医薬品情報のひきだし
豊富なエビデンスとイメージしやすいイラストで、ポイントが頭に入る、しっかり残る!
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PPIの副作用で下痢が発現する理由は? アセトアミノフェン経口製剤は空腹時に服薬できる? 錠剤を粉砕したときの重量ロスは? 本書はこんな臨床現場で迷いがちな薬の疑問を迅速・的確に解決するための情報が詰まった「ひきだし」です。大学病院でDI実務の経験を重ね、現在webサイト“CloseDi”を主宰する気鋭の若手が執筆。医学論文、医薬品添付文書、IFに基づく解説が豊富でDI実務の考え方も楽しく学べます!
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- 目次
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序文
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監修の序(奥田真弘)/序(村阪敏規)
監修の序
わが国で病院薬剤師の業務に医薬品情報業務が取り入られたのは1970年代とされる.1993年には日本病院薬剤師会により,「病院における医薬品情報管理の業務基準」が公表され,薬剤管理指導業務の普及を支えた.2012年に新設された病棟薬剤業務実施加算では医薬品情報を活用すべき多数の業務が具体的に列挙された.その後,「病院における医薬品情報管理の業務手順」も見直され,新たに「医薬品情報業務の進め方2018」として公表され現在に至っている.「医薬品情報業務の進め方2018」に定められた業務の1つに,医薬品に関する質疑への対応がある.医薬品情報室には,添付文書,インタビューフォームだけでなく書籍やインターネット環境などが整備され,医師をはじめとする医療スタッフからの問い合わせや患者からの質問への対応が行われる.問い合わせ内容は記録し,評価・分析することで,医薬品情報業務の質確保に役立てることが推奨されている.
2025年度を目処に構築が進められている地域包括ケアシステムでは,薬局薬剤師も医療機関やその他機関のスタッフと連携し薬学的管理を実践することで,薬物療法を切れ目なく安全に提供する役割が期待されている.本書の著者である村阪敏規氏は大学病院で勤務した3年間に,医薬品情報業務に携わり,医薬品情報業務に関する知識やスキルを修得した.その後,自ら薬局を開設し,地域医療を進めるなかでインターネット上の医薬品情報の問い合わせデータベースを着想し,SAGASU‒DIを独力で構築,さらにその発展型のデータベースであるCloseDiを構築,運営し現在に至っている.
本書は,これらのデータベースに蓄積された500を超える問い合わせ事例のなかから抽出した77事例をもとに,大幅に加筆されたものになっている.本書で取り上げられた事例は,薬局薬剤師が日常的に遭遇する切実なものであり,インフォグラフィックスを多用することで視覚的な理解を促し,事例への回答に伴って生じるさまざまな疑問に対して,根拠論文や情報源に基づいた説明が加えられている.文章は初心者にもわかりやすく執筆されており,読者は読み進むだけで実践的な知識が得られるだけでなく,問い合わせに対する回答の進め方を習得するうえでも参考になる内容となっている.
医薬品情報は時々刻々と変化し,昨日経験した情報が今日もそのまま使えるとは限らない.情報提供の場面ごとに検討すべき要素も異なるなかで,薬剤師には医薬品情報を適切に扱うことで的確な業務を実践する能力が求められている.本書を手にした読者が,医薬品情報の知識を習得するだけでなく,医薬品情報業務の考え方も楽しく学ぶことで,薬剤師業務のさらなる質向上の一助となることを強く願うものである.
2020年9月
奥田真弘
序
さて,本書ができるまでの経緯を少し書きます.筆者は大学卒業後,大学病院の薬剤部に就職しました.薬剤部内の医薬品情報室を担当した際に,病院内の医療従事者から医薬品に関する多くの問い合わせを受けました.その後,大学病院を退職し,薬局を開設しました.地域に密着した薬局を目指して奔走してきたなかで筆者が強く感じたことは,「医薬品情報を掌握できればもっと地域医療に貢献できる」「薬剤師は膨大な医薬品情報を編集しわかりやすく伝える,いわば『医薬品情報編集者』である」ということです.
臨床現場において,薬剤師には医師や看護師,患者から医薬品情報に関するさまざまな問い合わせが寄せられます.わかりやすく的確な回答をするには,より多くの医薬品情報を収集し,評価し,理解する必要があります.しかし,業務が多忙ななか,これらに多くの時間を割くことはなかなか難しいのが現状です.また,医薬品情報は刻々と更新されているため,背景知識に加えて,都度,情報の検索と吟味を行い,的確な回答を導き出すことが必要です.
これらを踏まえ,2016年10月にインターネット上で医薬品情報を共有できる“SAGASU‒DI”を開設しました.1か月間の利用者数が延べ10万人を超えるwebサイトに成長しましたが,これを運営するなかで「臨床現場において医薬品情報を駆使した医療を提供する際には薬剤師が中心的な役割を担いたい」と感じるようになりました.そこで,2018年8月に薬剤師のみが会員登録できる医薬品情報編集室“CloseDi”を開設しました.CloseDiには病院や薬局で実際にあった問い合わせ内容を改良し普遍化させた記事や,会員から募集した質問をQ&A形式にした記事が記載されています.
本書の内容はこのCloseDiの記事を大幅に加筆したものです.加えて,背景知識から回答までの過程を文章だけでなく,図を用いることで,読者のみなさんが効率よく内容を把握できるように工夫しました.また,本書は最終的な回答に到達するまでに多くの「問い」を繰り返しています.そのため,1つの「問い」をきっかけとした幅広い知識も得ることができます.「医薬品情報の図(インフォグラフィックス)」と「問いの繰り返し」といった特徴をもつ本書から,みなさんの「医薬品情報のひきだし」を増やし,実際に学んだ知識を臨床で活用し,ひいては各人が所属する地域の医療に貢献していただければ,筆者としてとてもうれしく思います.
