かげさんと読む《シリーズ ケアをひらく》
寄稿 看護師のかげ
2021.02.22 週刊医学界新聞(看護号):第3409号より
『中動態の世界』から始まった,ケアをめぐる思索
「この本,看護の教科書の出版社だ」。2年前,夜勤明けは書店にふらっと寄るのが日課だった。疲れた身体で当然本なんて読めるわけがないのだが,そんな状態でも手にとって買う本はたいてい翌日に回復した自分に合っていてお気に入りになる。購買によるストレス発散は“夜勤後の看護師あるある”なのだが,本ならたとえ散財しても“勉学のため”と自分に言い訳できるのである。
あの日も夜勤中と同じように(各本棚を病室かのように)巡視していると,『中動態の世界――意志と責任の考古学』という本が目に留まった。白い表紙に活版印刷のような装丁が当時の自分にはなぜか新しく感じ,手に取ると「医学書院」の文字。すぐに学生の頃にお世話になった『系統看護学講座』を思い出した。「中動態って何? でも医学書院だから医療の話なのか?」と夜勤の疲れで回らない頭のままレジに向かって歩いていた。
夜勤明けは,予定がなければ気が済むまで寝ていたい。たいていは昼に自宅に帰って寝て,夕方に起きる。そのあと何事もなかったかのように夜にまた寝るのだ。あの日も,気付いたら夜になっていた。すっきりした身体で買った本を手にとる。読み応えがありそうだ。『中動態の世界』というタイトルもそうだが,そもそも《ケアをひらく》ってなんだ。どこにひらいているのだろう。そう思いながら読み始めた。
『中動態の世界』を読んだあとは,ことあるごとに本シリーズを読み進めていた。どれも医学・看護学と人文学が合わさったようなテーマで,読後感は小説や物語を彷彿とさせ感情に訴えてくる。著者の体験談や対象者の語りなどからさまざまなケアの場面が鮮明に切り取られ,その分析には(教科書的な記述にとらわれない)ケアについての思考が散りばめられているからなのだと思った。「Aさんのケア終わった?」など私たち看護師が普段何気なく使う「ケア」という言葉は,たくさんの意味や価値を生み出してくれるものだということを学んでいる。
本稿では,看護学生・看護師に特にお勧めしたい3冊を紹介する。
実習の励みになる『居るのはつらいよ』
病院実習ではベッドサイドで患者さんとコミュニケーションをとりながら必要なケアを考えていく。学生の時の私が実習で苦しんだことのひとつが,「患者さん......
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