外来診療ドリル
診断&マネジメント力を鍛える200問

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内科系の外来ではコモンな症候・疾患の最新知見やトピックス、稀にだが遭遇しうる症候・疾患の知識、持ちかけられる多様な問題へのマネジメント。外来診療に必要な幅広い知識をエビデンスに基づいてアップデートする1冊。学び続けることで、外来診療はいつまでも進歩することができる。目指せ! 外来偏差値65!!
編集 松村 真司 / 矢吹 拓
発行 2016年04月判型:B5頁:212
ISBN 978-4-260-02505-8
定価 4,620円 (本体4,200円+税)

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はじめに

 この10年で外来診療のレベルは格段に向上した.もちろん,外来で使用できる迅速検査や超音波をはじめとした検査機器の飛躍的な進化によるところも大きいが,何よりも外来診療というものの独自性を認識し,臨床推論をはじめとした外来における診断およびマネジメント方法を系統的に学ぼうとする医師たちが増えたことが最大の理由ではないだろうか.
 多様な患者と短時間で関係を確立しながら,時宜を得た病歴聴取を通じて情報を的確に絞りこむスピード感.続いて,効率よくかつ最大限に身体診察を行いながら追加検査を選択していく連続性.必要十分な情報を統合しながら,その時点で必要な対応を切れ目なく続けていくダイナミックさ.とりわけ診療所や病院の総合外来では,一見雑多で,とるに足らないように見える多くの訴えの背後にも一定の確率で重篤な疾患が潜んでいる.これらを見逃さないようにしつつも多くの軽症疾患に対して適切に対応していくには,きわめて高度な能力が必要になる.それにしても,時間軸,患者の希望,周囲の医療資源,果ては自分の体調までをも考慮しながら行う外来診療とはいかに奥深いものか.これらのすべてが外来診療の難しさであると同時にその醍醐味でもある.
 本書は,そのような外来診療に携わる医師たちのうち,外来診療の基本を学び終わり,そしてさらなる外来診療の向上を目指すという,知的好奇心と向上心に溢れた医師たちに向けた「自己鍛錬」のための問題集である.いまや外来診療の基本を教える優れた本はたくさんある.私たちはさらにその一歩先を目指してみた.外来診療とは,学び続けることにより,いつまでも,いつの時点でも進歩することができるものでもある.
 このような医師たちがレベルアップをはかるには様々な方法があるが,本書はとりわけ知識レベルでの強化を目指している.内科系を中心としているが,総合外来・一般外来を何年か担当して1回遭遇する程度の比較的稀な症候・疾患に対する知識をはじめとして,コモンな症候・疾患における最新の知見とトピックス,内科外来においても遭遇することのある周辺分野に関するものなど,幅広く知識を強化できるように設問と解説を作成し,そしてそれらが各1頁に収まるようレイアウトを行った.このような作業は私一人では困難であるので,新進気鋭の総合診療医である栃木医療センターの矢吹拓先生のお力を全面的にお借りした.また,この私の無理な願いを聞き入れていただいた執筆者の先生方にも,この場をお借りして御礼を申し上げたい.
 さて,完成イメージとして頭の中にあったものは,私が受験生だった高3の夏休みに解いた問題集である.元来怠けものだった私は,夏休みに入る前に「この問題集を終わらせれば確実に成績が上がる」と評判だった1冊の数学の問題集を買った.その問題集は,当時の私の力では手に負えないほどの難問が載っていた.1日1頁,自分にノルマを課し問題を解き,というか解説を熟読し,次に同じ問題が出たら確実に解けるような心構えで解き進めていった.1日数問程度であればそれほどの負担でもない.毎日こつこつ解いていく.夏休みが終わりに近づき,蛍光マーカーのラインと書き込みで問題集が一杯になった頃には,確かに私の実力は上がり,今,私はここにいる.
 あの時と同じような,外来診療に特化した問題集を作りたい.そして,それを1冊通して解くことによって外来診療の実力を格段に向上させたいという自らの願いを込めて,この『外来診療ドリル』を作成した.本書は,寝転がって読める本でも,気楽にスイスイ読めるものでもない.ただ漫然と問題を解いていくだけではなく,必ず解説を,できれば参考文献にまで目を通し,それぞれの症例の背後にあるすべての情報を完全に理解してほしい.そして,途中で投げ出さず,最後まで読み切っていただきたい.
 大変のように思えるかもしれないが,所詮100例である.1日1例で100日.1日4例なら25日.土日を除いた5週間ですべて解き終えることができる.私の高3の夏休みにも満たない期間である.向上心溢れるあなたなら,きっとできるはずである.
 最後の1問を終えた時には,本ドリル制覇の深い達成感を味わうとともに,外来診療に対する自信が一段と深まっていることを,編者・執筆者一同,心より願っている.

