは?
第6章 Point-of-Care超音波のこれから
Lecture 23 ポケットエコー
はじめに 小型化は実現しましたが……
ポケットエコーのエビデンスと領域別活用 各疾患・病態に対する有効性は?
ポケットエコーの課題 アウトカムベースの検討を!
ポケットエコーを用いた診療 未来の診療体系は?
索引
column
大腸炎と腹部POCUS
直腸診併用による経腹超音波ガイド下尿道カテーテル挿入
Point-of-Care超音波研究会の紹介
World Interactive Network Focused on Critical Ultrasound(WINFOCUS)
医学部教育とPOCUS
慢性閉塞性肺疾患と肺超音波
高地肺水腫と肺超音波
書評
開く
動画が豊富に付いた 読んでいてわくわくする超音波検査の本
書評者: 谷口 信行 (自治医大教授・臨床検査医学)
本書は,カラーな上に,図や写真が多くてわかりやすく読んでいてわくわくする超音波検査の本である。その疾患の超音波検査を試みたことのある方であれば,臨床の状況と必要な検査を想定できる記述となっている。動画が豊富に付いているのもいい。超音波検査を扱った書籍は静止画のみで構成されたものが多いが,本書はQRコードにより手元のスマートフォン,タブレットですぐに動画を見ることができる。
タイトルになっているPoint-of-Care超音波(POCUS)は,研修医だけでなく,内科・外科をはじめとする多くの臨床医にとって,診療に役立つものである。研修医であれば,現場でPOCUSを行うことで,後に自分で行わなければならない検査のハードルをだいぶ下げることができるだろう。研修医が修得すべき手技は数多くあるが,中でもPOCUSはその場で検査を行うことができ,安心して次の診療ステップに進むことができる。ちなみに,POCUSにおいて最近注目を集めているのは肺エコーであり,これは救急や在宅の場面で,肺炎などの肺疾患に加え,左心不全の診断に役立つものである。
具体例として「Lecture 14 下肢静脈血栓症を疑ったとき」を見てみよう。通常,血栓症が疑われるときには,検査室の技師は,超音波で,両側鼠径部から下腿までの静脈を追跡し,詳細に血栓の有無を評価する。もちろん,その検査手技を修得できれば理想的ではあるが,血栓だけでなく,交通血管などの有無まで確認することを考えると,この検査には20~30分を要することになる。しかし,救急の現場においては,「木を見て森を見ず」の検査であろう。ここでは肺塞栓の原因検索として深部静脈血栓症の有無に焦点を絞って,検査することが求められる。血栓の有無に絞って検査を行えば,速やかに次の検査,治療へ進むことができるのである。
各項目の「見出し」に用いられている言葉が優しいのもよい。「2点エコーはすばやく施行できます!」「圧迫操作による動的観察が特徴です!」「観察項目とポイントは?」のごとく,その項目で重要な点がひと目でわかるようになっている。
最後になったが,超音波検査を行う上では,超音波の基礎は避けて通れないものではある。しかし,超音波専門医をめざす方でなければ,学生時代に習った知識で問題はない。得られた画像に疑問が生じた際に見返す,はたまた時間ができたときに調べてみる程度でよいと思われる。それよりも,まずは本書を参考に探触子(プローブ)を当てて,適切な画像を得ることに集中することから始めてはいかがであろうか。
エコーを効果的に使い,的確な診断推論に役立てよう!
書評者: 山中 克郎 (福島県立医大会津医療センター研修教育センター長/教授・総合内科学)
「共に老いてゆこう。いちばんいい時はこれからだ。人生の最後,そのために最初が作られたのだ」
と詩をよんだのは英国の詩人ロバート・ブラウニング(1812~89年)です。
60歳になると細かい字を読むことはできなくなり,数日前に勉強したことも忘れてしまいます。診療手技は若者にとてもかないません。しかし,病気の診断まで若手医師に負けるなんて悔しいのです。
亀田徹先生に初めてお会いしたのは,数年前に軽井沢で開かれた診断推論をテーマにした研修医セミナーの会場でした。そこで亀田先生がPoint-of-Care ultrasound(POCUS)の有用性を熱弁されていたのです。直感的にこれからの診断推論にはエコーを効果的に使った診断が非常に有用であると感じました。
その後,亀田先生は医学書院の雑誌『総合診療』に「診察で使える! 急性期Point-of-Care超音波ベーシックス」を連載し,ますます多くの医師がPOCUSの有用性を実感するようになりました。
救急室では若手医師らが超音波診断装置を積極的に使い,的確に診断していく姿をよく目にします。ベテランも負けてはいられません。新しいものを覚えるのは非常に苦痛ですが,有益なものはどんどん学ばなければ医学の進歩から取り残されていきます。
私は新しいことを学ぶときにはお気に入りの1冊の入門書を熟読することから始めます。内科診察室や救急外来での超音波診断を学ぶのにこの本ほど適したものはありません。
