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[第3回]ラジオ波焼灼療法(RFA):肝
『IVRマニュアル 第3版』より
山門 亨一郎
2024.05.10
IVRマニュアル 第3版
医療における不可欠な治療法として,日本においても発展・普及し,有用な治療手段として定着したIVR(interventional radiology)。『IVRマニュアル 第3版』は,そんなIVR手技を横断的,網羅的に解説した定番書の改訂第3版です。新たなIVR手技を多く取り入れるとともに,肝細胞癌に対する肝動脈塞栓術,緊急出血に対する動脈塞栓術といった基本的なIVR手技についても情報を最新のものにアップデートしています。
「医学界新聞プラス」では,本書の中から「バルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(BRTO)」「経皮的エタノール注入療法(PEIT):肝」「ラジオ波焼灼療法(RFA):肝」の3項目をピックアップして,内容を紹介します。
適応
○ 肝細胞癌または転移性肝癌。
○ 腫瘍の大きさ:3cm以下が望ましい。
○ 腫瘍個数:3個以内が望ましい。
○ 画像(超音波またはCT)で腫瘍が確認できる。
禁忌
○ 凝固異常:一般的に血小板数50,000/μL以下,PT-INR 1.5以上。
○ 胆管手術後:肝膿瘍の危険性が高まる。
○ 大量腹水:腹水の存在だけで禁忌とは言えないが,腹水が多いと穿刺により肝臓が移動するので,出血や誤穿刺の原因となる。
術前準備
○ CTまたは超音波で穿刺経路を確認する。造影CTで穿刺経路に血管や腸管がないことを事前に確認しておくことが重要。1回の焼灼で焼灼領域が腫瘍を囲めないと考えられる場合は,効率的に腫瘍を焼灼できる穿刺部位を検討する。
○ 超音波またはCT。
○ ラジオ波(RF)電極,RFジェネレーター,対極板。
○ 局所麻酔(0.5%リドカイン)。
○ メス。
○ PEIT針:先端孔のものと複数の側孔を設けているものがある。
○ 点滴ルートを確保し,必要に応じて以下のような前投薬を行う。
1)鎮静薬:ヒドロキシジン(25mg)。
2)副交感神経遮断薬:アトロピン(0.5mg)。
3)鎮痛薬:ペンタゾシン:(15~30mg)。
4)デクスメデトミジン:成人では6μg/kg/時の投与速度で10分間静脈内へ持続注入し(初期負荷投与),続いて患者の状態に合わせて,至適鎮静レベルが得られるよう,維持量として0.2~0.7μg/kg/時の範囲で持続注入する(維持投与)。
5)抗菌薬。
手技(図1,2)
①術野消毒
②対極板を大腿部や背部などに配置
③穿刺部を局所麻酔
④RF電極の挿入
1)超音波法:超音波で腫瘍が確認できる場合に用いる。最も一般的。横隔膜下に腫瘍が存在する場合など,超音波で確認が困難な場合はCT法を用いる。
2)CT法:通常のCT撮影を用いる方法と,CT透視を用いる方法がある。後者はリアルタイムで穿刺が可能であるため,手技時間が短く正確に穿刺できる。焼灼領域を予想して電極を穿刺することが肝要。
⑤ラジオ波発生 電極とジェネレーターを接続し,RFを電極先端から発生させる。
⑥RF電極の抜去 電極を抜去する際は穿刺領域を焼灼しながら抜去(tracking ablation)。
⑦複数穿刺を行う場合は,④~⑥を繰り返す(overlapping法)。
⑧合併症の確認 超音波またはCTで確認する。
手技のポイント
◎肝腫瘍が大腸や,胃,十二指腸といった腸管に接する場合には,腸管損傷を生じる可能性がある。このような場合には,腸管と肝の間に水やヒアルロン酸といった液体を注入したり(hydrodissection),バルーンを挿入して腸管と腫瘍の距離を十分確保することが大事である。
◎再発を防止するうえで重要なのは腫瘍の周囲5mm以上のablative marginを取ることである。
◎3cmを超えるような腫瘍では肝動脈塞栓術の併用が推奨される。
◎腫瘍が肝表面に存在するときは,なるべく腫瘍を直接穿刺しないで,周囲の肝実質から焼灼するようにする。腫瘍を直接穿刺することで播種の可能性が高まるからである。


術後管理
○ バイタルサイン測定。
○ ベッド上安静。
○ 翌日肝機能チェックを行う。
成績
○ 肝細胞癌患者の5年生存率は,肝機能,腫瘍径,腫瘍個数により異なるが,3cm以下であれば,62~76%。3.1~5cmで51%1, 2)。
○ 大腸癌転移患者の5年生存率は47%までの成績が報告されているが,患者,腫瘍背景により異なる3)。
合併症4)
○ 合併症の頻度は10%以下である。
○ 死亡率は0.5%程度。死亡の原因となりうる合併症の中で,最も多いのは出血である(<2%)。血小板数が少なめであったり,PT-INRが延長していたりする症例では,血小板輸血や新鮮凍結血漿を前もって輸血しておく必要がある。
○ 他の合併症として,腹部感染症(<2%),胆管損傷(1%),肝不全(<1%),腹部臓器損傷(<0.5%)などがある。
文献
1) 日本肝癌研究会:肝細胞癌に対するラジオ波焼灼療法(腫瘍の数,腫瘍径,Child-Pugh分類別)の累積生存率.第23回全国原発性肝癌追跡調査報告(2014-2015).pp190-191, 2021
2) Yamakado K, et al:Early-stage hepatocellular carcinoma:radiofrequency ablation combined with chemoembolization versus hepatectomy. Radiology 247:260-266, 2008
3) Solbiati L, et al:Small liver colorectal metastases treated with percutaneous radiofrequency ablation:local response rate and long-term survival with up to 10-year follow-up. Radiology 265:958-968, 2012
4) Takaki H, et al:Frequency of and risk factors for complications after liver radiofrequency ablation under CT fluoroscopic guidance in 1500 sessions:single-center experience. AJR Am J Roentgenol 200:658-664, 2013
IVRマニュアル 第3版
“シンプルで読みやすい” IVRに関わる医療職必携の1冊
<内容紹介>IVR手技を横断的、網羅的に解説した定番書の改訂第3版。今回の改訂では、新たなIVR手技を多く取り入れるとともに、肝細胞癌に対する肝動脈塞栓術や、緊急出血に対する動脈塞栓術といった基本的なIVR手技も最新の情報にアップデートした。IVRに携わる医師、診療放射線技師、看護師必携の1冊。
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