医学界新聞プラス

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取材記事

2026.10.02

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●写真 石井伊都子氏

第11回日本薬学教育学会大会(大会長=大阪医科薬科大学・浦田秀仁氏:写真)が8月22~23日,「いまこそ薬学の再興,そして最高!!――みんなで薬学教育の基軸を語り合おう」をテーマに,大阪医科薬科大学阿武山キャンパス(高槻市)で開催された。

「医学界新聞プラス」では,石井伊都子氏(千葉大学)による特別講演1「6年制の羅針:過去を測り,未来を描く」の模様を報告する。

薬学6年制導入の軌跡と教育的成果

2006年に始動した6年制薬学教育は,医療用医薬品の複雑化やモダリティの多様化,医薬分業の進展に伴い,薬剤師に求められる責任と臨床能力が急激に高まったことを背景に導入された。6年制導入の大きな成果として, 22週間に及ぶ長期実務実習を通じて学生が患者と直接接することで,使命感や倫理観などのプロフェッショナリズムが確実に養われていると石井氏は成果を挙げる。また,現場の指導薬剤師の養成が進んだことで,かつては希薄だった臨床現場と大学が顔の見える関係性になったことや,多職種連携の実践,アウトカムベースの教育評価(ルーブリックの導入など)が定着した点を高く評価した。 

6年制導入後に顕在化した課題

一方で,制度開始から約20年が経過し,さまざまな課題が顕在化している現状にも言及した。石井氏は現在の薬学教育が抱える課題として,修学期間の延長による学生の経済的・時間的負担の増加をまずは指摘。さらに,教育内容の過密化と国家試験対策への偏重を挙げ,「大学が予備校化しているのではないか」との懸念を示し,国家試験の合格率のみが大学の評価基準となる風潮に警鐘を鳴らした。加えて,大学間・実務実習施設間の教育格差の拡大を問題視しており,実務実習において見学にとどまる施設と実践的な経験を積ませる施設とでは,学生が実習で得られる学びや経験にギャップがあり,学生の成長や医療人としてのモチベーションにも運頼みとも言える大きな差が生じていると述べた。 

そして最も深刻な課題として,基礎薬学や創薬研究の弱体化を強調した。学生が基礎科目を単なる国家試験対策の知識としてとらえてしまい,研究を通じて思考力を鍛える時間が減少していると指摘。未知の事象に対して「なぜそう言えるのか」と問い続ける学究的思考が失われつつあることに危機感を露わにした。 

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シームレスな教育体系の構築と調整型リーダーシップ

これらの課題に対する解決策として,石井氏は卒前から卒後へとつながるシームレスな薬学教育の導入を提唱する。卒業時に完成された薬剤師を求めるのではなく,大学教育ではサイエンスに基づいた正しい知識の理解と学究的思考の習得に重きを置き,卒業後の臨床研修を通じて現場での実践力を身につけるという役割分担の重要性を強調。しかし現状の薬剤師の研修制度は,研修に専念できる環境や財源の整備が不十分であり,今後の大きな課題であると指摘した。 

さらに,新型コロナウイルス感染症などの新興感染症や,生成AIをはじめとするDX社会における薬剤師の役割にも言及した。コロナ禍において,薬剤師は法的根拠や最新情報を正確に把握し,院内のルールを構築・アップデートする役割を担ったと説明。多職種と密接にかかわる薬剤師こそが独断型ではない調整型リーダーシップを発揮し,チーム医療を牽引すべきであると力説した。生成AIに対しても,まずはリテラシーを高めて安全に利用できる素養を大学教育で培い,最終的には新たな価値を創造できる人材を育成していく必要があると述べた。 

次世代の創薬を担う薬剤師育成に向けて

最後に石井氏は,今後の薬学の発展に向けて「循環型創薬」の概念を提唱した。臨床現場の課題を抽出して基礎研究へと還元し,再び現場へと循環させるプロセスにおいて,薬剤師の視点が不可欠であると説く。最先端の知見を自ら学び,それを目の前の患者に還元していく姿勢こそが医療の根底にあると述べ,継続的な自己研鑽や研究を続ける意思を持った薬剤師を育てたいと力説した。それこそが未来の薬学を切り拓く鍵になると語り,講演を締めくくった。

現場で真に活躍できる薬剤師をいかに育成していくかを議論した座談会記事も併せてご覧ください。 

薬剤師の臨床能力を育むために
登壇者:平田收正氏,亀井美和子氏,石井伊都子氏