医学界新聞


辞めたいというスタッフへの対応

連載

2007.03.26

  ストレスマネジメント
その理論と実践

[ 第12回 ラインによるケア(7) 辞めたいというスタッフへの対応 ]

久保田聰美(高知女子大学大学院 健康生活科学研究科 博士課程(後期))


前回よりつづく

 これまで,ラインマネジャーである師長がどうすればスタッフへの効果的なケアができるのかについて考えてきました。しかし,師長がどんなにがんばっても,現実には離職希望のスタッフから相談を受ける機会はなくなりません。では,そんな時どんな対応が求められているのでしょうか?

辞めたい思いを師長に相談する意味

 前回は相談を持ちかけられた時の師長側の思いに触れました。では,相談を持ちかけた側の看護師はどのような思いを持っているのでしょうか。「辞めたい」思いを胸に抱きつつもどのように切り出してよいものか悩み苦しみながら相談に来たのでしょうか。「たとえ師長が何と言っても絶対辞める」と堅い決意で退職願いまで握りしめているのでしょうか。

 相談に来る看護師の思いも様々でしょうが,「相談する」という行動にはひとつの期待も感じられます。たとえ退職願いを握りしめていても,ぎりぎりのところで返ってくる言葉への期待もあるからこそ相談するのです。師長に相談したところで何の意味もないと思っていれば,黙って退職願いを出せば済んでしまうことです。規模の大きな組織では,事務サイドに提出して済まそうとすれば可能かもしれません。そんな中あえて「相談する」行動の意味を今一度考える必要があるのではないでしょうか。

辞めたい思いの背景

 前回も紹介した筆者の調査において,「仕事を辞めたいと思うほどのストレス」を感じている看護師は86%,その中でもいつも辞めたいと感じている危機的な状況の看護師も13%という結果が出ました。

 そうしたストレスを感じる主な要因を整理すると,図1のようになります。いつも辞めたいと感じている看護師は複数の要因をあげていますので,ほぼすべての要因において多くなっています。また,業務に関する負担感や自分自身の能力不足が上位にあげられていますが,人間関係に関する要因も上位を占めています。そして人間関係の中でも上司との関係にストレスを感じているのは,いつも辞めたいと思っている層で顕著です。

 さらに注目したいのが,上司との人間関係をストレス要因として感じている人たちがどのような対処行動を実施したかということです。図2は上司との人間関係をストレス要因であると答えたかどうかで層別し,その2層間における対処行動とその効果を示したものです。上司との関係をストレス要因とした層では,あらゆる項目において積極的に対処行動を実行しているものの,残念ながらその効果は低いと評価しています。

 その中でも特に効果的でなかった対処行動が,「上司に相談する」と「労働形態を変更する」でした。いずれも上司との話し合いの中で得られた...

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