知識がつながる抗菌薬
まるわかり感染症診療
抗菌薬で迷わないための「考え方」を身につけよう。“なんとなく処方”からの卒業!
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抗菌薬選択における“なんとなく処方”からの卒業! 「バイキン屋。」としても活躍する著者が「病原体」「感染臓器」「宿主因子」の三方向から、抗菌薬と感染症をわかりやすく解説します。1冊を通して読むことで、感染症診療の基礎知識だけでなく、応用可能な考え方も身につきます。臨床での疑問を取り上げたQ&A、細かな情報が詰まった400もの注釈も必見です。
* 本書は「ジェネラリストNAVI」で連載された「抗菌薬ものがたり──エピソードで学ぶ感染症診療の歩きかた」に加筆・修正して、まとめたものです。
| シリーズ | ジェネラリストBOOKS |
|---|---|
| 監修 | 岡本 耕 |
| 著 | 伊東 完 |
| 発行 | 2026年03月判型:A5頁:304 |
| ISBN | 978-4-260-06548-1 |
| 定価 | 4,400円 (本体4,000円+税) |
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序
医師のように,学び続けることが職業的に要請される立場にいると,「ラーニング・ピラミッド」と呼ばれる概念を何度も目にすることになります。講義を聴いたり,本を読んだりするよりも,グループで討論したり,他者に教えたりしたほうが,学習内容がより深く定着する──お馴染みのモデルです。このモデルが示す本質は,単に学習方法の優劣というよりかは,むしろ「知っていること」と「理解していること」の間には想像以上に大きな隔たりがあるという点にあるのではないかと,筆者は考えています。
筆者が医師3年目で東京大学医学部附属病院 感染症内科に在籍していた頃,師匠にあたる岡本耕先生から「君は感染症診療を体系的に学ばないといけない」と繰り返し言われていました。しかし,体系的に学ぶというのは,いざ実践しようとすると驚くほど難しい。感染症診療をAからZまで網羅している勉強会は,省庁や学会レベルのものから,病院や診療科レベルのものまで数多く存在します。特に現代は,オンライン開催が当たり前になり,地理的な制約を抜きに学べる,きわめて恵まれた時代です。
では,学ぶこと自体は果たして容易になったのでしょうか。残念ながら,必ずしもそうとはいえません。どれほど質の高い講義であったとしても,どんなに主体的にかかわったとしても,「聞いたことがある」という耳学問のレベルを超えることは至難の業です。知識を理解したレベルにまで昇華させることの難しさは,むしろ情報量の増大とともに,昔以上に顕在化しているようにすら思います。
筆者自身,学生時代から感染症分野の勉強会には積極的に参加してきたつもりでした。それでも岡本先生の目には体系的とは言いがたい学びに映っていたのでしょう。では,知識を体系的に身につけるためには何が必要なのでしょうか。
1つの方法としては,ラーニング・ピラミッドに忠実に,勉強会を主催する側に回ることが挙げられます。筆者が学生だった頃,当時は医師7~8年目であった坂本壮先生が精力的に勉強会を開催され,回を重ねるごとに知識が深化していく様子を,リアルタイムで目にしていました。あれから10年……現在もなお続くその勉強会の継続力とアップデート力には,ただただ敬服するばかりです。もっとも,これを成し遂げるには膨大なエネルギーが必要で,体力に自信のない筆者には残念ながらとても真似できるものではありません。坂本先生の勉強会の集大成ともいえるのが,不朽の名作『救急外来ただいま診断中!』(中外医学社,2015)であり,この本に育てられた研修医も少なくはないでしょう。
やがて筆者は,体系化された学びを十分には得られないまま,東大感染症内科を後にしました。その後,筑波大学附属病院 病院総合内科でホスピタリストとして勤務し,内科専門医を取得した頃のこと──医学書院の『medicina』編集デスクであった山内梢氏,前田健次氏から,「新たに立ち上げるポータルサイト『ジェネラリストNAVI』で,感染症診療の連載を始めてみませんか」とお声がけをいただきました。これも何かのご縁。岡本先生に監修をお願いすることをご了承いただいたうえで,結果として当初の想定をはるかに超える長期連載が始まることになりました。