本書の執筆にあたり,監修の大阪大学医学部附属病院薬剤部 奥田真弘教授,執筆協力の妹尾昌幸先生には経験豊富なお立場から常に的確なご助言を賜りました.デザイナーの伊勢由貴子さんには,素敵な表紙と紙面をデザインしていただきました.また,医学書院のみなさん,特に本書の企画段階から携わっていただいた医学書籍編集部の西村僚一さん,制作部の片山智博さんに厚く御礼申し上げます.
新型コロナウイルスにより世界が大きく変わった年(2020年)9月
村阪敏規
監修の序
わが国で病院薬剤師の業務に医薬品情報業務が取り入られたのは1970年代とされる.1993年には日本病院薬剤師会により,「病院における医薬品情報管理の業務基準」が公表され,薬剤管理指導業務の普及を支えた.2012年に新設された病棟薬剤業務実施加算では医薬品情報を活用すべき多数の業務が具体的に列挙された.その後,「病院における医薬品情報管理の業務手順」も見直され,新たに「医薬品情報業務の進め方2018」として公表され現在に至っている.「医薬品情報業務の進め方2018」に定められた業務の1つに,医薬品に関する質疑への対応がある.医薬品情報室には,添付文書,インタビューフォームだけでなく書籍やインターネット環境などが整備され,医師をはじめとする医療スタッフからの問い合わせや患者からの質問への対応が行われる.問い合わせ内容は記録し,評価・分析することで,医薬品情報業務の質確保に役立てることが推奨されている.
2025年度を目処に構築が進められている地域包括ケアシステムでは,薬局薬剤師も医療機関やその他機関のスタッフと連携し薬学的管理を実践することで,薬物療法を切れ目なく安全に提供する役割が期待されている.本書の著者である村阪敏規氏は大学病院で勤務した3年間に,医薬品情報業務に携わり,医薬品情報業務に関する知識やスキルを修得した.その後,自ら薬局を開設し,地域医療を進めるなかでインターネット上の医薬品情報の問い合わせデータベースを着想し,SAGASU‒DIを独力で構築,さらにその発展型のデータベースであるCloseDiを構築,運営し現在に至っている.
本書は,これらのデータベースに蓄積された500を超える問い合わせ事例のなかから抽出した77事例をもとに,大幅に加筆されたものになっている.本書で取り上げられた事例は,薬局薬剤師が日常的に遭遇する切実なものであり,インフォグラフィックスを多用することで視覚的な理解を促し,事例への回答に伴って生じるさまざまな疑問に対して,根拠論文や情報源に基づいた説明が加えられている.文章は初心者にもわかりやすく執筆されており,読者は読み進むだけで実践的な知識が得られるだけでなく,問い合わせに対する回答の進め方を習得するうえでも参考になる内容となっている.
医薬品情報は時々刻々と変化し,昨日経験した情報が今日もそのまま使えるとは限らない.情報提供の場面ごとに検討すべき要素も異なるなかで,薬剤師には医薬品情報を適切に扱うことで的確な業務を実践する能力が求められている.本書を手にした読者が,医薬品情報の知識を習得するだけでなく,医薬品情報業務の考え方も楽しく学ぶことで,薬剤師業務のさらなる質向上の一助となることを強く願うものである.
2020年9月
奥田真弘
序
薬剤師は医薬品情報を検索・取得し,
批判的吟味を加えたうえで,適切に評価・確知し,
編集された医薬品情報を的確かつ迅速に医療従事者や患者に提供し,
医薬品の適正使用に徹する.
上記は少し硬い文章ですが,筆者が仕事をしていくうえで大切にしている信条です.本書『医薬品情報のひきだし』にはこれを確実に自分のものとするための,具体的な知識が収められています.興味をもたれたみなさん,これから始まる本編のひきだしを気軽に開けてみてください.批判的吟味を加えたうえで,適切に評価・確知し,
編集された医薬品情報を的確かつ迅速に医療従事者や患者に提供し,
医薬品の適正使用に徹する.
さて,本書ができるまでの経緯を少し書きます.筆者は大学卒業後,大学病院の薬剤部に就職しました.薬剤部内の医薬品情報室を担当した際に,病院内の医療従事者から医薬品に関する多くの問い合わせを受けました.その後,大学病院を退職し,薬局を開設しました.地域に密着した薬局を目指して奔走してきたなかで筆者が強く感じたことは,「医薬品情報を掌握できればもっと地域医療に貢献できる」「薬剤師は膨大な医薬品情報を編集しわかりやすく伝える,いわば『医薬品情報編集者』である」ということです.
臨床現場において,薬剤師には医師や看護師,患者から医薬品情報に関するさまざまな問い合わせが寄せられます.わかりやすく的確な回答をするには,より多くの医薬品情報を収集し,評価し,理解する必要があります.しかし,業務が多忙ななか,これらに多くの時間を割くことはなかなか難しいのが現状です.また,医薬品情報は刻々と更新されているため,背景知識に加えて,都度,情報の検索と吟味を行い,的確な回答を導き出すことが必要です.
これらを踏まえ,2016年10月にインターネット上で医薬品情報を共有できる“SAGASU‒DI”を開設しました.1か月間の利用者数が延べ10万人を超えるwebサイトに成長しましたが,これを運営するなかで「臨床現場において医薬品情報を駆使した医療を提供する際には薬剤師が中心的な役割を担いたい」と感じるようになりました.そこで,2018年8月に薬剤師のみが会員登録できる医薬品情報編集室“CloseDi”を開設しました.CloseDiには病院や薬局で実際にあった問い合わせ内容を改良し普遍化させた記事や,会員から募集した質問をQ&A形式にした記事が記載されています.
