医学界新聞

名画で鍛える診療のエッセンス

連載 森永 康平

2020.12.07

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 風景の中の自画像(アンリ・ルソー)

「細かな背景や開放的な空と対照的に中央には黒一色の作者が描かれている。これは画家としての将来への不安を表している」――アンリ・ルソーの『風景の中の自画像』()にこんな解説があったらどう感じますか? 「そうだよね」と共感した方は要注意,視覚情報を認識する際に事実と解釈が混在しています。実際,「画家としての将来の不安」というのは私の適当な解釈です。

紹介状や問診票,観察,身体所見,検査結果など医療現場で扱う情報はさまざま。しかしこれらは玉石混交でそのままでは診療に活用できません。頭の中で吟味し,ニーズに応じた調理が必要です。その最初のふるい分けが事実と解釈の区別なのです。

あらためて図の絵を見てみましょう。「中央には左手にパレット,右手に絵筆を持った口ひげ豊かな男性。タイトルは『風景の中の自画像』だが,これは作者? 鼻の高さからは欧米人に見える。空にはいくらかの雲と気球のようなものが浮かんでいる。人物の左後ろには多彩な国旗がたなびく船や橋,建造物などがある。建造物から伸びる細長いものは煙

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