古くて新しい「患者中心」
連載
2007.03.26
看護のアジェンダ | |
看護・医療界の“いま”を見つめ直し,読み解き, 未来に向けたアジェンダ(検討課題)を提示します。 | |
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井部俊子 聖路加看護大学学長 |
(前回よりつづく)
「夜,目がさめてもそばに誰もいない,冷たい空間が広がる病室,どうして愛する人がいないの」と,近代的な病院の一室でアンジェリカ・シエリオットは思った。そして次に入院する時は,ケースとして扱う病院ではなく人間として対応してくれるアルゼンチンに帰りたいと彼女は思ったのです――。「医療の質に関する研究会」講演で講師はこう語り始めた。
「最新で最良の医療技術と,真に癒しの環境のもとで,考えられる最良の医療をもたらす理想の病院」を世界中の医療組織で実現したいと考えていると,アメリカで「患者中心の病院」を築いてきたNPOプラタナス病院グループの会長スーザン・フランプトンさんが説明した。アメリカ,カナダ,ヨーロッパにある120以上のプラタナスグループの病院が,患者中心主義の医療を実現するための実験の場となっているという。
患者の視点で病院をつくるプラタナスグループ
プラタナスモデルの要素は,人間的なかかわりであり,ケア,親切,敬意を払うことである。これらの実現には患者に聴く,患者の目で病院をみることが大切であるとしたうえで,ベストプラクティスとしての実例を紹介した。病院の玄関は第一印象として,歓迎されていること,快適であり癒しを感じさせる要素が求められる。入口では音楽と,挨拶をするボランティアがいて道案内をする。明確な標識(サイン)があり,きれいな待合室と受付があること。そこには,例えば,飲みものやスナックが用意され,呼び出しボタンがあり,インターネットにアクセスでき,無料マッサージが受けられ,CDとヘッドフォンがあり,コミュニケーション係がいて,具合の悪い人を看てくれる人がおり,ハッピーな職員がいることで患者がハッピーになる。物理的な労働空間は,組織のボディランゲージであるという。
次は,スタッフを支...
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