医学界新聞

連載

2007.09.10

 

【連載】

はじめての救急研修
One Minute Teaching!

桝井 良裕
箕輪 良行田中 拓
(聖マリアンナ医科大学・救急医学)

[ Case17 ]
下腿の浮腫……でも原因は?


前回よりつづく

Key word
栄養障害性浮腫,ビタミンB1欠乏,脚気

Case
 夏も終わりに近づいたが,救急外来は今日も混雑している。河田君は「夏休みに遊びすぎたんだな。僕も体調を壊すほど遊びたいよ」と羨ましがりながら働いていた。

 そんな中,19歳の男性が「この数日足がむくんで感覚もおかしい」と訴え来院した。下腿の浮腫は3日ほど前に出現。足の痺れるような痛みは,1週間前から自覚していた。浮腫・感覚異常ともに両側で,「サッカーで足を使いすぎたかな」と思い放置していたが,運動を控えても改善しないため来院。手の感覚も少し変だという。

 著明な尿量減少なし。また,運動時の息切れや動悸,全身倦怠感が増えたが,強い呼吸苦や胸痛,腹痛はなく,顔面の腫れや蕁麻疹もない。現在はひとり暮らしで,喫煙習慣はなく飲酒も少ない。

 身体所見は178cm,60kg,体温36.5℃,血圧140/50mmHg,脈拍98/分整,呼吸数24/分,SpO296%。貧血や黄疸なし,眼瞼や口唇などに浮腫なし,咽頭所見も正常。表在リンパ節は触知せず,甲状腺の腫大も認めない。呼吸音や心音にも明らかな異常を認めず,腹部も平坦・軟で圧痛などはなく,臓器肥大もない。下腿は神経学的には正常だが,温痛覚・触圧覚ともに四肢,特に下肢で低下,深部腱反射に関しても四肢でやや減弱している。皮膚所見は正常で,静脈瘤,vascular spiderや手掌紅斑,色素沈着,発疹などは認めない。河田君は標準12誘導心電図,胸部X線,血算・生化学・凝固・甲状腺機能などの採血,尿検査をオーダーし,心・腹部エコー検査を行って,栗井先生に報告した。

■Guidance

河田 浮腫はpitting edemaです。下腿のみで上肢や顔面には認めず,左右差もはっきりしません。静脈炎やリンパ管炎なども考えましたが,炎症を示唆する所見はありませんでした。

栗井 「感覚がおかしい」って,具体的には?

河田 痺れと表現されていますが,少し痛みもあるようです。下肢,特に下腿が中心ですが,上肢の感覚も少し鈍いようです。薬剤性浮腫も考えましたが,常用薬はなく,最近薬剤を服用したこともないそうです。

栗井 浮腫が喉頭に及んでいる,もしくは及ぶかもしれないといった所見は? 呼吸状態は安定してる?

河田 僕もアナフィラキシーやQuincke浮腫を心配しましたが,発疹はなく,SpO2も96%に保たれています。患者さんも呼吸苦は訴えていませんし,狭窄音も聴取しません。その他のバイタルサインも正常範囲だと思います。

栗井 浮腫アナフィラキシーやQuincke浮腫が出てくるとはさすがだね!

河田 ありがとうございます。今でも結構イケテルと思いますが,これで満足するような私ではありません。さらなる飛躍のため粉骨砕身頑張ります!

栗井 君は褒めると謙遜しないどころか,完全に肯定するところが売りかもね。短所かもしれないけど。じゃあ,鑑別診断(Check Point1)を局所性浮腫と全身性浮腫に分けて挙げてみて。

河田 局所性浮腫の...

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