医学界新聞

連載

2009.07.06

小児科診療の
フレームワーク

Knowledge(医学的知識)-Logic(論理的思考)-Reality(現実的妥当性)の
「KLRモデル」に基づき,小児科診療の基本的な共通言語を共有しよう!

【第7回】 熱性けいれん:ERでどうするか?

土畠智幸
(手稲渓仁会病院・小児NIVセンター長)


前回からつづく

今回は,救急ローテーションで診る小児疾患の中でも,おそらく最も多いものと考えられる熱性けいれんについて勉強します。これまで勉強してきた重症度判定とはやや異なる点があるので注意しましょう。

Case1

 3歳女児。これまで2回の熱性けいれんの既往あり。母親・5歳の兄も既往あり。自宅で3分間持続する全身けいれんあり救急搬送,来院時は止まっており覚醒,受け答えも良好。発作はこれまでと同じであったという。体温39℃,項部硬直など神経学的異常なし。

Case2

 8か月男児。昨日昼からの発熱。本日昼から経口摂取不良となり,夜8時に眼球が上転し四肢をガクガクさせるけいれんあり,両親が救急車を要請。けいれんは10分間持続,救急外来到着時は止まっていたが入眠している。刺激すると起きるが機嫌が悪くまたすぐ入眠してしまう。項部硬直ははっきりしない。

Case3

 7歳男児。本日からの発熱。自宅で全身けいれんを起こし救急搬送。来院時けいれんは止まっており覚醒しているが,左上肢が動かない。これまでにけいれんの既往なく,発達歴も正常。バイタルは正常,項部硬直はなし。

単純型熱性けいれん

 単純型熱性けいれんの特徴

 まずは,単純型熱性けいれんの特徴をしっかり覚えましょう(表)。これらを満たさないものは単純型でない,つまり複雑型熱性けいれんと考えます。単純型熱性けいれんであれば,基本的には採血・脳CT検査などの必要性はなく,帰宅させて構いませんが,けいれんが初回である場合や1歳未満の場合は,1時間程度救急外来で経過観察してからのほうがよいでしょう。また,けいれんだけではなく,発熱の原因が何か,ということについても考えなければなりません。肺炎・尿路感染症など,すぐに抗生剤を開始したほうがよい疾患もあるので必要であれば検査をします。

複雑型熱性けいれん

 複雑型の場合には,(1)中枢神経感染症(髄膜炎・脳炎)・脳症,あるいは(2)てんかんの可能性があります(図1)。高熱・意識障害の遷延・血液検査の異常などがある場合は,(1)を疑って腰椎穿刺で髄液細胞数の増多がないかを確認する必要があります。脳症などで脳浮腫がある場合,腰椎穿刺によって脳ヘルニアを起こしてしまうことがあるので,脳CTで脳浮腫がないことを確認したほうが無難です。CTで思わぬ病変が見つかることもあります。これに対して,複雑型ではあるが中...

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