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医学書院,NTT,NTTドコモビジネス,医療現場での「信頼できるAI」の実現に向け,Ubieと医療AI情報プラットフォームの共同実証を開始

取材記事

2026.11.06

株式会社医学書院,NTT株式会社,NTTドコモビジネス株式会社,Ubie株式会社およびNTT東日本関東病院による記者説明会が2026年11月5日,NTT株式会社本社(東京都千代田区)にて開催された。説明会では,同院を実証フィールドとする医療AI情報プラットフォームの共同実証の開始が発表された。医学書院とNTT,NTTドコモビジネスは,4月のニュースリリース1)以降,同プラットフォームの共同開発を進めてきた。医学書院が有する質の高い医学・医療情報と,NTTグループが有する先端AI技術,セキュリティ技術,通信インフラを組み合わせ,医療者が生成AIを安心して活用できる環境をめざすというもの。

医学界新聞プラスでは,各社による発表とデモンストレーション,パネルディスカッションの模様を通じて,実証の概要と医療AIの社会実装に向けた展望を報告する。

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●写真 記者説明会に登壇した各社代表者
左から爪長美菜子氏(NTT株式会社執行役員),早坂和晃氏(株式会社医学書院常務取締役),森崎裕氏(NTT東日本関東病院院長補佐,医療DX推進室室長),阿部吉倫氏(Ubie株式会社共同代表取締役),福田亜希子氏(NTTドコモビジネス株式会社執行役員)。

医療現場における生成AI活用の実情と課題

医療現場における生成AIへの期待は高まる一方,活用には課題も残されている。冒頭に登壇したNTTの爪長美菜子氏は,医療現場におけるAI活用の実情と課題について説明した。海外の調査によると,汎用AIによるハルシネーション(事実に反する情報の生成)の発生率は25%にも上るという。病院の承認を得ていない汎用AIを業務に利用する医療者の割合は58%,さらに患者の個人情報を入力した経験のある医療者の割合は44%に達する。爪長氏は「ハルシネーションによる誤診のリスクや,機密な患者情報を扱う上でのセキュリティへの懸念が,医療現場でのAI活用における大きな課題」と指摘。課題解決に向けては,①信頼できる医学・医療知識,②安全なAI/ネットワーク基盤,③実際の医療現場への実装の3要素が不可欠と強調した。

信頼できるAIを支える医学書院のコンテンツ

本実証でAIが参照する「信頼できる知識」の基盤となるのが,医学書院が長年蓄積してきた医学・医療コンテンツである。続いて登壇した医学書院の早坂和晃氏は,創業80年を超える医学書専門出版社としての強みを紹介。「日本の医療ガイドラインに則り,第一線の医師・研究者をはじめとする執筆者に,企画,執筆,編集,校閲の各プロセスで協力を得て,内容の正確性,信頼性を担保している」と説明した。

今回の実証で提供されるのは,診断・治療に関する約4,000項目を収録し,医療機関で広く利用される国内最大級の総合診療データベース「今日の診療」に相当するコンテンツ。医学書院とNTTドコモビジネスが共同開発するRAG(検索拡張生成)の仕組みによって,AIの回答の根拠となった書籍の該当箇所を直接参照できるようにする。また,医学書院とNTTグループは別途,NTTグループの純国産大規模言語モデル(LLM)「tsuzumi」を活用した医療特化型LLMの構築も進めている。早坂氏は,「より安心して生成AIを利用してもらえる環境を提供し,実証を通じてその成果を確認したい」と,共同実証への抱負を語った。

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●写真 記者説明会に登壇した医学書院の早坂和晃氏

安全な基盤とAPI連携によるシームレスな体験

信頼できる情報を安全に医療現場へ届けるためのネットワーク・クラウド基盤の構築と,生成AIサービスとのAPI連携をNTTドコモビジネスが担う。続いて登壇した同社の福田亜希子氏は,本共同実証でめざすプラットフォームの特徴として,①信頼できる情報に基づく回答,②RAGによる出典の明確化,③医療特化LLM tsuzumiの開発,④医療現場で安心して使えるAI環境の4点を挙げた。

