医学界新聞

2018.09.24



第28回日本看護学教育学会開催


 日本看護学教育学会第28回学術集会(会長=神奈川県立保健福祉大・白水眞理子氏)が8月28~29日,「看護実践力をはぐくむディープ・アクティブ・ラーニング」をテーマに,パシフィコ横浜(横浜市)で開催された。主体的な学びを促すべく広まったアクティブ・ラーニングの効果を高めるために教員ができる工夫は何か。シンポジウム「看護基礎教育におけるアクティブ・ラーニング」(座長=聖路加国際大大学院・奥裕美氏,神奈川県立保健福祉大・水戸優子氏)では,アクティブ・ラーニングを実践する3人のシンポジストがそれぞれの教育実践例を紹介し,その知を共有した。

主体的な学びを促す授業づくりをめざして

 アクティブ・ラーニング普及に伴い,教員の在り方は「壇上の賢人」から寄り添い学びをガイドする「ファシリテーター」へと変化した。京大病院で卒前・卒後の看護教育を担う内藤知佐子氏は,場づくりと発問力に焦点を当ててファシリテーターに必要なスキルを説明した。場づくりではその日の授業に合わせたアイスブレイク導入を助言。発問力では「教員自身の判断スイッチをオフにして傾聴する」,「学生が確実に見えているものから質問する」ことを意識すべきと指摘した。氏は,「看護師は寄り添うのが生業。教育でも学生に寄り添い,縁の下の支援者になってほしい」と話した。

 緒方巧氏(梅花女子大)は,協同学習によるアクティブ・ラーニングについて,事前学習から授業・演習,評価,事後学習までの段階を学生がインプットとアウトプットを繰り返しながら再考していく授業デザインを例示した。授業前の仕込みとして事前課題の個人学習(インプット)を行い,授業ではThink-Pair-Shareなどの協同学習の技法を用いて発表(アウトプット)し合うことで多角的思考を学べるという。さらに,ジグソー法による基礎看護技術演習では学生の技術修得や学習意欲,根拠の理解,表現力などが高まったとの調査を紹介。「協同の意義を体験的に学び成長することで看護師の資質形成につながる」と強調した。

 アクティブ・ラーニングの運用には,チューターや教員,場所の確保の課題がある。鈴木玲子氏(埼玉県立大)は,同大での調査から,その課題を克服しつつ主体的な学びを促す効果のある手法としてTeam Based Learning(TBL)を紹介した。TBLは予習→グループでの学習やテスト,教員からのフィードバック→グループでの応用課題の順に展開される。学生のテスト結果を通じて授業を展開することで,教員と学生の双方向性が確保できるという。この手法を取り入れた授業により,大学1年生の批判的思考態度や主体的な学びに好影響をもたらしたと説明。さらに,TBLとProblem Based Learning(PBL)を組み合わせ,学生自身が選択した習熟度別のチームで授業を展開することにより,習熟度が低かった学生の「学習課題」や「グループ討論」スキルの向上が示されたという。氏は,TBLと他の手法の組み合わせが主体的な学びを促す手段になり得ると考察した。

シンポジウムの模様

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