第34回「理学療法ジャーナル」賞
取材記事
2023.08.21 週刊医学界新聞(レジデント号):第3529号より
第34回「理学療法ジャーナル」賞贈呈式が2023年4月15日,医学書院本社で開催された。本賞は,前年の1年間に『理学療法ジャーナル』誌に掲載された投稿論文の中から特に優秀な論文を編集委員会が顕彰し,理学療法士の研究活動を奨励するもの。2022年は29編が受賞対象となり,下記3論文がそれぞれ入賞,準入賞,奨励賞に選ばれた。
【入賞】清野浩希,他:主観的伸張感で実施時間を設定した静的ストレッチングの有効性――ランダム化クロスオーバー試験による検討(第56巻第5号,原著)
【準入賞】松田友秋,他:歩行動作の時間的・空間的パラメータと膝関節の力学的負荷,加速度関連指標との相互関係(第56巻第11号,原著)
【奨励賞】湯口聡,他:超音波画像を用いた末梢動脈疾患における下肢骨格筋の組成と6分間歩行距離との関連(第56巻第9号,報告)
入賞の清野氏らの論文は,臨床で患者から頻繁に尋ねられる「何秒間ストレッチすれば良いか」を検証するために,主観的伸張感で実施時間を設定した静的ストレッチング(ストレッチ)の即時的な可動域改善効果を非盲検ランダム化クロスオーバー試験にて検討したもの。ハムストリングスの伸張性改善が必要と判断した外来患者50人に,①一般的に臨床で行われている時間(30秒)を決めて実施するストレッチと,②主観的に筋が伸びたと感じるまで実施するストレッチの2種類をそれぞれ4セット,別日に実施し,実施前後の膝関節他動伸展角度の変化量を測定することでストレッチ効果を検証した。結果,主観的伸張感で実施時間を設定するストレッチが,即時的に可動域を改善するためにより有効である可能性が示された。患者の疑問に対する回答の根拠をつくる「臨床から生まれた臨床のための価値ある研究」との評価を得ての受賞となった。清野氏は,「普段臨床で行っていることには本当にエビデンスがあるのだろうか,との疑問が本研究のきっかけ。臨床ではどうすれば目の前の患者さんに一番効果が出るのか,皆一生懸命に考え奮闘している。その思いが論文に表れていたらうれしい」と自身の研究を振り返った。
『理学療法ジャーナル』誌では本年も,掲載された投稿論文から第35回「理学療法ジャーナル」賞を選定する。詳細は『理学療法ジャーナル』誌投稿規定を参照されたい。
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