セルフケアと自助・共助(井部俊子)
連載
2015.03.23
看護のアジェンダ | |
看護・医療界の"いま"を見つめ直し,読み解き, 未来に向けたアジェンダ(検討課題)を提示します。 | |
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井部俊子 聖路加国際大学学長 |
(前回よりつづく)
2月終わりの肌寒い日曜日の午後,世界的指揮者チョン・ミョンフン氏のピアノコンサートに出かけた。聖路加国際病院の多目的ホールで開催されたこじんまりとしたコンサートは,彼の社会貢献活動の一環であり,日本で最初の活動であった。
マエストロは体調が万全でなく,首から左上肢にかけて痛みがあり,このところピアノを弾くことができなかったそうだが,コンサートではシューマンの小品を二曲演奏した。苦手であるというトークの中で,音楽と料理以外は全て妻がやってくれていることや,孫たちのためにピアニストとして初めてのCDをリリースしたことを司会者の質問に答えて語った。韓国で生まれて,イタリア料理に魅せられてイタリアに移住し,現在はフランスに住んでいる。だから韓国語・英語・イタリア語・フランス語は話せるが,日本語は話せなくてごめんなさいと言って会場を沸かせた後,「世界がひとつの言葉で話ができたらいいのに。それができるのが音楽なのだ」と話した。
「セルフケア看護」理論を地域包括ケアの共通用語に
私はコンサートに出かける前に読んでいた『セルフケア看護』(本庄恵子監修・執筆,ライフサポート社,2015年)を連想した。地域包括ケアの中で重要とされる自助・共助は方法論として「セルフケア看護」理論が共通用語として適用できるというひらめきである。しかも,セルフケア看護は看護職の範囲にとどめるべきではなく,セルフケア看護を当事者と全てのケア提供者に普及し,共通のツールとして使おうという発想である。
それでは『セルフケア看護』における著者の主張をみてみよう。セルフケアを直訳すれば,「自分のために自分自身で行うケア」となる。しかし「セルフ」のとらえ方には文化的特徴があり,日本では「セルフ」の範囲が「個」というより「内」「身内」まで含めることがあると指摘する。著者はセルフケア...
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