レジデントのための「医療の質」向上委員会
[第12回] 実践編2(後編)
事例で学ぶ質向上モデルの実践
連載 遠藤英樹
2015.12.07 週刊医学界新聞(レジデント号):第3153号より
今回は前回に引き続き,事例を基に質向上モデル(図1)の実際の流れを見ていきます。

事例提示
研修医2年目・外科研修中
発見した現場の課題:WHOの三段階除痛ラダーが遵守されておらず,NSAIDs投与なしでオピオイド投与を受けていた癌性疼痛患者が吐き気を訴えていた。同様のケースは他にもあり,自分以外の研修医や看護師も問題を感じていた。
【立ち上げた質向上プロジェクト】
目的:オピオイド(経口・貼付剤)が投与されている入院患者に,必ずNSAIDsが投与されるようにする(禁忌がある場合を除き)
チーム:<組織の管理者>外科部長,<臨床的アドバイスをくれる専門家>緩和ケア部長・緩和ケア認定看護師,<現場の責任者>看護師長・副看護師長・緩和ケア認定看護師
前回は,発見した現場の課題を基に,質向上の「目的」「チーム」を決めました。続いて「測定項目」「施策」を考え,テストを行います。
3) 測定項目を決める
4) 施策を決める
<アウトカム指標>
目的を基に,「オピオイドが投与されている患者で,NSAIDsが投与されている患者の割合(NSAIDs禁忌を除く)」をアウトカム指標に定め,100%をめざして取り組むことにしました。
今回は上記の目標にしましたが,なかなか成果が挙がらない場合や患者に不利益をもたらす状態を徹底的に撲滅したい場合には,「NSAIDsが“投与されていない”患者の割合」とするのもよいでしょう。試験の点数を考えてみても,人は90%取れていれば満足してしまいがちです。0%をめざす指標を設定してみてください。
<施策>
アウトカムを改善させるための施策を考えます。プロセスチャート(図2)の中から,認定看護師が中心となる2箇所を選び,3つの介入を考えました。

[介入❶]NSAIDs投与について,病状説明の段階で認定看護師が主治医と協議する。
[介入❷]認定看護師が病状説明に同席できなかった場合,NSAIDsの投与の是非を主治医に尋ねるチェックリストを,認定看護師がカルテに貼付する。
[介入❸]チェックリストが貼付されていない該当患者がいることに病棟看護師が気付いた場合,病棟看護師が認定看護師に連絡を入れ,認定看護師がチェックリストを貼付する。
<プロセス指標>
上記の施策を基に,以下の施行率を収集することにしました。
❶認定看護師がNSAIDsの投与に関して主治医と協議できた割合
❷病状説明ができなかった該当患者のカルテに認定看護師がチェックリストを貼付できた割合
❸チェックリストが貼付されていない該当患者について,認定看護師が病棟看護師から連絡をもらえた割合
<バランシング指標>
起こり得る不都合な事象として「NSAIDs投与により,消化性潰瘍などの副作用・有害事象が生じた割合」と設定しました。
指標は誰がどのタイミングで収集するかも決めなけ...
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遠藤英樹 松戸市立病院救命救急センター医長
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