振り返ってみると,岡本先生の添削は,なかなかに厳しいものでした。自分がこれまで断片的に学んできた知識を,白紙の状態から20万字のストーリーとして再構成し,誤りがないだけでなく,ロジックとしても淀みなく刻み込んでいく。単に正しいだけでは決して満足できない世界です。添削済み原稿が真っ赤になって返ってくるたびに,緊張したり,落ち込んだり……まれに「悪くない」と褒められると有頂天になったりもしていました。同時に,執筆に没頭した数年間は筆者にとってきわめて幸福な時間でもありました。これほど精緻で妥協のない添削は,学習者がどれほど望んでも受けられるものではないからです。今回の経験に限らないのですが,人生において必要なタイミングで最も相応しい師匠に出会え,しかも特訓までつけていただいてきたことは,筆者にとってきわめて幸運な巡り合わせだったというほかありません。
連載を書籍化するにあたって,全体を読み返していて気がついたのですが,本書は筆者が岡本先生から受けた稽古の再現になっているように感じました。理屈っぽくて回りくどい表現に,お茶を濁したようなずるい表現……その1つひとつが岡本先生との対話,そして苦悩の産物です。感染症のストーリーであるのみならず,筆者自身の青春のひとコマでもあるということです。関心のある箇所だけを拾い読みできるよう配慮したつもりは,正直にいってありません。真剣勝負なので,そこまで配慮できなかったというべきでしょうか。駆け出しの若い医師が,ベテラン医師のもとで稽古を受けて少しずつ成長する。冒頭から読み進めていただけると,もしかしたら,そういった光景が浮かんでくるかもしれません。
2026年2月
伊東 完
目次
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序
本書に出てくる主な抗菌薬・抗真菌薬
本書に出てくる略語
1章 抗菌薬と病原体
1 まずはβラクタム系だけを勉強するべし
2 細菌はグラム陽性球菌・グラム陰性桿菌・嫌気性菌の3グループだけをまず覚えるべし
【ペニシリン系】
3 ペニシリンGといえば,ブドウ球菌以外のグラム陽性球菌
4 ペニシリンGはグラム陰性桿菌が苦手
5 アンピシリンは大腸菌制圧への第一歩
6 すべてがうまくいくかにみえたアンピシリン・スルバクタム
7 ようやくグラム陰性桿菌を克服か!? タゾバクタム・ピペラシリン
【セフェム系】
8 あっさりとブドウ球菌をカバーするセファゾリン(第1世代セフェム系)
9 大腸菌ともそこそこ戦えるセファゾリン(第1世代セフェム系)
10 幅広いグラム陽性球菌・グラム陰性桿菌をカバーするセフトリアキソン(第3世代セフェム系)
11 院内感染症までカバーできるセフェピム(第4世代セフェム系)
12 ペニシリン系とセフェム系の総復習!
13 セフェム系としては規格外なセフメタゾール
14 余力があれば知っておきたいセフタジジム&アズトレオナム
【カルバペネム系】
15 使いどころをわきまえたいカルバペネム系
【経口抗菌薬】
16 経口抗菌薬の基本を押さえよう
17 ST合剤は第3世代セフェム系に匹敵する
18 キノロン系は第4世代セフェム系の貴重な代役だ!
19 疑似タゾバクタム・ピペラシリンを作りたい
20 嫌気性菌キラー,メトロニダゾール&クリンダマイシン
【抗MRSA薬】
21 MRSA感染症にはとりあえずバンコマイシンを使うべし
22 バンコマイシン以外の抗MRSA薬
23 MRSA感染症にST合剤やクリンダマイシンを使ってよいのか
【その他の抗菌薬】
24 アミノグリコシド系抗菌薬はいつ使うのか
25 マクロライド系,テトラサイクリン系抗菌薬はいつ使うのか
2章 感染臓器
1 感染症診療の3大要素
【皮膚軟部組織感染症】
2 蜂窩織炎の要点
3 蜂窩織炎の誤診パターン
4 皮膚軟部組織感染症の起因菌バリエーション
5 皮膚軟部組織感染症の起因菌を同定するのは難しい
6 蜂窩織炎で抗菌薬以外にすべきこと
7 繰り返す蜂窩織炎をどう予防するか
8 蜂窩織炎のなかからどう壊死性筋膜炎を拾い上げるか
9 意外と奥が深いクリンダマイシン
10 市中感染型MRSAへの抗菌薬投与の考え方
【尿路感染症】
11 尿路感染症の要点
12 尿路感染症を「尿路感染症」と呼ぶべからず
13 男性の「尿路感染症」には眉に唾をつけて臨むべし
14 膀胱炎や腎盂腎炎も意外と診断が難しい
15 腎盂腎炎で画像検査を考えるタイミング
16 ローカルファクターを意識するべし
17 尿路感染症にアンピシリン・スルバクタムはいまひとつ?