 2016年2月
 編者を代表して
 松村真司

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はじめに

I.神経・精神症例   1- 17
II.循環器症例 18- 24
III.呼吸器症例 25- 31
IV.消化器症例 32- 43
V.腎・泌尿器症例 44- 50
VI.代謝・内分泌症例 51- 58
VII.血液症例 59- 64
VIII.アレルギー・膠原病症例 65- 71
IX.感染症症例 72- 85
X.筋骨格症例 86- 91
XI.その他症例 92-100


疾患目次

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『外来診療ドリル』 完全制覇への道
書評者: 鈴木 富雄 (大阪医大病院総合診療科科長)
 『外来診療ドリル』。「ドリル」と名前がついたこの本は,気軽に読めるようで実は極めて骨太の本である。今回書評の依頼をいただいたので,ひとまず問題を解きながら全て通読してみた。最初は「1日20問,10日で終了できる。これは軽い」と思っていたが,大きな間違いであった。問題を解き始めてみると,「う~ん,なるほど!」「そ,そうだったか……」の連続で,なかなか先に進めない。1回目を終了するまでに結局2か月近くもかかり,しかも正答率は大学の進級試験であれば,「なんとか合格点は取れたが……」という体たらく。得点の公表は私も立場があるので,どうかご容赦を……。

 あまりの不出来ぶりに自分自身もショックを受け,「このままでは終われない」と,再度挑戦。もう一度初めから終わりまで問題を解いてみた。「今度は2回目だからスイスイ行くだろう」と思っていたが,これまた今一つで,やはり同じところを間違える(笑)。結局2回目も1か月以上かかってしまった。ただし,1回目はとにかく問題をこなすだけであったが,2回目は疑問に思った部分に関して,記載文献を参考に自分でも調べてみる余裕ができた。その上で解説を読み直してみると,コンパクトにまとめられたその記載の素晴らしさに改めて納得することができた。

 この本の持ち味は,その問題の多様性と,臨床家の隙を突くような絶妙な難易度にある。また問題と解説がそれぞれ1ページの表と裏に収められ,非常に使いやすい。記載文献の数と選択も適切である。比較的簡単に正解できたとしても,ぜひ解説文を一読いただき,興味を持たれた部分やあやふやな分野に関しては,記載文献を参考に自分で少し調べてみることをお薦めする。ある程度余白もあるので,書き込みもできる。ドリルはドリル。下線と付箋と書き込みで自分だけの一冊にしてこそ価値がある。

 このドリルは,総合診療医や家庭医などのジェネラルな分野の専門医をめざす後期研修医のトレーニングにも最適であるが,腕に覚えのあるベテランの臨床家の先生にこそ,ぜひチャレンジしてほしい。まずはその鼻っ柱が折られること間違いない。7割取れれば素晴らしい。8割取れればトレビアン。9割取れればレジェントの域といえよう。

 ちなみに私は,「ここまできたら」との思いで3回目にチャレンジしてみた。今度は1週間で終了し,ようやく全問正解。書評の依頼をいただいてから,4か月目にしてようやく完全制覇。下線と付箋と書き込みで手垢にまみれたこのドリルは,私の大切な一冊となった。
学び続けることサーファーの如し!
書評者: 北 和也 (やわらぎクリニック副院長)
 桜が咲き始めた春の頃,本書はついに僕の手元に届いた。手に取ると同時に目に飛び込んできた「目指せ! 『外来偏差値』65!」のキャッチコピーになぜだか少し胸が躍る。100症例200問か,ならば毎日3症例6問ずつ解いて1か月と少しで終わらせることができる。あの日,確かに僕はそう思ったんだ。

 鉛筆で解いて右上のチェックボックスに○×を付けて後で集計する。滑り出しはすこぶる好調で○が並んだ。「も,もしかして高偏差値をたたき出せるのでは?」……傲慢な思いが脳裏をかすめる。しかし考えが甘かったことにすぐに気付く。片頭痛によるアロディニア,低髄液圧症候群の治療法,月経前症候群(PMS:premenstrual syndrome),PPI(proton pump inhibitor)以外のmicroscopic colitis……どうやら知識の整理ができていないようだ。これまでにも見逃しがあったに違いない。生命には直結しないもののQOLを下げ続け得るような疾患については,ぜひともしっかり整理しておきたいのだ。だって,よくわからずにずっと対症療法し続けるなんてとても悲しい。今日ここでしっかり勉強して,明日はきっと見逃さない。そう僕は誓った。