本書の内容はこのCloseDiの記事を大幅に加筆したものです.加えて,背景知識から回答までの過程を文章だけでなく,図を用いることで,読者のみなさんが効率よく内容を把握できるように工夫しました.また,本書は最終的な回答に到達するまでに多くの「問い」を繰り返しています.そのため,1つの「問い」をきっかけとした幅広い知識も得ることができます.「医薬品情報の図(インフォグラフィックス)」と「問いの繰り返し」といった特徴をもつ本書から,みなさんの「医薬品情報のひきだし」を増やし,実際に学んだ知識を臨床で活用し,ひいては各人が所属する地域の医療に貢献していただければ,筆者としてとてもうれしく思います.
本書の執筆にあたり,監修の大阪大学医学部附属病院薬剤部 奥田真弘教授,執筆協力の妹尾昌幸先生には経験豊富なお立場から常に的確なご助言を賜りました.デザイナーの伊勢由貴子さんには,素敵な表紙と紙面をデザインしていただきました.また,医学書院のみなさん,特に本書の企画段階から携わっていただいた医学書籍編集部の西村僚一さん,制作部の片山智博さんに厚く御礼申し上げます.
新型コロナウイルスにより世界が大きく変わった年(2020年)9月
村阪敏規
目次
開く
1段目 薬学的な思考
01 PPI(プロトンポンプ阻害薬)の副作用で下痢が発現する理由は? 機序は?
02 アスピリン腸溶錠(バイアスピリン®)由来の胃潰瘍,
十二指腸潰瘍の予防にはPPI以外にもH2ブロッカーは有効か?
03 「PPIやH2ブロッカー」を併用すると
酸化マグネシウムの緩下作用が減弱するか?
04 DOAC服薬中にトラネキサム酸経口製剤(トランサミン®)を
追加すると血栓に影響を及ぼすか?
05 トラネキサム酸経口製剤(トランサミン®)を服薬すると
血栓ができやすくなるか?
06 ポリスチレンスルホン酸カルシウム経口製剤(カリメート®)との
併用によりニロチニブ経口製剤(タシグナ®)は効果が減弱するか?
他に効果が減弱する薬剤は?
07 クラリスロマイシン経口製剤(クラリス®)中止後,
すぐにスボレキサント経口製剤(ベルソムラ®)を開始してもよいか? 08 クラリスロマイシン経口製剤(クラリス®)の服用前に
スボレキサント経口製剤(ベルソムラ®)の中止期間が必要か?
09 ノイラミニダーゼ阻害作用がある抗インフルエンザ薬の経口製剤と
注射製剤の併用による相乗効果は期待できるか?
10 エプレレノン経口製剤(セララ®)とカリウム製剤の併用は可能か?
11 トルバプタン経口製剤(サムスカ®)に血圧低下作用はあるか?
12 経口・経腸栄養剤(エンシュア®・H)の下痢の頻度と
メカニズム・対策は?
13 ループ利尿薬とチアジド系利尿薬はどちらの血圧低下効果が高いか?
ループ利尿薬間での使い分けは?
14 緑内障患者(閉塞隅角ではない)に抗コリン作用のある薬剤(PL配合顆粒)は禁忌?
15 ニューキノロン系抗菌薬使用患者に対して,
耐性乳酸菌製剤(ビオフェルミンR®)か
酪酸菌製剤(ミヤBM®)のどちらを使用するべきか?
16 ステロイド吸入剤は吸入後に息をゆっくりと吐いたほうがよいか?
17 アスピリン喘息の既往がある患者に対して
サラゾスルファピリジン経口製剤(アザルフィジン®EN)は
投与可能か?
18 経口腸管洗浄剤(ニフレック®,モビプレップ®)を
服薬中に飴や甘いものを摂取してもよいか?
19 茵ちん蒿湯と経口鉄製剤(インクレミン®シロップ)を混合後,
黒色になったのはなぜか? この状態で服用可能か?
2段目 換算
20 ステロイド経口製剤間の換算は? 経口製剤から注射製剤への切り替え換算は?
21 同ランクに分類されたステロイド外用剤の効果の強弱は?
22 オピオイドの換算は?
ブプレノルフィン貼付型製剤(ノルスパン®テープ)から
フェンタニル1日貼付型製剤(フェントス®テープ)への切り替えは?
23 エソメプラゾール経口製剤(ネキシウム®)と
オメプラゾール経口製剤の換算は? 違いは?
24 一硝酸イソソルビド経口製剤(アイトロール®)と
硝酸イソソルビド経口製剤(フランドル®)の換算は? 違いは?
25 メチルジゴキシン経口製剤(ラニラピッド®)と
ジゴキシン経口製剤(ジゴシン®)の換算は? 違いは?
26 ゾピクロン経口製剤(アモバン®)と
エスゾピクロン経口製剤(ルネスタ®)の換算は?
3段目 服薬タイミング
27 エロビキシバット経口製剤(グーフィス®)が
「食前」投与である理由は?
28 リナクロチド経口製剤(リンゼス®)が「食前」投与である理由は?
29 ドンペリドン経口製剤(ナウゼリン®)は「食前」投与がよいのか?
30 漢方は「食前」投与がよいか?
31 ピオグリタゾン経口製剤(アクトス®)の服薬は
「食前」と「食後」のどちらがよいか?
32 α‒グルコシダーゼ阻害薬(ミグリトール経口製剤)は
「食後」投与でも効果が減弱しないか?
33 アセトアミノフェン経口製剤(カロナール®)は
空腹時に服薬することが可能か?
34 ラメルテオン経口製剤(ロゼレム®)は就寝前ではなく
就寝2時間前の服用が効果的か?
4段目 小児
35 ラニナミビル吸入製剤(イナビル®)は何歳から吸入可能か?
36 活性生菌製剤(ビオスリー®)の小児量は?
小児薬用量の設定方法は?
37 あせも水は誤飲してしまっても問題ないか?
38 小児に使用できるNSAIDsは?
