医学界新聞

連載

2007.10.08

 

【連載】

はじめての救急研修
One Minute Teaching!

田中 拓
箕輪 良行桝井 良裕
(聖マリアンナ医科大学・救急医学)

[ Case18 ]
肥満男性の不眠=睡眠時無呼吸症候群?


前回よりつづく

Key word
一過性不眠,おちこみ,興味の喪失,うつ病

Case
 学会の季節が近づいた。河田君も1か月後に発表を控え,患者が途切れたら準備をしなくては,とぼやきながら当直をしていた。

 次の患者は40歳男性。主訴に「最近眠れない」とある。100kg近くあろうかという肥満体で,1か月ほど前から寝付きが悪く,朝起きても熟睡した感じがなく一日中眠いとのこと。高脂血症を指摘されたことがあるが,その他は異常なく,入院を要する既往もない。

 バイタルサインは意識清明,血圧110/50mmHg,脈拍80回,体温36.5℃,SpO2 98%であった。 身体所見では眼瞼結膜貧血なし,眼球結膜黄疸なし。呼吸音:清,心音:整,心雑音なし,腹部は平坦,軟。下肢に浮腫なし。

 河田君は,最近勉強した疾患にぴったりだとほくそ笑みながら栗井先生のもとへ報告に向かった。

■Guidance

河田 なぜか今,不眠が主訴の患者さんです。おかげで僕も眠れませんよ。もちろん時間があっても眠る暇もなく,学会の準備をするつもりですが。 ところでこの方は楽勝です。あれだけ太っているなら睡眠時無呼吸症候群,かっこよく言うとSAS(Sleep Apnea Syndrome)ですね。

栗井 (また余裕の笑みを浮かべているな。こんな時は要注意,と……)さっそく診断に至ったとはすばらしい。でも診断根拠が体型だけとはいただけないね。その他にSASを示唆する病歴や所見はあるの? それに患者さんが途切れたらすぐミキシィに飛びついていることも知ってるよ。

河田 (ミクシィなんだけどな……)ひとり暮らしでいびきの有無は確認できませんが,肥満男性の睡眠障害といえばまず疑うべき疾患だと思います。

栗井 そうだね。SASのその他のリスクファクターとしては顔面や上気道の異常,小顎症,下顎後退症や扁桃肥大,狭い鼻腔などがあるね。あと喫煙者,高血圧,糖尿病,冠動脈疾患患者で有病率が高いと言われている。この患者さんはどうだい(Check Point1)。

河田 えっと……既往歴を聞いていませんでした。

栗井 不眠主訴で緊急を要することは少ないけど,見逃してはいけない疾患を考えてみよう(Check Point2)。

河田 SASは高血圧の...

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