MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
2016.06.13
Medical Library 書評・新刊案内
松村 真司,矢吹 拓 編
《評 者》徳田 安春(臨床研修病院群プロジェクト群星沖縄副センター長)
珠玉の外来100症例を疑似経験
医師の診療能力はさまざまな症例を経験して上達する。それはマニュアルやガイドラインのみを参照するだけでは決して得られない臨床の実践知なのである。読者は,本書を精読することにより珠玉の外来100症例を疑似経験することができる。患者背景,主訴,病歴,バイタルサイン,身体所見,初期検査などが継時的に示され,本書を読みながら外来診察室で患者と向き合っているような雰囲気に引き込まれていく。
各症例には,臨床的な判断ポイントを問うものとして重要な,診断と治療についての設問が1つずつ付いている。設問数は合計200となる。選択肢は単純な知識を問うものというより,問題解決能力を問う形式がほとんどである。知識を問う問題の解答はネットですぐに得られても,これらの設問の解答について自信を持って選択することは簡単ではない。
ページをめくってみると,解答・解説がエビデンスベースで展開されている。最新の文献に基づいていることが解説を読むとすぐに理解できる。また,重要な項目は表としてまとめられているので後で参照するのに便利である。
そして,キーポイントが箇条書きに整理されており,読者が学習ポイントをきちんと押さえて記憶することができるようになっている。それに続く症例の「転帰」でどのように経過したかを見ることで,症例の臨床経過の疑似体験はクライマックスを迎えるのだ。
文献リストに一文解説が付いているのもありがたい。どの文献を参照すればよいか,読者がすぐにわかるようになっているからだ。評者が以前に発表したリンパ節生検の適応についての臨床研究論文も取り上げてくれているのはうれしい。
編者が受験生時代に愛用したドリル式学習問題集のアイデアをベースにした本書は,わが国でもユニークな医学書となっている。受験生時代に編者の偏差値を飛躍させたという意味では,このドリル式問題集の効果のエンピリック(経験的な)エビデンスは十分にあると言ってよいだろう。
「目指せ! 外来偏差値65!!」とうたわれているように本書はやや難問症例を集めているが,診断難問だけでなく,いろいろな難しい質問を投げ掛けてくる患者への返事の内容も症例として取り扱われている。そこがまた,外来診療の醍醐味でもあるのだ。
お勧めしたい読者層としてはまず,外来診療のマニュアルを読みながら外来診療を数年経験し,さらにスキルアップしたいと思う医師。内科のサブスペシャルティ診療科を長年担当した後に,新規に総合系の外来を担当することになった医師。内科系以外の診療科から,守備範囲を広げて外来診療を行うための準備をしている医師。最新のエビデンスベースで復習してみたいと思う外来診療ベテランの実地医家など,広くお勧めできる自己学習書である。
B5・頁212 定価:本体4,200円+税 医学書院
ISBN978-4-260-02505-8
林 清二 監修
倉原 優 著
《評 者》早田 宏(佐世保市総合医療センター呼吸器内科/副院長)
COPDのエビデンスと患者中心の医療が融合された理念の書
倉原優先生のブログは,文献量とその質の高さから,呼吸器内科医では知らない人がいないくらいである。このたび,その倉原先生による『COPDの教科書――呼吸器専門医が教える診療の鉄則』が出版された。COPDの患者は重症度,呼吸困難感の訴え,合併症によってさまざまな臨床像を示し,診療に当たっては個別化が必要である。
複雑なことを難しく書くことは誰にでもできるが,わかりやすく述べることは容易なことではない。多様なCOPDの診療を詳しく書けば書くほど,〈COPDの本質〉を見失いがちになる。一方,単なるガイドラインの解説だと実際の患者像から遠く離れてしまう。本書は,読み物という体裁を取ってはいるが,〈COPDの本質〉を極めている優れた医学書である。文献の英語原著論文の数からもわかるように,最新のエビデンスを基盤に,おそらく著者が出会った一人ひとりの患者から得られた実体験が,その内容に反映されている。
特に,出色の出来栄えなのは,最近販売された数多くの吸入薬の説明である。臨床試験データと共に吸入器具の特性や患者の個別性を踏まえて,吸入薬の選択アルゴリズムが極めてわかりやすく提案されている。また,多くの呼吸器専門医が常々感じていることも解説されている。例えば,長時間作用性抗コリン薬(LAMA)と長時間作用性β2刺激薬(LABA)の選択順位,LAMAとLABAの心血管系合併症への懸念などである。また,各薬剤の治療効果の図が多く,LAMA単独では1秒量の約100 mLの上乗せ,LAMA/...
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