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同社は本実証に向け,医師が操作するインターフェースの裏側で,APIが医学書院のRAGシステム内にあるコンテンツに直接アクセスする仕組みを医学書院と共同で構築している(図1)。福田氏は,「ユーザーが普段使用している電子カルテなどの環境に組み込んで回答を得られるのがポイント」と説明した。今後は,機密性の高いカルテ情報を外部に出さずに処理する技術や,多くの病院で求められるオンプレミス(自施設内にサーバーなどを設置して運用する形態)環境での提供なども組み合わせ,安全な医療AIの社会実装をめざすと意気込みを語った。

 

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●図1 本プロジェクトで目指すサービスイメージ(福田氏のスライドより)

診療を止めないシームレスなUI

医療者が実際に操作するインターフェースには,全国180以上の病院で導入実績のある「ユビー生成AI」が活用される。開発元であるUbieの阿部吉倫氏は,これまで医療現場の業務効率化を支援してきた実績を紹介しつつ,「診療に必要な知識を根拠とともに届けることで,医療の質に貢献していく」と本協業の意義を語った。

続いて,本実証で用いる医療特化型AIを搭載した「ユビー生成AI」のデモンストレーションを同社開発責任者の原瀬翔平氏が行い,別の端末で調べ直す手間を省く一連の操作が披露された。多くの病院ではセキュリティ上の理由から,電子カルテ端末で外部インターネットに接続できない。今回の仕組みでは,電子カルテと同じ画面上から「ユビー生成AI」を起動し,診療の流れを大きく変えることなく医療情報を検索できる(図2)。

さらに,生成された回答には医学書院のコンテンツへのリンクが付与され,クリックすると回答の根拠となった一次情報へ遷移する。個人の端末を使用せず,日常の診療環境の中で情報の検索から根拠の確認まで行える操作性と,医療現場における安全かつ効率的なAI活用の可能性が示された。

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●図2 これまでと今回の検証との違い(原瀬氏のスライドより)

日本の医療知見を全国の患者へ

パネルディスカッションでは,「情報の信頼性」「安全な環境」「現場への実装」という観点で,各社の登壇者が意見を交わした。医学書院で医学編集を担当する青戸竜也氏は情報の信頼性について,専門家による執筆に加え,ファクトチェックや単位・数値の確認など,編集制作の過程で情報の正確性を徹底して確認してきたと強調。「蓄積してきた信頼できる情報を,AIを通じて医療現場で活用してもらえるよう,今回のプロジェクトに貢献したい」と意欲を示した。

議論の締めくくりには,実証フィールドとなるNTT東日本関東病院医療DX推進室の森崎裕氏が,臨床医の立場から期待の言葉を述べた。同氏は,「医学書院が数十年にわたり蓄積してきた知見を基にしたAIを,研修医や若手医師,地方で奮闘する開業医をはじめ幅広い医療者が使えるようになることは,日本全体で治療を受ける患者さんたちにとって必ずプラスになる」と,本プロジェクトが日本の医療にもたらす意義を強調した。

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●写真 パネルディスカッションの様子
左から中村真理子氏(NTT株式会社研究開発マーケティング本部),櫻井陽一氏(NTTドコモビジネス株式会社ビジネスソリューション本部),森崎裕氏(NTT東日本関東病院院長補佐,医療DX推進室室長),青戸竜也氏(株式会社医学書院常務取締役),西村里穂氏(Ubie株式会社医療機関事業本部長)。

詳しくは報道発表資料(PDF)をご覧ください。


参考文献
1) 医学書院.NTT株式会社、NTTドコモビジネス株式会社と協業基本契約を締結しました.2026.

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