39 牛乳アレルギー児に対して,散薬の賦形剤として乳糖を使用することは可能か?
5段目 腎機能
40 腎機能の最適な計算方法は? 腎機能低下患者における
レボセチリジン経口製剤(ザイザル®)の用量は?
41 糞便中排泄が大部分である薬剤(ミノサイクリン経口製剤)の
腎機能低下患者に対する用量は?
6段目 在宅医療
42 オクトレオチド注射製剤(サンドスタチン®)は
在宅医療において院外処方可能か?
持続静注や高カロリー輸液との混合は可能か?
43 経鼻栄養患者に対するカリウム補充はグルコンサンK細粒と
ケーサプライ錠のどちらがよいか?
カリウムの用量設定はどうすればよいか?
44 オキシコドン注射製剤(オキファスト®)から
フェンタニル1日貼付型製剤(フェントス®テープ)への
切り替え換算は? タイミングは?
45 ビスホスホネート注射製剤のなかで最もカルシウムを下げるのは?
46 エルネオパ®NF輸液の開通後の安定性は?
47 フルカリック®輸液とエルネオパ®輸液の違いは?
48 PCAポンプのカセット内における
「モルヒネ塩酸塩注射製剤+生理食塩水」の安定性は?
49 アセトアミノフェン注射製剤(アセリオ静注液バッグ)は
15分以上かけて投与することは可能か?
50 がん性皮膚潰瘍によるにおいや滲出液を改善する薬剤には何があるか?
51 高カロリー輸液用総合ビタミン剤(ビタジェクト®注キット)が
A液とB液に分けられている理由は?
7段目 粉砕・一包化・簡易懸濁法
52 アスピリン腸溶錠(バイアスピリン®)の粉砕は可能か?
53 バルプロ酸ナトリウム徐放性製剤(デパケン®R錠)は粉砕可能か?
54 ニフェジピン徐放性製剤(アダラート®CR錠)の
粉砕,割錠は可能か?
55 ランソプラゾールOD錠(タケプロン®)の粉砕は可能か?
56 リナクロチド経口製剤(リンゼス®錠)の粉砕は可能か?
57 コンプラビン®配合錠の粉砕は可能か?
58 メコバラミン経口製剤(メチコバール®錠)は粉砕可能か?
59 錠剤を粉砕したときの重量ロスはあるか?
60 オーグメンチン®配合錠は一包化が可能か?
61 ルビプロストン経口製剤(アミティーザ®カプセル)は
一包化が可能か?
62 リマプロスト アルファデクス経口製剤(オパルモン®錠)は
一包化が可能か?
63 ダビガトラン経口製剤(プラザキサ®カプセル)は
一包化が可能か?
64 ガバペンチン エナカルビル経口製剤(レグナイト®錠)の
専用保管袋における安定性は? 一包化は可能か?
65 ランソプラゾールOD錠(タケプロン®)は簡易懸濁法が可能か?
66 酸化マグネシウム原末は簡易懸濁法が可能か?
67 ルビプロストン経口製剤(アミティーザ®カプセル)は
簡易懸濁法が可能か?
68 ポリスチレンスルホン酸カルシウムゼリー製剤
(アーガメイト®20%ゼリー)は簡易懸濁法が可能か?
69 後発品のビカルタミド経口製剤は簡易懸濁法が可能か?
8段目 安定性・製剤特性
70 エンシュア・リキッド®やエンシュア®・Hの
開封後の安定性は?
71 経口腸管洗浄剤(ニフレック®配合内用剤)の
車内環境における保存性は?
72 イブジラスト経口製剤(ケタス®カプセル)は
冷所保存するべきか?
73 モビコール®配合内用剤は水に溶かした後,何日間まで安定か?
74 乳糖(粉末),乳糖(結晶),乳糖(倍散用結晶)の違いは?
75 ポリスチレンスルホン酸カルシウムゼリー製剤
(アーガメイト®20%ゼリー)には
豚由来の成分が含まれるか?
76 外用塗布剤の混合可否の考えかたは?
パンデル®軟膏とウレパール®クリームの
混合は可能か?
付録
本書における重要度スコア
知識のひきだし重要度スコア
索引
01 PPI(プロトンポンプ阻害薬)の副作用で下痢が発現する理由は? 機序は?
02 アスピリン腸溶錠(バイアスピリン®)由来の胃潰瘍,
十二指腸潰瘍の予防にはPPI以外にもH2ブロッカーは有効か?
03 「PPIやH2ブロッカー」を併用すると
酸化マグネシウムの緩下作用が減弱するか?
04 DOAC服薬中にトラネキサム酸経口製剤(トランサミン®)を
追加すると血栓に影響を及ぼすか?
05 トラネキサム酸経口製剤(トランサミン®)を服薬すると
血栓ができやすくなるか?
06 ポリスチレンスルホン酸カルシウム経口製剤(カリメート®)との
併用によりニロチニブ経口製剤(タシグナ®)は効果が減弱するか?
他に効果が減弱する薬剤は?
07 クラリスロマイシン経口製剤(クラリス®)中止後,
すぐにスボレキサント経口製剤(ベルソムラ®)を開始してもよいか? 08 クラリスロマイシン経口製剤(クラリス®)の服用前に
スボレキサント経口製剤(ベルソムラ®)の中止期間が必要か?
09 ノイラミニダーゼ阻害作用がある抗インフルエンザ薬の経口製剤と
注射製剤の併用による相乗効果は期待できるか?
10 エプレレノン経口製剤(セララ®)とカリウム製剤の併用は可能か?
11 トルバプタン経口製剤(サムスカ®)に血圧低下作用はあるか?
12 経口・経腸栄養剤(エンシュア®・H)の下痢の頻度と
メカニズム・対策は?
13 ループ利尿薬とチアジド系利尿薬はどちらの血圧低下効果が高いか?
