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『医師による医師のためのChatGPT入門——臨床がはかどる魔法のプロンプト』より

連載 大塚篤司

2024.06.07

ChatGPTの登場後,難しそうと敬遠する医師がいる一方で,日常業務を効率化し生産性を上げている医師もいます。書籍『医師による医師のためのChatGPT入門——臨床がはかどる魔法のプロンプト』ではChatGPT初心者,あるいは苦手意識のある医師や研修医をはじめ看護師など医療従事者の皆様に向けて,基本的な使い方から日常業務での実践的な活用法に至るまで,実際に使っているプロンプト(指示文)の紹介なども交えながらやさしく解説します。

「医学界新聞プラス」では本書のうち,「初級編 ChatGPTは学会抄録を作れるのか?」,「中級編 ChatGPTを使ってガイドラインを読み解く」,「実践編 学会発表のスライド作成①」の内容を,全3回でご紹介します​​​​​​。

ChatGPTを使ってガイドラインを読み解く

ChatGPTが得意な作業の一つが要約だ.読み解くのに時間がかかる診療ガイドラインは,ChatGPTに解説させるのが早い.

アイさん,こんにちは.ChatGPTの有料版に変えてみたかな? Example Image
Example Imageはい! 恐る恐るChatGPT Plusにアップグレードしてみました!
そんなに怖がらなくても大丈夫だよ(笑)
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Example Image でも,研修医にとって毎月20ドルは大きいです.新NISAの積立もありますし
大丈夫.ChatGPTの有料版は新NISA以上に返ってくるものが大きい
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Example Image 本当ですか? S&P500よりもですか?
うーん,それはどうかわからない(笑).ChatGPTなどの生成AIは,課金したら勝手に仕事してくれるわけではない.自分で使いこなしていかなくちゃいけない
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Example Image わかりますけど,私はできる限り楽をしたいです!
ぼくもそうだよ.無駄な作業や誰でもできるルーティンには時間をかけずに仕事を進めていきたいと思ってる.そのためにChat­GPTを駆使しているんだよ
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Example Imageわかりました.楽するために,頭とAIを使うんですね
そのとおり! Example Image
Example Imageそれで今日はなにを教えてくれるんですか?
ChatGPTを使って診療ガイドラインを読み解く方法を教えます
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Example Image 診療ガイドラインですか.疾患によっては内容が分厚いですよね
うん.診療ガイドラインは,その疾患に関わる医師が必ず読んでおくべき資料の一つだ.最初から最後まで,まずは通読しておくのが望ましい.ただ,診療ガイドラインの内容をすべて暗記するのは難しい.必要なときに必要な情報を取り出したい
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Example Image はい.正直なところ,私は全部読めてないです.実はいま,皮膚血管肉腫の患者さんの治療が困っていて,どうすればいいかガイドラインを調べていたんです
そんなときこそChatGPTだよ Example Image
Example Image使いかたを教えてください!
有料版のChatGPT,つまりGPT-4に診療ガイドラインのPDFをアップロードして質問をしてみよう
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Example Image プロンプト
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皮膚血管肉腫の一般的な治療法を教えてください.
Example Image ChatGPT
皮膚血管肉腫の治療にはいくつかの方法があります.以下にその主な治療法を挙げます.

1. パクリタキセル:頭部や顔面の血管肉腫患者におけるパクリタキセルの使用が効果的であることが報告されています.特に,手術が不可能な血管肉腫に対して週1回のパクリタキセル治療が行われることがあります[”].
2. 切除術:頭部や顔面の血管肉腫に対する治療成績に関する日本の研究では,切除術が一般的な治療法として使用されています[”].
3. 免疫療法:癌免疫療法に使用されるインターロイキン -2と,インターロイキン -2活性化リンパ球による治療も,一部の悪性血管内皮細胞腫に効果があるとされています[”].
4. 抗血管新生療法:ベバシズマブ(Bevacizumab)やソラフェニブ(Sorafenib)などの抗血管新生療法が,一部の血管肉腫患者において用いられています.これらの薬剤は,血管新生を抑制することで腫瘍の成長を阻害します[”].
5. 放射線療法:放射線療法は頭部や顔面の血管肉腫の治療においても用いられます.日本の研究機関による報告によれば,放射線療法はこのタイプの血管肉腫に対して効果的である可能性が示唆されています[”].
Example Image とても簡潔にまとまっていて,わかりやすい!
そうだね.診療ガイドラインの原文はもちろん詳しく書いてあるけれども,そこから簡潔にまとめて説明するのはAIが優れているExample Image
Example Imageもっと細かい質問でも大丈夫ですか?
Example Image プロンプト
ガイドラインではパクリタキセルと放射線治療のどちらを推奨していますか?
Example Image ChatGPT
ガイドラインに関する文献では,パクリタキセル(PTX)と放射線治療の併用についての具体的な推奨は明確に示されていませんが,いくつかの関連情報があります.

