医学界新聞

寄稿 黒木 春郎

2020.06.01



【視点】

新型コロナウイルス後のオンライン診療の在り方

黒木 春郎(医療法人社団嗣業の会 外房こどもクリニック 理事長/日本遠隔医療学会オンライン診療分科会会長)


 日本を襲った新型コロナウイルス感染拡大への対策として,オンライン診療の非対面性が評価され,時限的であれ制度面でもオンライン診療への規制が緩和された。しかしこれは,世界ではすでに当然の流れである1~3)

 日本でなぜオンライン診療に厳し過ぎる規制がかけられ,実用インフラ整備に至らずに来てしまったのか,これについては今後再考を要する。現在の「コロナ禍」の到来で,新型コロナウイルスと戦うツールの未整備に歯噛みする思いの方もあっただろう。

 さて,この緊急時に多くの医師がオンライン診療に取り組み始めている。オンライン診療が実際に導入される中で,これまでのような架空の(必ずしも経験が多くない人が制度設計の議論をしてきた)検討ではなく,事実に基づいたオンライン診療の普及への足固めがなされることを期待する。

 4月10日の厚労省事務連絡で初診からオンライン診療が認められることになった。連絡文面では「電話や情報通信機器を用いた診療」となっているため,これを「電話での診療」に矮小化されたと見る向きもある。しかし,この連絡は明らかにテレビ電話を用いるオンライン診療を念頭に置いたものである。そして早速,多くの医療機関がオンライン診療を取り入れ始めた。

 現在,オンライン診療を取り入れるメリットは3つある。1つ目は,コロナ疑い患者さんを初診から非対面で診てトリアージする機能である。2つ目は,慢性疾患の方の非来院診療である。3つ目は,生活の変化に伴って急増する精神科疾患への対応である。開業医にとって来院患者数の減少をオンライン診療への積極的誘導でカバーすることが経営上重要になる。

 オンライン診療とオンライン服薬指導とは本来セットとなるものである。しかし薬機法改正のタイミングなどもあり,オンライン服薬指導は本年9月よりの施行と決まっていた。その中で今回,時限的に解禁となり,一足早くオンライン服薬指導が実現した。薬局の残薬管理や服用忘れ防止など,きめ細やかなサービスに期待したい。

 新型コロナウイルス終息後には,制度を整備しオンライン診療とオンライン服薬指導を一気通貫的に実現させる必要がある。今年の初めまで,全国でオンライン診療を実施している医療機関は1200余りだった4)。今後はそれが桁違いの数へと伸びることが予想される。オンライン診療を新型コロナウイルスと共に終息させずに全診療科的に必要な時にすぐに使える診療の1つの形態として常備常設できるよう,渦中にある今から準備していきたい。

参考文献・URL
1)CDC. Interim Infection Prevention and Control Recommendations for Patients with Suspected or Confirmed Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) in Healthcare Settings. 2020.
2)Greenhalgh T, et al. BMJ. 2020[PMID:32213507]
3)Jennifer M. NEJM Catal. 2020.
4)日本医療ベンチャー協会.「全国オンライン診療実施医療機関リスト」の公開について.2020.


くろき・はるお氏
1984年千葉大卒。千葉大医学部教員を経て2005年に千葉県いすみ市に外房こどもクリニックを開業。18年日本オンライン診療研究会設立。19年日本遠隔医療学会オンライン診療分科会に発展的に合流。同年会長に就任。

開く

医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。

医学界新聞公式SNS

  • Facebook