医学界新聞

2020.01.20



第3回せりか基金賞授賞式開催


 せりか基金は,漫画『宇宙兄弟』(講談社)の登場人物・伊東せりかが作中でALSの治療法開発を行っていることから名付けられた研究助成基金で,2017年に立ち上げられた。毎年,寄付金やチャリティーグッズの売上金をもとに「せりか基金賞」としてALS研究に助成を行っている。第3回となるせりか基金賞授賞式が2019年12月13日,浜離宮朝日ホール(東京都中央区)にて開催された。授賞式は堅苦しい雰囲気を排し,研究者や患者,支援者らが集まって和気あいあいとした雰囲気で例年開催されている。「イメージはアカデミー賞」とはせりか基金代表の黒川久里子氏の言だ。

 3回目となる今回は,100人を超える応募者の中から3人の受賞者が誕生した。審査員長の井上治久氏(京大)から各研究の講評とともに受賞者が発表された。第1位は須貝章弘氏(新潟大)の研究「天然変性領域を欠くTDP-43アイソフォームのALS病態抑制効果の検証」が受賞となった。第2位は,矢野真人氏(新潟大大学院)の「RNA結合蛋白質解析が成せるALS分子病態の解明」および南山素三雄氏(滋賀医大)の「抗体治療と細胞移植治療を組み合わせたALSに対する新たな治療法の研究」がそれぞれ受賞した。受賞者らには,賞金と副賞の『宇宙兄弟』全巻,複製原画が贈られた。受賞者スピーチの中で南山氏は「第1回から応募して,やっと念願がかなった」と笑いを誘いつつ喜びを伝えた。また,第2回の受賞者らによるこの1年の活動報告も行われ,せりか基金の輪の広がりが示された。

 賞の贈呈後には『宇宙兄弟』作者の小山宙哉氏からのメッセージビデオの上映,さらにALS患者や支援者らによるスピーチが続いた。支援団体「WITH ALS」を主宰する武藤将胤氏とオリィ研究所の吉藤オリィ氏は視線を使った意思伝達装置「OriHime eye」と音声合成プラットフォーム「コエステーション」を組み合わせてALS患者の発話を助ける「ALS SAVE VOICE」プロジェクトを紹介。さらには脳波を使った意思伝達装置の開発も報告され,今後の活用に向けた期待の声がフロアから上がった。

写真 第1位で受賞した須貝章弘氏(右)。
せりか基金代表・黒川氏へのインタビュー記事が『BRAIN and NERVE』誌71巻11号に掲載されました。

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