1. PTXと放射線治療の併用:PTXを放射線治療と併用した場合,70〜80mg/m2の投与量で重篤な有害事象が発生し,目標線量に到達できないことが報告されています.しかし,50〜60mg/m2に減量することで,重篤な有害事象が発生せずに放射線治療を完遂できたとの報告もあります.これは,投与量を患者の状態に応じて適時調整することの重要性を示しています[”].
2. タキサン系抗がん剤と放射線治療の併用の効果:Fujisawaらによる2014年の多施設共同後方視的研究では,タキサン系抗がん剤(DTX 16例,PTXへの変更が1例)と放射線治療を併用したグループと,外科的切除と放射線治療を併用したグループを比較し,タキサン併用グループで有意に5年生存率が良好であったことが報告されています[”].

これらの情報に基づくと,パクリタキセルと放射線治療の併用は,適切な投与量と患者の状態に応じた管理の下で行われる場合,有効な治療選択肢である可能性があります.ただし,これはガイドラインでの明確な推奨というよりは,関連する研究結果に基づくものです.最終的な治療方針は,患者の具体的な状況に応じて医師が決定する必要があります.
Example Imageちゃんとガイドラインを読み込んで回答を生成してくれますね
うん.ただし,注意も必要だよ.ChatGPTが出した回答が正しいものかどうか,原文に戻って確認する作業も必要だよ
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Example Image えー,それなら最初からガイドライン読むのと変わらないじゃないですか
そんなことはないよ.元の資料を確認することは必要な作業だし,どんな資料でも原著論文にあたることを忘れてはいけない.それに,ChatGPTの回答からキーワードを見つけ出して,ガイドラインで検索をかけたら作業は早い Example Image
Example Imageわかりました.ところで,診療ガイドラインのPDFをわざわざアップロードしないで,そのままChatGPTに質問したらだめなんですか?
では,ガイドラインを読み込ませずにやってみよう Example Image
Example Image プロンプト
皮膚血管肉腫の一般的な治療法を教えてください.
Example Image ChatGPT
皮膚血管肉腫(アンギオサルコーマ)の治療法は,その発生の場所,大きさ,広がり,および患者の全体的な健康状態によって異なります.一般的な治療法には以下のものがあります:

1. 外科手術:初期段階の皮膚血管肉腫では,腫瘍とその周囲の健康な組織を含めて切除する手術が一般的です.これにより,再発のリスクを減少させることができます.
2. 放射線療法:放射線療法は,手術が困難な場所にある腫瘍や,手術後の再発を防ぐために使用されることがあります.また,腫瘍の大きさを縮小するための前処置としても用いられます.
3. 化学療法:進行性または再発性の血管肉腫には,化学療法が用いられることがあります.これは,がん細胞を殺すために薬剤を使用する治療法です.
4. 標的療法:特定のがん細胞の成長に関与する遺伝子やタンパク質を標的とする薬剤を用いる治療法です.これにより,正常な細胞への影響を最小限に抑えながら,がん細胞の成長を抑制することができます.
5. 免疫療法:免疫系を活性化させ,がん細胞を攻撃するように促す治療法も研究されています.

治療計画は,個々の患者の状況に合わせてカスタマイズされるため,専門の医師の診断と指導が非常に重要です.また,治療法の選択は,新しい研究成果や治療法の開発により変化することがありますので,最新の医学的情報を参照することが重要です.
どうだろう? この回答だと,実際の患者さんを目の前にして役に立つ情報とはいえないんじゃないかな
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Example Image そうですね.一般的なことしか書かれていませんね
診療ガイドラインを読ませて,その内容をベースに臨床の質問をするのがよい使いかただと思う

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ここがポイント!
GPT Plusに診療ガイドラインを読み込ませ,効率的に知識を抽出しよう.


 

Example Imageおーつか先生のプロンプト

(ChatGPTにガイドラインをアップロードし,あなたが聞きたい内容をなんでも質問してみよう)
〇〇(疾患名)の治療に関して,第1選択が無効であった場合の第2選択を教えてください.


 

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ChatGPTを使いこなせば、あなたの臨床がもっと楽に。もっと効率よく。

<内容紹介>ChatGPTの登場後、難しそうと敬遠する医師がいる一方、日常業務を効率化し生産性を上げている医師もいる。本書は、ChatGPTに苦手意識のある医師や研修医に向けて、ChatGPTを中心とした生成AIの基本的な使い方から日常業務での活用法に至るまで具体例とともに解説する。おーつか先生から研修医・花咲アイさんへのレクチャー形式で展開。コピペでそのまま使える、著者秘伝のプロンプトを集めたWeb付録付。

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