ジェネシャリストとコンサルテーション その1 コンサルターとして(岩田健太郎)
連載
2015.02.16
The Genecialist Manifesto
ジェネシャリスト宣言
「ジェネラリストか,スペシャリストか」。二元論を乗り越え,“ジェネシャリスト”という新概念を提唱する。
【第20回】
ジェネシャリストとコンサルテーション
その1 コンサルターとして
岩田 健太郎(神戸大学大学院教授・感染症治療学/神戸大学医学部附属病院感染症内科)
(前回からつづく)
医学知識が爆発的に増大し,自分一人で完結するスタンド・アローンな医療が,少なくとも高い質を担保したままでは非現実的になった現代,チーム医療は理念ではなく必然である。
チームの萌芽はコミュニケーションから始まる。コミュニケーションは他者と行われる。他者は自分ならざる存在であり,自分にないアセット(資源とか価値)を持っている。持っていなければ相談する意味がない。これを形式化したのがコンサルテーションである。
ジェネラリストがジェネラリストにコンサルテーションを行うのは一般的ではない。もちろん,ジェネラリスト同士の相談はあるだろうが,それを「コンサルテーション」と呼ぶことはまずない。「コンサルテーション」には専門領域のラテラリティーが必要とされるからだ。コンサルタントとしてジェネラリストが機能しているとき,その人物はすでに(なんと形式的に呼ばれようと)ジェネシャリストである。
*
コンサルテーションにはスキルが必要である。ただ,電話して相談すれば良いというものではない。そのことを痛感させられるのは,深夜の救急外来を担当する初期研修医である。
ぼくは沖縄県立中部病院でそれを体験した。その1年間で1200人以上の患者をファーストタッチで診た。診た症例全てを手帳に記録していたので,その数字は覚えている(手帳そのものはどこかに紛失してしまったけれど)。
当然,救急患者全員を1年目の医者がマネージできるわけもなく,上級医に相談となる。それはしばしば他科へのコンサルテーションへとつながっていく。救急外来という鍛錬の場は,他科へのコンサルテーションという鍛錬の場でもあった。
「どうしてこんなになるまで俺を呼ばなかったんだ!」という怒号が聞こえる。初期研修医の多くは自分の実力に見合わないプライドを持っており,それが上級医への相談を遅らせる。看護師の気が利いていると,「ちょっとあの研修医の先生アブナイから,上の先生を呼んでおこうか」なんて予防線を張っていてくれるけれど。かといって,羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹くと,「どうしてこんなことで俺を呼ぶんだ!」と怒られてダブルバインド状態である。
「それって俺の科じゃない!」というお叱りもし...
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