 その一方で,問題を解いた前後に一過性全健忘,レム睡眠行動障害,安静で下肢痛が悪化する末梢動脈疾患(PAD:peripheral arterial disease)の患者さんにも出会う。「あなたの外来を訪れるかもしれない100症例」……帯の言葉になるほどと頷く。これまでにも幾度となくこういったことはある。日常的に学び準備していた者にのみ微笑む診断の神はいるのだ。これは,静かにビッグウェーブを待ち続け,訪れたと共に華麗に波乗りしてみせるサーファーの感覚と近い。でも僕はサーフィンをしないのでその感覚はあまりよくわからないんだ。何にせよ,そう,僕らは一生勉強なんだ。

 ところどころの選択肢・解説には魂が込められている。「ここはぜひシェアしておきたい」という筆者の思いが伝わる。良性発作性頭位めまい症(BPPV:benign paroxysmal positional vertigo)は「典型的な症例のみをBPPVと診断する」が鉄則,のフレーズに胸が熱くなる(p.184)。診断だけでなくマネジメントについても,非常にcommonなものから比較的rareなものまで触れられている。rareなものといっても確かに出合うし,commonなものについては曖昧になりがちな部分についても限られたページの中で見事に掘り下げられている。あまり話題にならないけれど実地臨床では常に遭遇する問題も扱っている。長らくの難聴の原因が耳垢塞栓だったという高齢者がたまにおられるが,耳垢除去後に聞こえが良くなり感謝されるのは,ちょっとしたことかもしれないがうれしいことである。

 毎日3症例6問ずつ解けば,1か月と少しで終わらせることができる。あの日,確かに僕はそう思ったんだ。でもちょっと挫けそうなときもあった。そんなときには良い方法がある。みんなで集まったときに1症例だけ一緒に解いてみるのだ。うちのクリニックだとナースとともに毎朝5分間勉強会をしている。この時にどさくさに紛れて1症例みんなで解いてみれば,一石二鳥なのである。

 最終的に200問中132問正解。結局,僕の外来偏差値はいくつなんだ,というのは少々気になるところではあるが,こんなに質の高いテキスト(和製MKSAPといっても過言ではない)を楽しみながら解いて外来診療スキルが上がるだなんて,こんな贅沢な話はない。そう,僕らは一生勉強なのだから。
珠玉の外来100症例を疑似経験
書評者: 徳田 安春 (臨床研修病院群プロジェクト群星沖縄副センター長)
 医師の診療能力はさまざまな症例を経験して上達する。それはマニュアルやガイドラインのみを参照するだけでは決して得られない臨床の実践知なのである。読者は,本書を精読することにより珠玉の外来100症例を疑似経験することできる。患者背景,主訴,病歴,バイタルサイン,身体所見,初期検査などが継時的に示され,本書を読みながら外来診察室で患者と向き合っているような雰囲気に引き込まれていく。

 各症例には,臨床的な判断ポイントを問うものとして重要な診断と治療についての設問が1つずつ付いている。設問数は合計200となる。選択肢は単純な知識を問うものというより,問題解決能力を問う形式がほとんどである。知識を問う問題の解答はネットですぐに得られても,これらの設問の解答について自信を持って選択することは簡単ではない。

 ページをめくってみると,解答・解説がエビデンスベースで展開されている。最新の文献に基づいていることが解説を読むとすぐに理解できる。また,重要な項目は表としてまとめられているので後で参照するのに便利である。

 そして,キーポイントが箇条書きに整理されており,読者が学習ポイントをきちんと押さえて記憶することができるようになっている。それに続く症例の「転帰」でどのように経過したかを見ることで,症例の臨床経過の疑似体験はクライマックスを迎えるのだ。

 文献リストに一文解説が付いているのもありがたい。どの文献を参照すればよいか,読者がすぐにわかるようになっているからだ。評者が以前に発表したリンパ節生検の適応についての臨床研究論文も取り上げてくれているのはうれしい。

 編者が受験時代に愛用したドリル式学習問題集のアイデアをベースにした本書は,わが国でもユニークな医学書となっている。受験時代に編者の偏差値を飛躍させたという意味では,このドリル式問題集の効果のエンピリック(経験的な)エビデンスは十分にあると言ってよいだろう。

 「目指せ!外来偏差値65!!」と謳われているように本書はやや難問症例を集めているが,診断難問だけでなく,いろいろな難しい質問を投げかけてくる患者への返事の内容も症例として取り扱われている。そこがまた,外来診療の醍醐味でもあるのだ。

 お勧めしたい読者層としてはまず,外来診療のマニュアルを読みながら外来診療を数年経験し,さらにスキルアップしたいと思う医師。内科のサブスペシャル診療科を長年担当した後に,新規に総合系の外来を担当することになった医師。内科系以外の診療科から,守備範囲を広げて外来診療を行うための準備をしている医師。最新のエビデンスベースで復習してみたいと思う外来診療ベテランの実地医家など,広くお勧めできる自己学習書である。

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