ループ利尿薬間での使い分けは?
14 緑内障患者(閉塞隅角ではない)に抗コリン作用のある薬剤(PL配合顆粒)は禁忌?
15 ニューキノロン系抗菌薬使用患者に対して,
耐性乳酸菌製剤(ビオフェルミンR®)か
酪酸菌製剤(ミヤBM®)のどちらを使用するべきか?
16 ステロイド吸入剤は吸入後に息をゆっくりと吐いたほうがよいか?
17 アスピリン喘息の既往がある患者に対して
サラゾスルファピリジン経口製剤(アザルフィジン®EN)は
投与可能か?
18 経口腸管洗浄剤(ニフレック®,モビプレップ®)を
服薬中に飴や甘いものを摂取してもよいか?
19 茵ちん蒿湯と経口鉄製剤(インクレミン®シロップ)を混合後,
黒色になったのはなぜか? この状態で服用可能か?
2段目 換算
20 ステロイド経口製剤間の換算は? 経口製剤から注射製剤への切り替え換算は?
21 同ランクに分類されたステロイド外用剤の効果の強弱は?
22 オピオイドの換算は?
ブプレノルフィン貼付型製剤(ノルスパン®テープ)から
フェンタニル1日貼付型製剤(フェントス®テープ)への切り替えは?
23 エソメプラゾール経口製剤(ネキシウム®)と
オメプラゾール経口製剤の換算は? 違いは?
24 一硝酸イソソルビド経口製剤(アイトロール®)と
硝酸イソソルビド経口製剤(フランドル®)の換算は? 違いは?
25 メチルジゴキシン経口製剤(ラニラピッド®)と
ジゴキシン経口製剤(ジゴシン®)の換算は? 違いは?
26 ゾピクロン経口製剤(アモバン®)と
エスゾピクロン経口製剤(ルネスタ®)の換算は?
3段目 服薬タイミング
27 エロビキシバット経口製剤(グーフィス®)が
「食前」投与である理由は?
28 リナクロチド経口製剤(リンゼス®)が「食前」投与である理由は?
29 ドンペリドン経口製剤(ナウゼリン®)は「食前」投与がよいのか?
30 漢方は「食前」投与がよいか?
31 ピオグリタゾン経口製剤(アクトス®)の服薬は
「食前」と「食後」のどちらがよいか?
32 α‒グルコシダーゼ阻害薬(ミグリトール経口製剤)は
「食後」投与でも効果が減弱しないか?
33 アセトアミノフェン経口製剤(カロナール®)は
空腹時に服薬することが可能か?
34 ラメルテオン経口製剤(ロゼレム®)は就寝前ではなく
就寝2時間前の服用が効果的か?
4段目 小児
35 ラニナミビル吸入製剤(イナビル®)は何歳から吸入可能か?
36 活性生菌製剤(ビオスリー®)の小児量は?
小児薬用量の設定方法は?
37 あせも水は誤飲してしまっても問題ないか?
38 小児に使用できるNSAIDsは?
39 牛乳アレルギー児に対して,散薬の賦形剤として乳糖を使用することは可能か?
5段目 腎機能
40 腎機能の最適な計算方法は? 腎機能低下患者における
レボセチリジン経口製剤(ザイザル®)の用量は?
41 糞便中排泄が大部分である薬剤(ミノサイクリン経口製剤)の
腎機能低下患者に対する用量は?
6段目 在宅医療
42 オクトレオチド注射製剤(サンドスタチン®)は
在宅医療において院外処方可能か?
持続静注や高カロリー輸液との混合は可能か?
43 経鼻栄養患者に対するカリウム補充はグルコンサンK細粒と
ケーサプライ錠のどちらがよいか?
カリウムの用量設定はどうすればよいか?
44 オキシコドン注射製剤(オキファスト®)から
フェンタニル1日貼付型製剤(フェントス®テープ)への
切り替え換算は? タイミングは?
45 ビスホスホネート注射製剤のなかで最もカルシウムを下げるのは?
46 エルネオパ®NF輸液の開通後の安定性は?
47 フルカリック®輸液とエルネオパ®輸液の違いは?
48 PCAポンプのカセット内における
「モルヒネ塩酸塩注射製剤+生理食塩水」の安定性は?
49 アセトアミノフェン注射製剤(アセリオ静注液バッグ)は
15分以上かけて投与することは可能か?
50 がん性皮膚潰瘍によるにおいや滲出液を改善する薬剤には何があるか?
51 高カロリー輸液用総合ビタミン剤(ビタジェクト®注キット)が
A液とB液に分けられている理由は?
7段目 粉砕・一包化・簡易懸濁法
52 アスピリン腸溶錠(バイアスピリン®)の粉砕は可能か?
53 バルプロ酸ナトリウム徐放性製剤(デパケン®R錠)は粉砕可能か?
54 ニフェジピン徐放性製剤(アダラート®CR錠)の
粉砕,割錠は可能か?
55 ランソプラゾールOD錠(タケプロン®)の粉砕は可能か?
56 リナクロチド経口製剤(リンゼス®錠)の粉砕は可能か?
57 コンプラビン®配合錠の粉砕は可能か?
58 メコバラミン経口製剤(メチコバール®錠)は粉砕可能か?
59 錠剤を粉砕したときの重量ロスはあるか?
60 オーグメンチン®配合錠は一包化が可能か?
61 ルビプロストン経口製剤(アミティーザ®カプセル)は
一包化が可能か?
62 リマプロスト アルファデクス経口製剤(オパルモン®錠)は
一包化が可能か?
63 ダビガトラン経口製剤(プラザキサ®カプセル)は
一包化が可能か?
64 ガバペンチン エナカルビル経口製剤(レグナイト®錠)の
専用保管袋における安定性は? 一包化は可能か?