18 セフトリアキソンの副作用を掘り下げる①
19 セフトリアキソンの副作用を掘り下げる②
20 尿路感染症とグラム陽性球菌
21 繰り返す尿路感染症への処方箋
【呼吸器感染症(かぜ・肺炎)】
22 かぜでつまずかないために①
23 かぜでつまずかないために②
24 溶連菌咽頭炎と伝染性単核球症
25 肺炎の要点
26 肺炎は意外に診断が難しい
27 肺炎なら血液培養は不要かもしれないが
28 喀痰グラム染色は培養検査の下位互換にあらず
29 薬剤耐性はインフルエンザ桿菌に学べ
30 肺炎にはアンピシリン・スルバクタムか? セフトリアキソンか?
31 非定型肺炎にどの抗菌薬を使うか
32 治らない肺炎(non-resolving pneumonia)
33 市中肺炎予防としての肺炎球菌ワクチン
34 誤嚥性肺炎のtips
【腹腔内感染症】
35 腹腔内感染症の要点
36 腹部触診では自発痛と圧痛を区別せよ
37 血液検査だけでは見逃されがちな腹腔内感染症
38 嫌気性菌をどこまで気にするべきか
39 意外と悩ましい腹腔内膿瘍に対する抗菌薬治療期間
40 術後患者のドレーン排液は定着菌がたくさん
41 特発性細菌性腹膜炎とは何なのか
42 急性膵炎で抗菌薬を使うべきか
43 感染性腸炎で足をすくわれないために
44 旅行者下痢症で慌てないための処方箋
45 非チフス性サルモネラと食品取扱業
46 Clostridioides difficile 腸炎の国内外事情
【菌血症・血流感染症】
47 菌血症バンドル①──黄色ブドウ球菌
48 菌血症バンドル②──カンジダ
49 コアグラーゼ陰性ブドウ球菌菌血症
50 血液培養をめぐる諸問題
51 中心静脈カテーテル関連血流感染症
52 血管内デバイスと菌血症
53 血管内デバイスをいつ再挿入するか
54 たまに見かける感染性動脈瘤
55 感染性心内膜炎を疑ったら
56 感染性心内膜炎の治療レジメンは複雑
57 グラム陰性桿菌による持続菌血症で考えたいこと
【骨関節感染症】
58 化膿性脊椎炎の何が難しいか
59 穿刺しないと始まらない化膿性関節炎
60 関節炎の裏に潜む性感染症
61 人工関節感染症の治療レジメンも複雑
【中枢神経感染症】
62 中枢神経感染症と髄液移行性
63 隠れた中枢神経感染症にご用心
3章 宿主因子
1 免疫不全者の感染症の全体像
【発熱性好中球減少症】
2 発熱性好中球減少症で多い病原体と怖い病原体
3 発熱性好中球減少症で見落としがちな感染巣
4 発熱性好中球減少症はいつまで治療を続け,どう治すか
5 こんな患者での発熱性好中球減少症にご用心
6 G-CSF製剤は発熱性好中球減少症に有用か
【液性免疫】
7 液性・細胞性免疫の成り立ち
8 液性免疫障害が問題になる背景因子
9 液性免疫障害で問題になる病原体
10 脾臓摘出後重症感染症(OPSI)
【細胞性免疫──細菌とウイルス編】
11 細胞性免疫障害が問題になる背景因子
12 細胞性免疫障害で問題になる病原体
13 プライマリ・ケアでのHIVの基本知識
14 免疫再構築症候群で考えるべきあれこれ
15 CMV感染症では用語の定義を厳密に
16 VZV感染症で見逃したくない合併症
17 院内感染するレジオネラにご用心
18 さまざまな年齢層で注意したいリステリア感染症
19 結核・非結核性抗酸菌症で注意すべきこと
20 免疫不全者の結核・非結核性抗酸菌症
21 ノカルジアはアクチノミセスとの比較で学ぶべし
【細胞性免疫──真菌と寄生虫編】
22 ニューモシスチス肺炎の診断プロセスを見直す
23 ざっくり学ぶ抗真菌薬
24 深在性カンジダ症はいつ警戒するべきか
25 アスペルギルス感染症では病型を意識するべし
26 HIV感染症の有無次第なクリプトコッカス感染症
27 日本でもみることがある糞線虫感染症
索引
監修者・著者紹介




