医学界新聞

連載

2013.06.10

「型」が身につくカルテの書き方

【第12講】ICU編 By systemでのカルテの記載法

佐藤 健太(北海道勤医協札幌病院内科)


3026号よりつづく

 「型ができていない者が芝居をすると型なしになる。型がしっかりした奴がオリジナリティを押し出せば型破りになれる」(by立川談志)。

 本連載では,カルテ記載の「基本の型」と,シチュエーション別の「応用の型」を解説します。


カルテ記載例

患者:56歳 男性 高血圧緊急症

Daily summary:ICU入室初日,夕方のミーティング後記録

問題リスト:#1.急性腎不全,#2.高血圧症,#3.正球性貧血
  #a.低酸素血症,#b.末梢循環不全,#c.低K血症(1)

S)3年前の検診で高血圧を指摘されたが放置。1週間前からの倦怠感・労作時息切れが増悪し本日当院救急外来に搬送。診察・採血・エコー等で急性腎不全と診断,利尿薬・血管拡張薬に反応なく,低酸素血症も強いためICU入室となった。入室1時間後緊急でHDFを開始し,3時間後には……(省略)。(2)

O)気道:意識清明で口腔内クリア,Stridorなし。→挿管適応なし(3)

呼吸:SpO2 93%(リザーバ10 L(4))・RR28/分,両側前胸部wheeze(+),背下部Crackles(+)→CPAP要検討(3)

循環:ミリスロール1γ+フロセミド100 mg持続静注+HDF中(4)でBP入院時202/130→現在160/100前後,HR120→90台・整(5)
  心臓III音(+),4LSB収縮期雑音III/VI,下腿浮腫(-)・頸静脈怒張(-)。入院後In 200 mL・Out(尿50 mL/8 h+不感蒸泄+HDF),Hb 10.6・MCV94,UCG:Asynergy(-),LVH(++)。CXR:両側肺門不明瞭化(+)。(6)

意識:鎮静薬不使用(4),JCS0で見当識良好,不穏なし。

環境:透析カテーテル+動脈カテーテル+膀胱留置カテーテル(明日膀胱カテ抜去→尿瓶へ),標準予防策
  弾性ストッキング使用,明日バイタル良ければ理学療法開始,

感染:血培2セット提出済み,明らかな感染巣なし。

電解質:K7.4,血ガス(省略)→AG上昇型代謝性アシドーシス。(3)
  腎エコー・尿生化学(省略)→腎実質性腎不全(3)

血糖:血糖正常,バイタル良ければ明日から経口摂取開始予定

A)#1.急性腎不全 腎実質性腎不全(RIFLE:Failure),(原因→Probable:悪性高血圧・悪性腎硬化症,less likely:血管炎・感染症,unlikely:薬剤・虚血。HDFで改善傾向も,早期診断確定のため腎生検を検討する(7)#2.高血圧症,#3.正球性貧血(省略)

#a.低酸素血症,#b.末梢循環不全 Probable:悪性高血圧→血流再分布に伴う急性心不全(クリニカルシナリオ1),Possible:#1→尿毒症肺,敗血症→ARDS。循環・呼吸管理しながらもう少し診断詰め,より適切な治療に修正していく。

#c.低K血症:#1では説明できない。Probable:原発性アルドステロン症→#2→#1,間質性腎炎→尿細管障害→低K+#1などか。精査進めていく。

P) Tx)・Dx)……(省略)。(8)
  Ex)ご本人にはベッドサイドで現状と明日以降の見通しを説明(説明用紙参照)。ご家族にはより詳細に病状と治療選択肢について説明し各種同意書取得。まだ若く治療可能性も高いためDNARなし。(9)
  Px)カテ類の感染予防処置継続,睡眠覚醒リズム障害やせん妄,抑うつ合併に注意する。これを機に血圧管理の教育も早期介入する(腎予後見えてから)。(10)

(1)病名まで深化できていない病態やデータ異常は仮プロブレム(#+アルファベット)で表記。
(2)絶対時間でなく相対時間で記録する。また,患者の病状変化が早く,多くの判断基準が発症または入室○時間という表記(市中or院内感染の区切り,SSCGやACSでの治療目標時間など)であることを踏まえ,ICUでは可能な限り「日」ではなく「時間」単位で記録する。
(3)情報量が多いため,各パラメーターの解釈や簡単な方針もO内で記載したほうが読みやすい。
(4)各項目ごとに介入内容を併記する(どんな治療条件か不明だと以下......

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