本書では,まず,超音波診断の基礎理論が述べられています。次に疾患を腹部(急性胆嚢炎,腸閉塞,急性虫垂炎,尿路結石,腹部大動脈瘤,腹腔内出血),循環器(左室収縮能低下,心タンポナーデ,急性肺塞栓症,循環血液量減少,下肢深部静脈血栓症),呼吸器(気胸,心原性肺水腫,肺炎,胸水)に分類し,超音波診断の方法について動画を交えながらわかりやすく解説がなされています。観察項目とポイント,身体所見と超音波検査所見との組み合わせでの診察,POCUSのエビデンスについて引用論文を用いて熱く語られているのです。
さらにもっと高度なPOC活用を学びたい人のために,ショックと呼吸困難の評価,心停止の評価,気管挿管の確認法と続きます。
若手医師に負けてはいられません。ブラウニングはこんな名言を残しています。
「成長せずに,どうしてこの世に存在する意味があるだろうか」
ついに出た! 亀田先生のPoint-of-Care超音波
書評者: 野村 岳志 (東女医大教授・集中治療科)
Point-of-Care超音波(POCUS)を教えている仲間で「亀田徹先生を知らない人はいない」といっても過言でない。その亀田先生が初めて一人で書かれたのがこの本である。
POCUSにおいては定性的な画像診断が有用となる。しかし,正常と異常の判別はその画像を見比べなければ難しい。本書は,このようなPOCUSの特色を踏まえて書かれている。
Webで視聴できる243の付録動画の多さも驚きである。動画ではプローブ操作の基本から確認できる。まさにベーシックから学べる教本となっている。
POCUSは,ご存知のように多くの領域・分野で行われている。私も集中治療に携わる医師として日々,経胸壁心エコーを行っており,典型的な画像の描出や評価・測定は特に支障なく行うことができる。私の場合,エコー検査技術は,集中治療室で重症患者の診療を行いながら超音波の基礎を自学し,また種々の講習会で学ぶことで習得した。臨床の合間に学んだ,いわば「part time学習生」であった。しかし,亀田先生は,プロフィールにあるように救急や総合内科の臨床を行っていく上で,超音波診断の必要性や有用性をいち早く見いだし,1年以上にわたり超音波検査室で基礎から検査方法を学んでいる。つまり,「正規学習生」である。そのため,救急集中治療医で超音波に関する基礎から臨床に至る知識の広さにおいて,亀田先生に敵う医師はいないと私は思っている。
そのような気持ちを持って,この本を開く。まず基礎を読み始めると,「空間コンパウンドイメージング」という言葉に視線がとまる。肺エコーのBラインの評価において重要であるが,私の知る限りこの技術が解説されている唯一の実践書である。続いて系統別,症候別にPOCUSの基本的内容が記載されている。
研修医,超音波診断初学者,看護師他医療スタッフ,そして学生においてもWeb動画を見ながら学習できる良書となっている。価格もお手頃である。POCUSで疑問が生じたとき,ぜひこの本を手に取ってほしい!
書評者: 谷口 信行 (自治医大教授・臨床検査医学)
本書は,カラーな上に,図や写真が多くてわかりやすく読んでいてわくわくする超音波検査の本である。その疾患の超音波検査を試みたことのある方であれば,臨床の状況と必要な検査を想定できる記述となっている。動画が豊富に付いているのもいい。超音波検査を扱った書籍は静止画のみで構成されたものが多いが,本書はQRコードにより手元のスマートフォン,タブレットですぐに動画を見ることができる。
タイトルになっているPoint-of-Care超音波(POCUS)は,研修医だけでなく,内科・外科をはじめとする多くの臨床医にとって,診療に役立つものである。研修医であれば,現場でPOCUSを行うことで,後に自分で行わなければならない検査のハードルをだいぶ下げることができるだろう。研修医が修得すべき手技は数多くあるが,中でもPOCUSはその場で検査を行うことができ,安心して次の診療ステップに進むことができる。ちなみに,POCUSにおいて最近注目を集めているのは肺エコーであり,これは救急や在宅の場面で,肺炎などの肺疾患に加え,左心不全の診断に役立つものである。
具体例として「Lecture 14 下肢静脈血栓症を疑ったとき」を見てみよう。通常,血栓症が疑われるときには,検査室の技師は,超音波で,両側鼠径部から下腿までの静脈を追跡し,詳細に血栓の有無を評価する。もちろん,その検査手技を修得できれば理想的ではあるが,血栓だけでなく,交通血管などの有無まで確認することを考えると,この検査には20~30分を要することになる。しかし,救急の現場においては,「木を見て森を見ず」の検査であろう。ここでは肺塞栓の原因検索として深部静脈血栓症の有無に焦点を絞って,検査することが求められる。血栓の有無に絞って検査を行えば,速やかに次の検査,治療へ進むことができるのである。
各項目の「見出し」に用いられている言葉が優しいのもよい。「2点エコーはすばやく施行できます!」「圧迫操作による動的観察が特徴です!」「観察項目とポイントは?」のごとく,その項目で重要な点がひと目でわかるようになっている。
最後になったが,超音波検査を行う上では,超音波の基礎は避けて通れないものではある。しかし,超音波専門医をめざす方でなければ,学生時代に習った知識で問題はない。得られた画像に疑問が生じた際に見返す,はたまた時間ができたときに調べてみる程度でよいと思われる。それよりも,まずは本書を参考に探触子(プローブ)を当てて,適切な画像を得ることに集中することから始めてはいかがであろうか。
エコーを効果的に使い,的確な診断推論に役立てよう!
