ジェネシャリストとコンサルテーション その2 コンサルタントとして(岩田健太郎)
連載
2015.03.02
The Genecialist Manifesto
ジェネシャリスト宣言
「ジェネラリストか,スペシャリストか」。二元論を乗り越え,“ジェネシャリスト”という新概念を提唱する。
【第21回】
ジェネシャリストとコンサルテーション
その2 コンサルタントとして
岩田 健太郎(神戸大学大学院教授・感染症治療学/神戸大学医学部附属病院感染症内科)
(前回からつづく)
適切なコンサルターでいるためには,適切なコンサルタントとなり,そこから逆算して相談するのがよいと前回(第3113号)で述べた。ジェネシャリストは適切なコンサルター,かつコンサルタントでなければいけないのだ。では,適切なコンサルタントとはどのような存在だろうか。
*
実はこれも同じ話なのである。ジェネシャリストであることが,適切なコンサルタントとなる一番の早道なのである。残念なことに,不適切なコンサルタントは多い。不適切なコンサルタントとはどういうコンサルタントかというと,端的に言うならば「イヤミな奴」のことである。この話は耳の痛い話で,自分自身がそうだったこともあるからビビッドに思い出せる。あぁ,耳が痛い。
イヤミなコンサルタントとは,自分の専門知識や技術を使ってコンサルターとのラテラリティーを際立たせるようなコンサルタントということである。有り体に言うと,「どっちが上の立場か,はっきりさせたい」タイプのことである。この「どっちが上の立場か,はっきりさせたい」人というのはとても多い。外国でも珍しくないが,特に立場や体面を気にする日本で多く,特に特に立場や体面を気にする医療界(厚労官僚含め)で多い。あぁ,イヤダイヤダ。
「なんでお前ごときが俺様を呼ぶの?」「俺様を呼んでおいて,基本的なワークアップすらしてないの? 俺様を呼ぶときは○○と△△の用意をしとくくらい常識」「病室に行ってみたら,患者がいないじゃんか!」 。
まあ,ここまで露骨に言う人は最近は少なくなったが,「顔にそう書いてある」医者はわりと多い。
*
ときに,上記コメント中にもある「常識」がクセモノである。常識は,ある業界のある「タコツボ」の中でだけ通用する常識でしかなかったりする。こちらの常識があちらの非常識,あるいは了解外の難問だったりすることはままあることだ。
スペシャリストのエゴとかリサーチマインドが,この問題をややこしくすることもある。「臨床的には」不要なデータなんだけど,「とりあえず見ておきたい」という探究心である。それはスペシャリストの内的鍛錬にはいいのかもしれないけれど(いや,やっぱりいけないことが多いな。少なくとも患者の了解なしにやるのはよくない),他領域の医者に要求してはいけないエゴイスティックな要求だ。
自分がコンサルタントとして要求する内容が本来の意味での「常識」に属することなのか,それともタコツボ内の常識にすぎないのか。この判断基準もジェネシャリストにとってはさほど困難なものではない。自分がジェネラリストとして,それを「常識」と感じ取るかどうかを基準とすればよいからだ。
「胸痛患者に心電図」はジェネラリストにとっても「常識」であろう。「不明熱の患者に血液培養」も「常識」だ(常識ですよ)。しかし,「血液培養陰性の不明熱患者にWhipple病のワークアップ」は常識の枠外にあろう。それはコンサルターに要求するものではなく,コンサルタントがオファーすべきものだ。
ジェネシャリスト足るコンサルタントは,自分がコンサルターとして「してほしくないこと」を基準に,自らの振る舞いを規定することができる。居丈高な態度,「どっちが上か」の執拗なヘゲモニーの強調,いい加減な回答,いい加減な態度,患者を診てくれない(カルテしか見ない),転科をかたくなに拒む,患者に余計な...
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