医学生へのアドバイス(31)(田中和豊)
連載
2009.12.07
連載 臨床医学航海術 第47回 医学生へのアドバイス(31) 田中和豊(済生会福岡総合病院臨床教育部部長) |
(前回よりつづく)
前回は人間としての基礎的技能の4番目である「聴覚理解力-きく」ことについて述べた。今回は,聞き手によって理解が異なる現象について考えてみる。
聴覚理解力-きく(2)
前回同じ大学の講義を聞いても,聞き手によってかなり異なるノートができることを述べた。今回はなぜこのような現象が起こるのかを考えてみる。講義ノート
筆者の学生時代,大学の講義は1コマ90分で,そのほとんどがスライドを使って行われていた。1コマ90分の講義の情報量は膨大である。これを全部集中して聞いてノートに書くというのは大変な作業である。まず最初に90分間眠りに落ちることなく,すべて話を聞き続けなければならない。そして,講義内容をノートに書き続けなければならないのである。それだけでも大変な作業であるのに,試験前に出回るノートというのは,1学期間その科目をすべて出席した学生のノートである。したがって,試験前に出回るノートを書いた学生は,1学期間すべての講義に遅刻も居眠りもすることなく出席してノートをとり続けた大変勤勉な学生であると言える。それだけではない。試験前に出回るノートは,その書いた本人以外が読むので誰もが読めるようなきれいな字で記載されていなければならないのである。全講義に出席し,講義を傾聴し,誰もが読めるようなきれいな字でノートを記載するという3条件をクリアする学生は,女子学生が多かった。ここまでの条件でかなりの数が絞られる。しかし,出回るノートにはさらなる特徴があった。それは読んで講義のポイントがわかりやすいことである。だから,出回るノートを書く学生はせいぜい2,3人である。こういう出回るノートをいつも読んでいると,ノートに署名がなくてもその筆跡でクラスの中の誰が書いたのか自然とわかるようになった。
そして,こういう優れたノートを読んでいると,優れたノートを書くというのは一つの「特技」ではないかと思えてしまう。すなわち,その「特技」とは講義で聞いた聴覚情報とスライドで観た視覚情報を,言語とイラストと...
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