「こげんところに行きよったら,な~んもできんごとなる」(井部俊子)
連載
2019.03.25
| 看護のアジェンダ | |
| 看護・医療界の"いま"を見つめ直し,読み解き, 未来に向けたアジェンダ(検討課題)を提示します。 | |
| |
井部 俊子 聖路加国際大学名誉教授 |
(前回よりつづく)
90歳となる吉川さん(仮名)は,同い年の妻と共に福岡県太宰府市に住んでいます。東京で仕事をしている娘は,3か月に1回くらい様子を見に帰省しています。
太宰府は新興住宅地で,自宅までは坂を少し上がっていかなければなりません。吉川さんは最近,その坂を上がれなくなってきました。それで「脚の力を落とさないように」とケアマネジャーにデイサービスを勧められました。吉川さんはそういうところには行きたくなかったのですが,脚の力が落ちていると自分でも自覚していたので通うことにしました。
上げ膳据え膳,自動洗浄機
このデイサービスへは,お迎えのマイクロバスが来て,それに順次乗って連れて行ってくれるのです。吉川さんはデイサービスの施設に行くと,上履きに履き替えます。その上履きは靴箱に入れてあって,職員が「吉川さん,こんにちは」と言って上履きをそろえて出し,履けるようにしてくれます。吉川さんは自分の靴箱がどこにあるのか覚えておきたいし,自分で靴箱まで行って自分で履き替えたいと思っているのですが,そうはいきません。帰るときもそのようにしてくれます。
デイサービスでは,上げ膳据え膳で何もせずに食事が出てきます。入浴時にはパンツを下げてくれ,2人がかりで頭からからだを一気に洗ってくれます。これを通称,「自動洗浄機に入る」とも言います。こうした過剰なサービスに吉川さんは「こげんところに行きよったら,な~んもできんごとなる」と考えて,デイサービスを半年でやめました。そして,リハビリ中心の別のデイサービスに通い始めたのです。
あるとき,福岡空港でレンタカーを借りて帰省した娘に,吉川さんは「ショッピングセンターに連れて行ってくれ」と頼みました。リハビリに行って靴を脱ぐとくたびれた靴下が恥ずかしくリハビリの先生にも申し訳ない,ほかの人は...
この記事はログインすると全文を読むことができます。
医学書院IDをお持ちでない方は医学書院IDを取得(無料)ください。
この記事の連載
看護のアジェンダ
いま話題の記事
-
ピットフォールにハマらないER診療の勘どころ
[第22回] 高カリウム血症を制するための4つのMission連載 2024.03.11
-
VExUS:輸液耐性が注目される今だからこそ一歩先のPOCUSを
寄稿 2025.05.13
-
医学界新聞プラス
[第1回]物としてのポスターデザイン
『医療者のポスターデザインーー美しく伝え、心に響く学会ポスターの教科書』より連載 2026.05.22
-
サルコペニアの予防・早期介入をめざして
AWGS2025が示す新基準と現場での実践アプローチ寄稿 2026.03.10
-
新年号特集 認知症と共に生きる カラー解説
認知症と社会をめぐる歴史的変遷寄稿 2024.01.01
最新の記事
-
対談・座談会 2026.05.12
-
生涯を通じて女性のQOLを維持・向上する
産婦人科4本目の柱「女性医学」対談・座談会 2026.05.12
-
Sweet Memories
揺れながら進む,あなたの一歩に意味がある寄稿 2026.05.12
-
デジタル撮像とAIが切り拓く,細胞診の新たな地平
新田 尚氏(株式会社CYBO 代表取締役社長)に聞くインタビュー 2026.05.12
-
そのとき,研修医と指導医は何を考えているのか
麻酔科における「時間の流れ」と「思考の進め方」寄稿 2026.05.12
開く
医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。