MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
書評
2022.05.09 週刊医学界新聞(通常号):第3468号より
-
症例で学ぶ外科医の考えかた 外科診療の基本がわかる30症例
- 今村 清隆 訳者代表
-
B5・頁240
定価:6,600円(本体6,000円+税10%) 医学書院
ISBN978-4-260-04784-5
《評者》 倉島 庸 北大消化器外科Ⅱ/クリニカルシミュレーションセンター准教授
論理的な思考プロセスに寄り添って構成されたテキスト
私が訳者代表の今村清隆先生と知り合ったのは,彼が手稲渓仁会病院の外科研修を修了し,外科スタッフとして研修医の指導担当を始めた頃である。私自身カナダ留学から現在所属している北大へ戻り,日本国内の外科医が若手外科医教育の情報を共有できる全国レベルの組織づくりに着手したのもこの時期であった。同じ札幌市内で勤務している今村先生とは臨床現場での指導方法,北海道や全国の若手外科医の教育について,時を忘れて語り合ったことを覚えている。それから現在まで,今村先生の教育に対する情熱はオンラインというツールを得て,北海道の枠にとどまらず,全国,海外へと広がっていったのである。
本書は今村先生が研修医向けの勉強会でテキストに用いてきた原著『Surgery:A Case Based Clinical Review』(第2版,Springer)から,重要な内容を抽出して日本語訳したものである。私が感銘を受けたのは,23人の訳者の中に,勉強会へ参加していたであろう多くの手稲渓仁会病院の初期研修医達が含まれている点である。専門性の高い領域の翻訳作業をしながら膨大な関連知識を確認していく経験が,彼らが担当したテーマの理解をどれほど深いものにしたかは容易に想像できる。この翻訳共同作業そのものが大きな学びの輪を創造したことであろう。
本書の素晴らしさは,各テーマの内容が診断から治療まで必要とされる知識を整理しながら,論理的に思考していくプロセスに寄り添うように構成されている点である。読者はまるで一人の患者を外来で初めて診察し,手術,術後管理をしているような疑似知識体験を通して各テーマの理解を深めていくことができる。また,同じ外科チーム内でも議論が分かれやすいトピックス,または外科領域の発展により従来のエビデンスが更新していく可能性を念頭に,「議論の起こっていること」についての知見が含まれている点も外科医の痒いところに手が届く配慮である。
読者の方には本書のWEB付録であるバリエーションに富んだ症例提示の音読データもぜひ活用していただきたい...
この記事はログインすると全文を読むことができます。
医学書院IDをお持ちでない方は医学書院IDを取得(無料)ください。
いま話題の記事
-
医学界新聞プラス
[第1回]心エコーレポートの見方をざっくり教えてください
『循環器病棟の業務が全然わからないので、うし先生に聞いてみた。』より連載 2024.04.26
-
医学界新聞プラス
[第3回]冠動脈造影でLADとLCX の区別がつきません……
『医学界新聞プラス 循環器病棟の業務が全然わからないので、うし先生に聞いてみた。』より連載 2024.05.10
-
医学界新聞プラス
[第1回]ビタミンB1は救急外来でいつ,誰に,どれだけ投与するのか?
『救急外来,ここだけの話』より連載 2021.06.25
-
医学界新聞プラス
[第1回]PPI(プロトンポンプ阻害薬)の副作用で下痢が発現する理由は? 機序は?
『医薬品情報のひきだし』より連載 2022.07.29
-
医学界新聞プラス
[第2回]アセトアミノフェン経口製剤(カロナールⓇ)は 空腹時に服薬することが可能か?
『医薬品情報のひきだし』より連載 2022.08.05
最新の記事
-
対談・座談会 2025.04.08
-
対談・座談会 2025.04.08
-
腹痛診療アップデート
「急性腹症診療ガイドライン2025」をひもとく対談・座談会 2025.04.08
-
野木真将氏に聞く
国際水準の医師育成をめざす認証評価
ACGME-I認証を取得した亀田総合病院の歩みインタビュー 2025.04.08
-
能登半島地震による被災者の口腔への影響と,地域で連携した「食べる」支援の継続
寄稿 2025.04.08
開く
医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。