65 ランソプラゾールOD錠(タケプロン®)は簡易懸濁法が可能か?
66 酸化マグネシウム原末は簡易懸濁法が可能か?
67 ルビプロストン経口製剤(アミティーザ®カプセル)は
簡易懸濁法が可能か?
68 ポリスチレンスルホン酸カルシウムゼリー製剤
(アーガメイト®20%ゼリー)は簡易懸濁法が可能か?
69 後発品のビカルタミド経口製剤は簡易懸濁法が可能か?
8段目 安定性・製剤特性
70 エンシュア・リキッド®やエンシュア®・Hの
開封後の安定性は?
71 経口腸管洗浄剤(ニフレック®配合内用剤)の
車内環境における保存性は?
72 イブジラスト経口製剤(ケタス®カプセル)は
冷所保存するべきか?
73 モビコール®配合内用剤は水に溶かした後,何日間まで安定か?
74 乳糖(粉末),乳糖(結晶),乳糖(倍散用結晶)の違いは?
75 ポリスチレンスルホン酸カルシウムゼリー製剤
(アーガメイト®20%ゼリー)には
豚由来の成分が含まれるか?
76 外用塗布剤の混合可否の考えかたは?
パンデル®軟膏とウレパール®クリームの
混合は可能か?
付録
本書における重要度スコア
知識のひきだし重要度スコア
索引
書評
開く
DI業務のロジカル・アプローチを視覚的に理解できる
書評者: 葉山 達也 (日大板橋病院薬剤部)
医薬品情報業務(DI業務)は,薬物療法の最適化に必要な情報を扱う。一見,質疑への対応に目を奪われがちだが,薬剤師業務の変遷に伴ってDI業務も「評価」「整理」「周知」「適正使用の推進」など,大きく変化してきた。以前,評者は「DI業務は薬剤師の病棟業務や各専門領域業務の『監督』であり,病棟業務は与えられた情報に基づいて具体的に戦略を実行する“player”」という図式を勝手に描いていた。しかし,近年の対人業務へのシフトに伴って,DI業務も情報を評価,取捨選択し具体的な処方設計に携わる“player”の1人として活躍が期待されている。
本書には76の事例が章に相当する8つのひきだし(1.薬学的な思考,2.換算,3.服薬タイミング,4.小児,5.腎機能,6.在宅医療,7.粉砕・一包化・簡易懸濁法,8.安定性・製剤特性)に収載されている。まさに現場目線の痒いところに手が届く内容である。臨床でよく遭遇する「問い」を発端にして,情報を提供するに至るまでのアプローチを視覚的に記載しているため,非常に理解しやすい。アプローチの内容は主に,(1)情報根拠(添付文書,論文),(2)根拠(現象)に付随する知識,(3)同効薬との比較,(4)関連性が高い予備的なクリニカルクエスチョン(現象に関連するもの,薬剤に関連するもの)で構成されており,これまでのやり方で得た情報にさらに厚みをもたせることができる。
また,読者は問いの反復を通じて,情報提供におけるロジカル・アプローチを良い意味で「習慣化」することができる。さらに本書のベースとなっているwebサイト「SAGASU-DI」および「医薬品情報編集室CloseDi」を併用することで,より的確かつ迅速に情報提供できる。当院の医薬品情報室でも上記webサイトを参考にしている。本書にはコラム的な位置付けの「知識のひきだし」もある。これには120テーマが掲載されており,その中で特に関心の高かったテーマにはアイコンが付けられるなど,情報の重み付けの配慮もなされている。
評者は卒後十数年,薬剤師として病棟や腫瘍センターで仕事に取り組んできたが,くしくも本書が発刊された2020年11月にDI室へ異動になった。このような環境下で,『がん薬物療法のひきだし』に続いてタイトルに「ひきだし」を冠する本書と出合い,大変心強く思ったのは言うまでもない。本書『医薬品情報のひきだし』がDI業務担当の有無にかかわらず,医薬品情報を正しくかつ緻密に提供するツールとして多くの薬剤師に活用されることを切望する。
「自身のひきだし」を充実させるためにぜひ手元に置いておきたい
書評者: 吉村 知哲 (大垣市民病院薬剤部長)
「医薬品情報管理室はどこですか。担当薬剤師は誰ですか」――。病棟薬剤業務実施加算を算定している病院においては,厚生局の適時調査で必ず聞かれる質問である。それだけ病棟活動において医薬品情報は重要であり,医薬品情報管理室は薬剤部の中枢に位置付けられ,ブレインとして機能している。とはいえ,多くの病院薬剤師や保険薬局に勤務する薬剤師が,医薬品情報の専任薬剤師に情報収集を依頼することは難しく,多忙な業務の傍ら自らが情報収集に時間を費やすことになる。
医療現場において薬剤師は,「錠剤が飲めない」「腎機能低下時の薬の投与量」「同効薬のうち,どの薬が最適か」など多彩な問題に直面する。多種多様なこれらの問題を解決するには,添付文書やインタビューフォームだけでは対応できないことも多い。各疾患の標準治療や領域ごとの薬の使い分けなど高度な薬学的知識を要する問題にも遭遇し,各種ガイドラインに精通した上で,剤型変更に伴う換算,添付文書には記載のない用法用量変更,薬剤変更などに関する判断をし,医師や他の医療職へ情報提供をする。的確かつ迅速な医薬品情報検索は薬剤師にとって必須のスキルである。「どこから,どの情報を選択したらよいのか」を見極め,そして「情報をどう解釈し,提供すればよいか」が重要となる。本年テレビドラマ化され話題になった『アンサングシンデレラ』でも,石原さとみさん演じる主人公の病院薬剤師,葵みどりが問題解決に向けて深夜遅く,必死に文献や参考書を調べていたのが記憶に新しい。
