医学界新聞

連載

2009.07.20

漢方ナーシング

第4回

大学病院を中心に漢方外来の開設が進む今,漢方外来での診療補助や,外来・病棟における患者教育や療養支援で大切にしたい視点について,(株)麻生 飯塚病院漢方診療科のスタッフと学んでみませんか。

五感を駆使しながら患者さん全体をみるという点で,漢方と看護は親和性が高いようです。総合診療科ともいえる漢方診療の考え方は,日常業務の視点を変えるヒントになるかもしれません。

漢方外来における診察,診療補助の実際(3)
-外来での診察の実際と診察介助のポイント

三潴忠道/小池理保(飯塚病院漢方診療科)


前回よりつづく

 前回は,漢方医学の外来初診時における,望診,聞診,問診について解説しました。今回は,漢方医学の診察方法で最も特徴的な方法といえる脈診,腹診を含む切診と各場面で必要となる看護のポイントを中心に解説します。

具体的な診察手順

 診察手順は医師により多少異なりますが,当科での一般的な方法を述べます。

 原則として,患者さんには診察台に手足を自然に伸ばした状態で仰臥していただきます。腹診では腹の広範囲を触診するので,診察台に横になった後,腹部を十分に開いていただきます。そして,訴えのある部分などを西洋医学的な手技も交えて診察します。例えば疼痛があれば,その部位の温度や腫脹,圧痛の有無などを丹念に観察します。

 さらに疾病によらず,原則としてすべての患者さんに漢方医学的な診察を行います。このとき,医師の手が冷たいと冷えが触知できないばかりか,患者さんが緊張して脈や腹部の所見に変化を来すので,温かい手で診察することが必要です。看護師は医師の手を温めるために工夫をしています。また,腹部など体の中心部分を急に触れると,患者さんを驚かせるので,足などの末梢から触診していきます。

1)下腿,足の観察:足首や足先に触れ,冷えの有無を観察します。陰証は“寒”(身体の冷え)が中心で,足首が冷えていることがほとんどです。また前脛骨部を指で押して浮腫の有無を確認します。浮腫は,生体を巡る無色の液体“水”の異常を示唆します。

看護のポイント
靴下,ストッキングは脱いでもらい,膝まで足が出るように準備する。

2)脈診:手首の橈骨静脈を第2-4指の先で触れて観察します。橈側から橈骨茎状突起の高さに中指を当て,そろえた3指で拍動を均等に触れながら血管壁を押し下げたり,指を浮かせて血管壁の表面を軽く触れるようにして,最も拍動を強く感じる部位を探ります。脈拍が指を浮かせたときに最も明らかに触れる(表在性)場合は“浮”,深く指を沈みこませたときに明らかであれば“沈”といいます。

 その明らかに触れる部位で,脈拍が力強ければ“実”の病態(実証),軟弱であれば虚証が疑われます。この脈の緊張度が最も重要です。そのほか,脈拍数や整・不整なども観察します。脈候は病態に応じて早急に変化します。患者の脈を最も頻繁にみるのは看護師なので,習熟することを勧めます。また病棟をラウンド中,患者さんに平素と異なる脈候を感じたら,体調の変化がないか,より丁寧に観察をします。

看護のポイント
時計はあらかじめ外してもらう。また風邪のときは脈診だけで判断し,腹診はしない場合があることを説明する。

3)舌診:脈診の次に,あるいは並行して,舌の苔と苔以外の舌全体を観察します(前回解説のとおり,舌診は望診に含まれる)。舌が腫大気味か歯痕があれば“水”の異常,色が暗赤色なら“血”の異常などを疑います。また苔の色,厚さ,表面のざらつき具合などを観察します。舌苔の状態は,病態とともに変化します。

看護のポイント
受診前は舌の表面を歯ブラシなどでこすらないように指導する。看護師も舌苔を観察し,変化があれば病状の変化に注意する。舌苔が斑状に薄くなったら,...

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