医学界新聞

連載

2013.04.08

「型」が身につくカルテの書き方

【第10講】訪問診療編 老年医学・臨床倫理を応用したカルテの書き方

佐藤 健太(北海道勤医協札幌病院内科)


3018号よりつづく

 「型ができていない者が芝居をすると型なしになる。型がしっかりした奴がオリジナリティを押し出せば型破りになれる」(by立川談志)。

 本連載では,カルテ記載の「基本の型」と,シチュエーション別の「応用の型」を解説します。


カルテ記載例

患者:89歳,女性

(1)問題リストは,介護に影響する精神・心理機能と身体機能,生命予後や心身の苦痛に直結する疾患,のように在宅生活への影響を考慮して記載する。実際の生活状況や介護・治療の必要性を判断できるよう,重症度の記載も行う。
(2)認知機能の評価は,実際の生活状況や介護負担度と相関しやすいFAST5)が使いやすい。
(3)Polypharmacy(多剤服用)は,特に高齢者ではADL・QOLを損なう原因となることも多い。副作用・相互作用を意識して減量していくために問題リストに載せる。
(4)患者の生活やQOLを支えるためには「患者の意向」がとても重要になる。意思決定能力や事前指示は毎年評価する。
(5)家族・介護サービスを中心に周辺情報を列挙しておく。
(6)生命予後ではなくQOLの維持向上が目的となるためとても重要な項目。いくつかの評価指標があるが,「本人がどう考えているか」を直接聞くことが重要。
(7)特記事項。チェックリスト以外で患者や家族が自発的に話し始めた話題は重要なことが多く,記録に残しておく。
(8)「薬は指示通り飲めているか」と,予想される副作用があればそれもチェック。処方内容の一覧は毎回確認する。
(9)五快は◯・×で。快重(体重変化)と快動(ADL変化)はO欄に具体的に記載。
(10)介護者のケア。「娘さんは最近どうですか?」など話題にする。
(11)ADL等については年数回,または見た目や家族の訴えで変化があればきちんと評価する。普段はトイレや洗面所まで歩かせて様子を観察する程度としている。


 今回は訪問診療の際のカルテの書き方について解説します。訪問診療は内科学の知識だけでは対応が難しく,老年医学やリハビリテーション医学,緩和医学,臨床倫理などに基づく診察・判断能力が必要とされます。今回紹介する「カルテの型」を活用しながら診療を重ね,わからないところは多職種への相談や自己学習を行っていけば,自然と必要な視点が身についてきます。

■訪問診療の特徴

 病棟や外来とは患者層が異なり,虚弱から終末期段階の患者が対象となるため,かかわり方や治療目標も異なります。急性疾患の治癒や慢性疾患に対する生命予後延長のための治療よりも,「生活機能維持・穏やかな看取り」をめざしたかかわりが重要になってきます(表1)。

表1 高齢者の各段階に適した診療モデル
参考文献1より著者改

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