書評者: 山中 克郎 (福島県立医大会津医療センター研修教育センター長/教授・総合内科学)
「共に老いてゆこう。いちばんいい時はこれからだ。人生の最後,そのために最初が作られたのだ」
と詩をよんだのは英国の詩人ロバート・ブラウニング(1812~89年)です。
60歳になると細かい字を読むことはできなくなり,数日前に勉強したことも忘れてしまいます。診療手技は若者にとてもかないません。しかし,病気の診断まで若手医師に負けるなんて悔しいのです。
亀田徹先生に初めてお会いしたのは,数年前に軽井沢で開かれた診断推論をテーマにした研修医セミナーの会場でした。そこで亀田先生がPoint-of-Care ultrasound(POCUS)の有用性を熱弁されていたのです。直感的にこれからの診断推論にはエコーを効果的に使った診断が非常に有用であると感じました。
その後,亀田先生は医学書院の雑誌『総合診療』に「診察で使える! 急性期Point-of-Care超音波ベーシックス」を連載し,ますます多くの医師がPOCUSの有用性を実感するようになりました。
救急室では若手医師らが超音波診断装置を積極的に使い,的確に診断していく姿をよく目にします。ベテランも負けてはいられません。新しいものを覚えるのは非常に苦痛ですが,有益なものはどんどん学ばなければ医学の進歩から取り残されていきます。
私は新しいことを学ぶときにはお気に入りの1冊の入門書を熟読することから始めます。内科診察室や救急外来での超音波診断を学ぶのにこの本ほど適したものはありません。
本書では,まず,超音波診断の基礎理論が述べられています。次に疾患を腹部(急性胆嚢炎,腸閉塞,急性虫垂炎,尿路結石,腹部大動脈瘤,腹腔内出血),循環器(左室収縮能低下,心タンポナーデ,急性肺塞栓症,循環血液量減少,下肢深部静脈血栓症),呼吸器(気胸,心原性肺水腫,肺炎,胸水)に分類し,超音波診断の方法について動画を交えながらわかりやすく解説がなされています。観察項目とポイント,身体所見と超音波検査所見との組み合わせでの診察,POCUSのエビデンスについて引用論文を用いて熱く語られているのです。
さらにもっと高度なPOC活用を学びたい人のために,ショックと呼吸困難の評価,心停止の評価,気管挿管の確認法と続きます。
若手医師に負けてはいられません。ブラウニングはこんな名言を残しています。
「成長せずに,どうしてこの世に存在する意味があるだろうか」
ついに出た! 亀田先生のPoint-of-Care超音波
書評者: 野村 岳志 (東女医大教授・集中治療科)
Point-of-Care超音波(POCUS)を教えている仲間で「亀田徹先生を知らない人はいない」といっても過言でない。その亀田先生が初めて一人で書かれたのがこの本である。
POCUSにおいては定性的な画像診断が有用となる。しかし,正常と異常の判別はその画像を見比べなければ難しい。本書は,このようなPOCUSの特色を踏まえて書かれている。
Webで視聴できる243の付録動画の多さも驚きである。動画ではプローブ操作の基本から確認できる。まさにベーシックから学べる教本となっている。
POCUSは,ご存知のように多くの領域・分野で行われている。私も集中治療に携わる医師として日々,経胸壁心エコーを行っており,典型的な画像の描出や評価・測定は特に支障なく行うことができる。私の場合,エコー検査技術は,集中治療室で重症患者の診療を行いながら超音波の基礎を自学し,また種々の講習会で学ぶことで習得した。臨床の合間に学んだ,いわば「part time学習生」であった。しかし,亀田先生は,プロフィールにあるように救急や総合内科の臨床を行っていく上で,超音波診断の必要性や有用性をいち早く見いだし,1年以上にわたり超音波検査室で基礎から検査方法を学んでいる。つまり,「正規学習生」である。そのため,救急集中治療医で超音波に関する基礎から臨床に至る知識の広さにおいて,亀田先生に敵う医師はいないと私は思っている。
そのような気持ちを持って,この本を開く。まず基礎を読み始めると,「空間コンパウンドイメージング」という言葉に視線がとまる。肺エコーのBラインの評価において重要であるが,私の知る限りこの技術が解説されている唯一の実践書である。続いて系統別,症候別にPOCUSの基本的内容が記載されている。
研修医,超音波診断初学者,看護師他医療スタッフ,そして学生においてもWeb動画を見ながら学習できる良書となっている。価格もお手頃である。POCUSで疑問が生じたとき,ぜひこの本を手に取ってほしい!
正誤表
開く
本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。