本書『医薬品情報のひきだし』を手にし,例えば,利尿薬に関する項目を見てみる。腎機能正常患者とCKD患者での降圧効果の違い,同系統でも各薬剤の特徴や換算比などが文献を基に記載されている。「なるほど」と納得の内容に加え,図と問いの繰り返しの手法でわかりやすく解説されているため,学ぶことが楽しくなってくる。「ひきだし」をデジタル大辞泉で引くと,いくつかの語釈の中に「臨機応変に活用できる,隠れ持った多様な知識や豊かな経験のたとえ」とある。まさにこの語釈にぴったりの本ではなかろうか。
本書には,これまでに著者が管理するDIウェブサイトに寄せられた問い合わせから厳選された76事例が掲載されている。これらは,「薬学的な思考」「換算」「服薬タイミング」「粉砕・一包化・簡易懸濁法」など,計8つのひきだし(章に相当)に分類され,印象的なインフォグラフィックスとともに収められている。本書を職場のデスクの傍らに置き活用するのもよし,寝転がってのんびりと読んで知識を深めるのもよし。「自身のひきだし」を充実させるために,ぜひ手元に置いておきたい一冊である。
自分の“ひきだし”の中身を充実させたいときに読む一冊
書評者: 土屋 雅美 (宮城県立がんセンター薬剤部主任薬剤師)
薬剤師,医療専門職に限らず,ひとの知識というものは,その人が持っている“ひきだし”の数によって表すことができるのではないかと考える。数は少ないが広くて深い引き出しを持っている人もいるし,小引き出しをたくさん持っている人もいる(空の引き出しばかりの人もいるかもしれないが)。よく,医療専門職は一生勉強と言われるが,それはすなわち「知識の棚卸しや入れ替えを繰り返しながら,引き出しの中身をブラッシュアップし続けること」を意味しているのではないだろうか。時には,引き出しの奥から古くなって変色した知識も出てくることもあろうが……。
医学書院の“ひきだし”シリーズの第2弾として(?)上梓された『医薬品情報のひきだし』は,薬剤師としての“ひきだし”の中でも,小引き出しを充実させるタイプの書籍である。先に発売された第1弾の『がん薬物療法のひきだし』が「腫瘍学」の大引き出しの中身を最新の知識に総入れ替えするものであったのに対し,本書『医薬品情報のひきだし』は,著者らが厳選した「医薬品情報室あるある!」の上位に位置しそうな質問に文献的な裏付けを加えており,ジェネラリストをはじめ,どの領域を専門とする薬剤師でも身につけておきたいエッセンスが詰まっている。本書の特徴としては,「質問→ビジュアルアブストラクト→回答→解説」の構成となっており,その場で問い合わせに答えるのには最初のビジュアルアブストラクトと回答まで読めば十分,文献的裏付けまでしっかり勉強しようと思ったらそれ以降の解説を読めばよい。学生実習などにおいて,医薬品情報分野の課題を出すのにも役立ちそうである。
これだけの情報量を1ページに収めるための多大な工夫・ご苦労は察するところではあるが,「少しだけ惜しいな」と思ったのは,各項のビジュアルアブストラクトがややbusyな印象があり,忙しい時にぱっと見ようとすると近眼(老眼の方も……)には少しつらいところがあることである。ただ,それを差し引いても書籍全体の情報の密度は目を見張るものがあり,新人から中堅,ベテランまで必携の一冊であることは間違いないと考える。
個人的には,本書を初めて手に取ったとき,表紙の次の見返しにあるお役立ちインフォグラフィックスに非常に目を引かれた。このようなスタイリッシュな情報提供ができるようになりたいものである。どんな内容なのかは,ぜひ本書を実際にご覧になって確認してほしい。
書評者: 葉山 達也 (日大板橋病院薬剤部)
医薬品情報業務(DI業務)は,薬物療法の最適化に必要な情報を扱う。一見,質疑への対応に目を奪われがちだが,薬剤師業務の変遷に伴ってDI業務も「評価」「整理」「周知」「適正使用の推進」など,大きく変化してきた。以前,評者は「DI業務は薬剤師の病棟業務や各専門領域業務の『監督』であり,病棟業務は与えられた情報に基づいて具体的に戦略を実行する“player”」という図式を勝手に描いていた。しかし,近年の対人業務へのシフトに伴って,DI業務も情報を評価,取捨選択し具体的な処方設計に携わる“player”の1人として活躍が期待されている。
本書には76の事例が章に相当する8つのひきだし(1.薬学的な思考,2.換算,3.服薬タイミング,4.小児,5.腎機能,6.在宅医療,7.粉砕・一包化・簡易懸濁法,8.安定性・製剤特性)に収載されている。まさに現場目線の痒いところに手が届く内容である。臨床でよく遭遇する「問い」を発端にして,情報を提供するに至るまでのアプローチを視覚的に記載しているため,非常に理解しやすい。アプローチの内容は主に,(1)情報根拠(添付文書,論文),(2)根拠(現象)に付随する知識,(3)同効薬との比較,(4)関連性が高い予備的なクリニカルクエスチョン(現象に関連するもの,薬剤に関連するもの)で構成されており,これまでのやり方で得た情報にさらに厚みをもたせることができる。
また,読者は問いの反復を通じて,情報提供におけるロジカル・アプローチを良い意味で「習慣化」することができる。さらに本書のベースとなっているwebサイト「SAGASU-DI」および「医薬品情報編集室CloseDi」を併用することで,より的確かつ迅速に情報提供できる。当院の医薬品情報室でも上記webサイトを参考にしている。本書にはコラム的な位置付けの「知識のひきだし」もある。これには120テーマが掲載されており,その中で特に関心の高かったテーマにはアイコンが付けられるなど,情報の重み付けの配慮もなされている。
