乳腺領域(後藤眞理子,隈丸加奈子)
連載
2017.10.09
賢く使う画像検査
本来は適応のない画像検査,「念のため」の画像検査,オーダーしていませんか?本連載では,放射線科医の立場から,医学生・研修医にぜひ知ってもらいたい「画像検査の適切な利用方法」をレクチャーします。検査のメリット・デメリットのバランスを見極める“目”を養い,賢い選択をしましょう。[第6回]乳腺領域
後藤 眞理子(京都府立医科大学大学院医学研究科放射線診断治療学)
隈丸 加奈子(順天堂大学医学部放射線診断学講座)
(前回からつづく)
症例45歳女性。乳癌検診で要精査とされ,かかりつけの総合内科医を経由して乳腺外科を受診した。乳腺外科で診療マンモグラフィ・乳房超音波が施行されたが,良悪性の判断が困難であった。 |
現在日本人女性の乳癌罹患率は増加傾向です。マスコミに取り上げられる機会も多く社会的に関心が高いがんの一つと言えます。
乳癌の発見動機の一つに「検診」があります。乳癌検診は,対策型検診(がんの死亡率低減を目的として公共政策として行われる検診:住民検診など)として,40歳以上の女性を対象とするマンモグラフィ検診が広く普及しています。『乳癌診療ガイドライン2015年版』1)では,「50歳以上または40歳代に対してマンモグラフィ検診は勧められるか」というクリニカルクエスチョンに対して,50歳以上,40歳代いずれも推奨グレードB(行うよう勧められる)とされています。
なお任意型検診(対策型以外の検診:人間ドックなど)としては,超音波もしくはマンモグラフィに超音波を併用した乳癌検診も行われています。昨年,超音波検査を用いた乳癌検診に関する大規模なランダム化比較試験として,世界で初めてJ-STARTという日本のプロジェクトの研究結果が発表され話題となりました2)。J-STARTでは,40歳代の女性をマンモグラフィのみの検診と超音波併用検診の2群に分け比較したところ,マンモグラフィに超音波を加えることで早期乳癌の発見率が約1.5倍になるなどの結果が報告されています。ただし,現在のところJ-STARTの結果を含めて,超音波を用いた乳癌検診による乳癌死亡率低減効果についてのエビデンスはありません。
乳腺病変の精査,診断の流れ
乳腺診療において画像検査は重要な役割を果たします。『画像診断ガイドライン2016年版 第2版』3)では「乳房腫瘤性病変における良悪性の鑑別に対し,どのような画像検査を推奨するか?」というクリニカルクエスチョンに対して,各画像検査の推奨度は以下のように明記されています。
●超音波:有用であり推奨する(推奨グレードB)
●MRI:十分な科学的根拠はないが,細心の注意の基に行うことを考慮してもよい(推奨グレードC1)
●CT:良悪性鑑別に対して十分な科学的根拠がなく施行すべきではない(推奨グレードD)
●PET(PET/CT):科学的根拠が十分でなく推奨しない(推奨グレードC2)
図1に乳腺病変の確定診断に至るまでの乳腺診療の流れを示します。まず選択されるのは,コストが安い診療マンモグラフィ,超...
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