MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
2018.05.07
Medical Library 書評・新刊案内
佐田 竜一,綿貫 聡,志水 太郎,石金 正裕,忽那 賢志 著
《評 者》徳田 安春(群星沖縄臨床研修センター長)
漫画を読むように楽しみながら実践力が身につく
一読して,これは現代医学系出版物の明治維新だなと思った。実際,明治維新は少人数から始まった。年齢層も若かった。若き情熱と実行力で世の中を変えたのだ。この本の著者も,メンバーの年齢層は30~40歳代であり,一般社会的には中年層であるが,医師の世界では比較的若年層だ。しかも情熱と実行力のみならず,ユーモア力と知識,そしてアピール力も素晴らしい。
内容は症例検討会の実況中継が主体で,それぞれ解説も付けている。厳選されたケースに対する深いディスカッションが展開されているので,とても勉強になる。しかも簡単に読めて勉強になるのは,漫画のノリで書かれているからだ。それに,鑑別診断のアプローチやネモニクスなど,実践力が身につくように工夫されている。
元となった勉強会は「東京GIMカンファレンス」と呼ばれている。「京都GIMカンファレンス」という関西で有名な勉強会の関東版との位置付けでスタートしたが,友情と格闘で育てた仲間内のポジティブ・フェイスの濃密さという点では京都を超えている。しかも症例について語り合うのは,病院を超えた親しい仲間内である。飲み会のようなノリが漂ってきているのは,多分勉強会の後の飲み会がメインとなっているからなのであろう。病院内での心理的ストレスの大きい若手総合内科医にとっては,こういった病院を超えた勉強会での仲間が必要だと思われる。
本の話に戻る。臨床推論のベーシックスと高度な応用スキルが漫画を読むように楽しみながら身につくように工夫されている。そのために,漫画のセリフのようなダジャレや,必ずしも品が良いとはいえない発言をあえて挿入したのだろう。
しかし著者らは確信犯(?)でもある。なぜなら,彼らの写真は皆,顔にモノクロの仮面のようなものを被っているからだ。発言の質を自覚しているからであろう。このシリーズの次回作を期待するのは私だけではないと思われるが,次回はぜひ,著者たちの最近の素顔を拝見したいところだ。
A5・頁272 定価:本体3,500円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03194-3


《ジェネラリストBOOKS》
病歴と身体所見の診断学
検査なしでここまでわかる
徳田 安春 著
《評 者》中西 重清(中西内科院長)
中高年医師の復活,開業医のあなたも臨床の達人になれます
クリニックの外来に備えておくべき必読書が出版された。これを読破し目の前の患者さんに応用すれば,日常診療のコモンな症候に対して,検査なしで診断に迫れます。開業医も高齢化が進んでおり,読みやすい(文字が大きい),わかりやすい,患者さんに簡単に応用できる臨床本が必要です。ある症候に遭遇した際に,診断の肝(キモ)である病歴を聴取し身体診察を行い,陽性と陰性所見を数値化し,それを合算して,診断の確からしさを導き出します。数値が高ければ,診断の確からしさ(検査後確率)が高まり,検査は確認するだけの作業になります。検査偏重の自分から脱却できるかもしれません。例えば熱があるから条件反射的にインフルエンザ迅速検査,CRP検査を行う必要がなくなり,疾患の確率を考えて検査する医師に変貌できます。
第1章では,徳田安春先生と上田剛士先生の熱い思いが語られています。お二人とも「21世紀適々斎塾」(大阪開催)の理事であり,臨床推論の達人です。この本と上田先生執筆の『ジェネラリストのための内科診断リファレンス』(医学書院,2014年)があれば,開業医にとっては鬼に金棒でしょう。
第2章は19種類の各論から構成されており,コモンな症候から診断の確からしさを推測します。
「症候1」は,風邪症状がインフルエンザらしいか否かについてです。当院で研修中の研修医,看護師,私で,どこまでインフルエンザに迫れるか応用してみました。インフルエンザの確定診断は迅速検査陽性としました。まず,検査前確率を推測します。流行していれば,10%くらいになりますし,流行していなければ,0.1%になります。患者さんの症状と所見から尤度比を導き,それらを合算します。ノモグラムを使い,検査前確率と尤度比から検査後確率を算出します。尤度比が高ければ診断精度も高くなり,検査を行わなくても,結果は推測可能となります。使用方法に慣れてくると,医療関係者自身の診断確率が高まります。インフルエンザの流行時期にこの方法を繰り返せば,インフルエンザ診断の達人になれるはずです。実際に当院では,「どれくらい,インフルエンザらしい?」という質問に研修医が解答できるようになってきました。なんども同じ作業を繰り返すことが大切です。
インフルエンザ以外にも脱水,肝硬変,呼吸困難,肺炎,咽頭痛,胸痛,腹痛,腹水,腰痛,下腿腫脹,めまい,手のしびれ,手のふるえ,低アルブミン血症,アルコール依存,原因不明の身体症状が取り上げられています。これらの症候に対し尤度比算出を繰り返すと,重要な問診と診察が自然にマスターできます。
いやあ,医者の仕事って本当に楽しいです。患者さんから一生懸命に話を聴き,的確な診察をすれば自然に正しい診断ができる。これって,開業医(プライマリ・ケア医)の真骨頂だと思いませんか? 対談の中で,「本書を入門書として,もし,全員が読むようになったら,日本の医療の質が変わると思います」と記述されています(p.29)。あなたも,明日から自分自身の医療を変えてみませんか!
本を購入すれば,「尤度比一覧(診断に役立つ症状・所見一覧)」のPDFを医学書院ウェブサイトからダウンロードできます。私は,電子カルテにPDFを置き診療に役立てています。素晴らしい時代になったものです。
A5・頁210 定価:本体3,600円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03245-2


三村 治 著
《評 者》相原 一(東大大学院教授・眼科学)
眼科医ならもちろん,緑内障専門家には特に読んでほしい
三村治先生の『神経眼科学を学ぶ人のために 第2版』が出版された。神経眼科分野でも,従来の画像検査の改良とともにOCTやOCTアンギオにより,より詳細な病態がとらえられて診断に役立つようになった。また治療法も増え,ガイ...
この記事はログインすると全文を読むことができます。
医学書院IDをお持ちでない方は医学書院IDを取得(無料)ください。
いま話題の記事
-
医学界新聞プラス
[第1回]心エコーレポートの見方をざっくり教えてください
『循環器病棟の業務が全然わからないので、うし先生に聞いてみた。』より連載 2024.04.26
-
対談・座談会 2025.03.11
-
医学界新聞プラス
[第2回]アセトアミノフェン経口製剤(カロナールⓇ)は 空腹時に服薬することが可能か?
『医薬品情報のひきだし』より連載 2022.08.05
-
医学界新聞プラス
[第1回]ビタミンB1は救急外来でいつ,誰に,どれだけ投与するのか?
『救急外来,ここだけの話』より連載 2021.06.25
-
医学界新聞プラス
[第1回]PPI(プロトンポンプ阻害薬)の副作用で下痢が発現する理由は? 機序は?
『医薬品情報のひきだし』より連載 2022.07.29
最新の記事
-
対談・座談会 2025.03.11
-
対談・座談会 2025.03.11
-
対談・座談会 2025.03.11
-
FAQ
医師が留学したいと思ったら最初に考えるべき3つの問い寄稿 2025.03.11
-
入院時重症患者対応メディエーターの役割
救急認定看護師が患者・家族を支援すること寄稿 2025.03.11
開く
医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。