評者は卒後十数年,薬剤師として病棟や腫瘍センターで仕事に取り組んできたが,くしくも本書が発刊された2020年11月にDI室へ異動になった。このような環境下で,『がん薬物療法のひきだし』に続いてタイトルに「ひきだし」を冠する本書と出合い,大変心強く思ったのは言うまでもない。本書『医薬品情報のひきだし』がDI業務担当の有無にかかわらず,医薬品情報を正しくかつ緻密に提供するツールとして多くの薬剤師に活用されることを切望する。
「自身のひきだし」を充実させるためにぜひ手元に置いておきたい
書評者: 吉村 知哲 (大垣市民病院薬剤部長)
「医薬品情報管理室はどこですか。担当薬剤師は誰ですか」――。病棟薬剤業務実施加算を算定している病院においては,厚生局の適時調査で必ず聞かれる質問である。それだけ病棟活動において医薬品情報は重要であり,医薬品情報管理室は薬剤部の中枢に位置付けられ,ブレインとして機能している。とはいえ,多くの病院薬剤師や保険薬局に勤務する薬剤師が,医薬品情報の専任薬剤師に情報収集を依頼することは難しく,多忙な業務の傍ら自らが情報収集に時間を費やすことになる。
医療現場において薬剤師は,「錠剤が飲めない」「腎機能低下時の薬の投与量」「同効薬のうち,どの薬が最適か」など多彩な問題に直面する。多種多様なこれらの問題を解決するには,添付文書やインタビューフォームだけでは対応できないことも多い。各疾患の標準治療や領域ごとの薬の使い分けなど高度な薬学的知識を要する問題にも遭遇し,各種ガイドラインに精通した上で,剤型変更に伴う換算,添付文書には記載のない用法用量変更,薬剤変更などに関する判断をし,医師や他の医療職へ情報提供をする。的確かつ迅速な医薬品情報検索は薬剤師にとって必須のスキルである。「どこから,どの情報を選択したらよいのか」を見極め,そして「情報をどう解釈し,提供すればよいか」が重要となる。本年テレビドラマ化され話題になった『アンサングシンデレラ』でも,石原さとみさん演じる主人公の病院薬剤師,葵みどりが問題解決に向けて深夜遅く,必死に文献や参考書を調べていたのが記憶に新しい。
本書『医薬品情報のひきだし』を手にし,例えば,利尿薬に関する項目を見てみる。腎機能正常患者とCKD患者での降圧効果の違い,同系統でも各薬剤の特徴や換算比などが文献を基に記載されている。「なるほど」と納得の内容に加え,図と問いの繰り返しの手法でわかりやすく解説されているため,学ぶことが楽しくなってくる。「ひきだし」をデジタル大辞泉で引くと,いくつかの語釈の中に「臨機応変に活用できる,隠れ持った多様な知識や豊かな経験のたとえ」とある。まさにこの語釈にぴったりの本ではなかろうか。
本書には,これまでに著者が管理するDIウェブサイトに寄せられた問い合わせから厳選された76事例が掲載されている。これらは,「薬学的な思考」「換算」「服薬タイミング」「粉砕・一包化・簡易懸濁法」など,計8つのひきだし(章に相当)に分類され,印象的なインフォグラフィックスとともに収められている。本書を職場のデスクの傍らに置き活用するのもよし,寝転がってのんびりと読んで知識を深めるのもよし。「自身のひきだし」を充実させるために,ぜひ手元に置いておきたい一冊である。
自分の“ひきだし”の中身を充実させたいときに読む一冊
書評者: 土屋 雅美 (宮城県立がんセンター薬剤部主任薬剤師)
薬剤師,医療専門職に限らず,ひとの知識というものは,その人が持っている“ひきだし”の数によって表すことができるのではないかと考える。数は少ないが広くて深い引き出しを持っている人もいるし,小引き出しをたくさん持っている人もいる(空の引き出しばかりの人もいるかもしれないが)。よく,医療専門職は一生勉強と言われるが,それはすなわち「知識の棚卸しや入れ替えを繰り返しながら,引き出しの中身をブラッシュアップし続けること」を意味しているのではないだろうか。時には,引き出しの奥から古くなって変色した知識も出てくることもあろうが……。
医学書院の“ひきだし”シリーズの第2弾として(?)上梓された『医薬品情報のひきだし』は,薬剤師としての“ひきだし”の中でも,小引き出しを充実させるタイプの書籍である。先に発売された第1弾の『がん薬物療法のひきだし』が「腫瘍学」の大引き出しの中身を最新の知識に総入れ替えするものであったのに対し,本書『医薬品情報のひきだし』は,著者らが厳選した「医薬品情報室あるある!」の上位に位置しそうな質問に文献的な裏付けを加えており,ジェネラリストをはじめ,どの領域を専門とする薬剤師でも身につけておきたいエッセンスが詰まっている。本書の特徴としては,「質問→ビジュアルアブストラクト→回答→解説」の構成となっており,その場で問い合わせに答えるのには最初のビジュアルアブストラクトと回答まで読めば十分,文献的裏付けまでしっかり勉強しようと思ったらそれ以降の解説を読めばよい。学生実習などにおいて,医薬品情報分野の課題を出すのにも役立ちそうである。
これだけの情報量を1ページに収めるための多大な工夫・ご苦労は察するところではあるが,「少しだけ惜しいな」と思ったのは,各項のビジュアルアブストラクトがややbusyな印象があり,忙しい時にぱっと見ようとすると近眼(老眼の方も……)には少しつらいところがあることである。ただ,それを差し引いても書籍全体の情報の密度は目を見張るものがあり,新人から中堅,ベテランまで必携の一冊であることは間違いないと考える。
個人的には,本書を初めて手に取ったとき,表紙の次の見返しにあるお役立ちインフォグラフィックスに非常に目を引かれた。このようなスタイリッシュな情報提供ができるようになりたいものである。どんな内容なのかは,ぜひ本書を実際にご覧になって確認してほしい。