医学界新聞

連載

2015.01.19



クロストーク 日英地域医療

■第3回 躍動する診療所看護師たち(2)

川越正平(あおぞら診療所院長/理事長)
澤 憲明(英国・スチュアートロード診療所General Practitioner)
企画協力:労働政策研究・研修機構 堀田聰子


前回からつづく

日本在宅医と英国家庭医──異なる国,異なるかたちで地域の医療に身を投じる2人。現場視点で互いの国の医療を見つめ直し,“地域に根差す医療の在り方”を,対話[クロストーク]で浮き彫りにしていきます。


川越 前回(第3104号)に引き続き,診療所の看護師の役割について,特に看護師の外来診療の様子にフォーカスしてお話を聞きたいと思っています。

 医師の外来には「急性枠」「慢性枠」という区分があり,外来予約を受け付ける段階で振り分けを考慮しておくというお話でしたね。この点は看護職の外来も同様なのでしょうか。

 はい。外来予約の電話を受ける受付スタッフが診療所で作成したガイドラインを基に,患者さんやご家族の要望と訴える症状から,急性か慢性か,医師か看護職かを振り分けます()。

 受付スタッフ用の患者振り分けガイドの例
【看護師が診る慢性疾患とヘルスケアアセスメント(HCA)の外来予約】
(表記は「疾患/検査:時間(担当可能な職種)」)
・喘息:20分(看護師)
・高血圧・継続:10分(看護師)
・血液検査:10分(HCA)
・糖尿病:30分(看護師)
・心電図:10分(HCA,看護師)
・スパイロメトリー・診断:40分(HCA)

【急性枠】
・胸痛,腹痛,肛門出血,メンタルヘルスなど:医師
・のどの痛み,耳の痛み,膿瘍,創感染など:看護師
・診断書の更新,ぎょう虫,内服薬に関する問い合わせ,当日枠に空きがない場合など:電話相談

受付スタッフはこれを標準的なガイドとし,電話相談か外来,外来であれば医師か看護師/HCA,急性枠か慢性枠に患者を振り分けるが,患者のニーズや希望に沿って「外来,電話相談,在宅医療」「医師,看護師」を自由にリクエストできる柔軟性を持たせている。なお,判断に迷う場合は,duty doctorに判断が任せられる。

川越 それで看護師による外来を受けることになる患者が決まってくるということですね。看護師の外来の診察時間としては,どのぐらいを想定しているのでしょうか。医師であれば慢性枠・急性枠を問わず,10分が目安と伺いました。

 内容に応じて目安となる時間は決まっていて,例えば,「耳が痛い」なら急性枠なので10分,避妊薬の服薬コンプライアンス管理なら20分,糖尿病の療養指導であれば30分という感じです。看護師による外来は,医師による外来よりも,患者さん一人ひとりにかけられる時間が長い場合が多い点が特徴と言えますね。

糖尿病患者に見る看護師の役割

川越 前回聞いた話では,日本であれば明らかに医療行為(=医師の仕事)と思われるものも,英国では看護師によってなされている点が印象的でした。

 具体的にお話を伺っていくため,糖尿病患者を例に進めましょう。糖尿病の患者さんであれば,家庭医の外来ではなく,ナースプラクティショナー(NP)あるいは糖尿病に関する研修を受けたプラクティスナース(PN)の慢性枠の外来で診るわけですよね。

 そうなります。これといった急な問題がなければ看護師が対応し,ガイドラインに沿った経口薬の変更・追加,インスリンへの切り替えやインスリン量の調整を含めて,彼/彼女らが行っていきます。

川越 NP・PNの役割に差はあるのですか。

 私の診療所内での役割分担ならあります。糖尿病患者を担当するPNは糖尿病の診断,metformin,gliclazide,pioglitazoneなどの経口薬の処方,体重・血圧・コレステロール値の管理を担います。また,降圧薬やスタチンの処方・変更の判断も行いますが,このPNは処方に関する研修を受けていないため,independent prescriber(独立して処方を行う者)としての決裁権まではあ...

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